第47話 恐怖

 殴られ続ける恐怖、痛み以上に私が我慢ならなかったのはそうやって私が殴られているのに、何知らぬ顔でテレビを観続けるプリッツさんの薄情さだった。


 プリッツさんも、止めるとみーたんに殴られるからと怯えてる様子なら、まだ理解出来る。

 けどそうなったとしても2対1だよ。

 女同士で特に力が強いわけでも無いのだから、抑え込むなり二人して止める事は出来るはずだ。


 六畳間の同じ部屋内で行われている事に、完全無視なのが怖かった。


 やはり私は誰にも頼る事は出来ないのか……身を守るために、私は家を飛び出した。


 とはいえ、知り合いがいるわけでもない引っ越して間もない土地で、どこにも行きようが無かった。

 身一つで出てきたのでお金も無い。


 警察に駆け込むほど、みーたんを恨んでもおらず探しにこられて、さらに殴られるかもという恐怖もありマンションの上の階の階段に逃げて、しばらくそこで座ってやり過ごした。



 どうしよう、どうしたらいいんだろう。

 携帯電話も持ってきて無かったので野村さんに電話をかける事も出来なかった。


 どのぐらいそこにいたのだろうか、一人だけマンションの住人が通って行ったけど

 後は誰にも会わずに済んだ。


 とにかくここに居続ける事は出来ない。

 そう思った私は恐る恐る部屋に戻る事にした。


 帰るとすでに、みーたんは怒っていなかった。


「ごめんなさい」


 もう何を謝っているかも分かっていなかったが、とにかく殴られたくない、その思いで謝った。


 布団に包まってそっぽを向いているので私も横に寝ると、みーたんは私の方を向き私の腫れた顔を冗談でバカにしていたので怒ってはいないなと安心した。


 電気を消すとみーたんは、その後は自分を責め出した。

 私に離れていかないでほしいと。


 彼女は暗がりになると素直(?)になる事がある。

 この時も、暗くしてからは私に近づいてきて


「ごめんね、ごめんね」


 と謝ってくれた。

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