第45話 葛藤

 野村さんと離れるのは辛かったけれど、みーたんに、自分より野村さんと居たいんだろうと嫌味を言われると、意地のような気持ちが出てきて平気なフリをしていた。


 この頃には少しずつ過激な片鱗を見せ初めていた、みーたんは引っ越し後に野村さんと連絡を取る事を禁じていたのだ。


 それに逆らえない弱い思いの私と、みーたんを好きだからこそその気持ちを態度で示したいと酔っていた私がいる。


【私は性別を超えて人を愛しているんだ】

 という想いが色んな事に靄をかけていた。


 当時はまだ今ほど携帯電話が普及しておらず、持っていない人もいた。

 だから五島さんなどは持っていなくて、個人的連絡先は、この時一緒に住んでいるマンションの住所だけ。


 野村さんと私は携帯電話を持っていたが、みーたんのチェックが入り、普通にアドレスに登録しておく事が出来ずメモとして電話番号を隠し持っていた。


 今までの友人、知人とは連絡を取れなくなる状況の上全く知らない土地に無職で引っ越しをする。


 怖かったが、みーたんへの想い以外に私が引けなかったのは私の大嫌いな、あの「一人っ子だから甘やかされて育った」を背中からナイフを突きつけられているように、みーたんに握られていたからでもあったのだ。


 会社の寮という守られたところではなく、知らない土地でも自分の力で家を借りて生活する事も出来ないのは

「一人っ子で甘やかされてきたからだろう」

 といつでも言う準備をされているのが分かり、やはり意地で新しい生活に飛び込もうとしていたのだった。


 そして新しい家は、一番年上という事と期限までにお金が準備出来なかった私が名義人になり借りる事になった。

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