第44話 不安

自分たちで部屋を借りて引っ越すとなると

三人で割るとしても、かなりお金がいるだろう。


ちなみにこの計画に五島さんは乗らなかった。


実家にお給料のほとんどを送っていた私には貯金もまともになかった。

そこで何とか母親を無理やり説得して

今までと逆で

お給料の中から少しだけ家に送るという形で許してもらうようにした。


それでもみーたんが設定した数ヶ月後という日数では残業を率先してやったが

目標金額の一人最低100万円という金額に私は間に合いそうも無かった。


そして何より、引っ越し先を埼玉県に設定された事が

私には不安で仕方が無いことだった。


埼玉には行った事もなければ、知り合いもいない。

私だけじゃ無い。二人だって無いのだ。


それなのに埼玉が選ばれたのは、東京に近く物価が安かったからだ。


みーたんはプロの作詞家を目指していた。

事務所にも所属していたが、色々な集まりに出られない事は

何かと不利だと言い

東京の近くに住みたがっていた。


お金も間に合わない、知らない土地に職も決まっていないのに行きたくない

そんな思いから私は二人と一緒に居たいが、行けない、行きたくないと愚図った。


みーたんは怒ったしケンカした。

お金は後で返してくれれば良いからと言われたが

一回目に部屋を見に埼玉に行った際


やっぱりこんな知らない土地で無職から暮らすなんて出来ないと言い

長野に帰った私は二人から逃れ、野村さんのところに行って

ここに残って野村さんや五島さんたちと暮らそうかと悩んだのだ。


ところが嫌々ながらも二度目に埼玉の部屋の内見に行って

一気に気持ちが変わった。


というのもその部屋が今まで住んできた、どの家よりレベルが上で広く綺麗で

徒歩1分のところにスーパーとドラッグストアまである場所だったので

その部屋に惚れて、アホな私は


埼玉も悪くないかも、なんて思いだしていた。

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