第42話 ライン解体

みーたんとのキスは私にとってのファーストキスだった。

柔らかい彼女の唇の感触が翌日になっても残っていた。


寮に入る社員が増えてきたので、部屋替え編成があった。

今まで同室だった五島さんは別のアパートへ。


その代わりに隣市から転勤してきた石田さんと同室になった。

石田さんは私より年上だったが、人懐っこく

すぐに仲良くなれた。

その上、物分かりもよく(?)私とみーたんの関係をすぐに理解した。



この石田さんが入ってきて半年ぐらい経った辺りからだろうか

またバタバタと新しい人たちが入ってきた。


そんなに今私たちが働いている工場は人が足りて無いのだろうかと思っていたが

逆に閉鎖の噂が流れ始めた。


私が入社してから早くも2年半が経とうとしている頃だった。


私たちは派遣だが、社員だ。

この工場が閉鎖になっても、他の工場に転勤になるだけだ。


だけど何処に転勤になっても良いというわけじゃない。


前にプリッツさんとみーたんが仲良くなったばかりの頃に

二人で転勤出来るところが見つかったと静岡に行ってしまったように


今度は私も含めての三人で転勤出来る場所を見つけ無いといけなかった。

でもどうせなら付き合いの長い五島さんも一緒にと

営業人事の人にワガママを言い、工場閉鎖が本決まりになる前に

そういう場所を探してもらった。


閉鎖の噂は本当で、1ヶ月後にはラインが無くなる事が決まった。


アルバイトも含めて40〜50人いたラインだったが

とても仲の良い人たちばかりだったのでラインが無くなって

みんながバラバラになるのは寂しかった。


そして営業人事さんのおかげで、私たちは五島さんも含めた四人で

一緒に転勤出来る場所を見つけてもらえ

その工場のある長野県に引っ越す事になったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る