第39話 別れ

 私が書いた私小説のようなものは、今ここで書いているこれよりもずっとエグく端的なものだった。


 増田さんだけではなく佐藤さんにも知ってもらいたいと二人に読んでもらった。


 小説家を目指していたわけでもない増田さんが自身の事を書き綴っていたのも、端的に自分の事や過去を知ってほしいそして知ってこそ尚、自分を受け入れてほしいそういう人と出会いたいと思っていたからではないだろうか。


 私たちの人生は、正直に語るほどに下手をすると嘘を言っていると思われる。


 ドラマのようで、一般的な人の人生の何倍もの劇的な事が起こっているのを信じられない人たちもいる。


 だからこそ増田さんとしてもカケだったと思う。

 私が彼女の人生を理解できるだけでなく受け入れるどうかを。


 そんな増田さんだったから、そういう増田さんを受け入れている佐藤さんだからこそ

 私の事も受け入れてほしい、そう思って書いたのだ。


 そして読み終わった増田さんはターロの件で

「今度そんな目にあったら、アタシが殴ってやる」

 そう言ってくれたのだった。


 その言葉は私の支えになった。



 ところが、とても仲良くなったのに佐藤さんと増田さんは静岡に転勤になるという。


 こうやって仲良くなる前に二人が一緒に転勤できるところ申請していてそれが通ったらしい。


 私たちは仕事終わりの会社の門のところで別れた。

 その時、佐藤さんがハグをしてくれたのだがその時始めて、ハグの偉大さと二人への想いの強さを認識したのだった。


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