第38話 私小説

佐藤さんと増田さんは普通の女性とは違う話が好きな人たちだというのを

泊まりに行った事で知る事が出来た。


それは私がとても好きな哲学的な話であったり

討論であったり、深い、深い話だった。


こういった話が大好きなのに、今まで周りにこういう話が出来る人がいなかったので

自分がこういう話が好きなのを忘れたフリをして生きていた。

それを思い出させてくれて

私は、水を得た魚のように彼女らと語り合った。


この時から、距離を取ろうと思っていたはずの増田さんの方が

話しやすかった佐藤さんよりも、私に影響を及ぼす心の友になった。


もちろんジャイアン的なものではなくて

心と心が共鳴し合うような友達だった。


それぐらい仲良くなった私を信用してくれたのだろう

増田さんはもっと自分を知ってもらうには、と自作の私小説を見せてくれた。



虐待されて育った事、父親が再婚して子どもが出来た事で

更に邪魔にされた事、父親の再婚相手が出て行った事

それは自分のせいだと父親に責められ自分もそう思うようになった事

そのために母親を失った妹を母代わりとして育てた事

グレて暴走族の集まりに出かけるようになって

そこで出会った男子(年齢的に男の人より男子がいいかなと)と恋仲に。


ちょっとホットロードちっくな展開になるも

増田さんの相手の男子は、ある日の朝方

増田さんをバイクで送って行った帰りに事故に遭い亡くなる。


元々子どもの頃から心臓が弱かった増田さんだったが

シンナーなどの悪さだけでなく、色んな無茶をして

更に、バイクの彼が亡くなったショックで

オーバードースで自殺をはかる。


命は助かったものの、こんな事していたら

10年も生きられないと医者に言われる。


そんな増田さんを救ったのは高校の先生だった。

30代ぐらいの女性の先生で

姉御肌的なその先生に憧れのような感情を抱きながら

少しずつ更生していった。



主にこんなような話だった。


それを読んだ私は、彼女になら私の今までの人生も全部話せる

そしてターロの事も話せる

そう思い、ほぼ一晩で私も私小説のようなものを書き上げた。

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