第9話 最上層のAくんと最下層の私

前回、少し幼馴染の事を書いたが

この幼馴染のAくんは小学校に入り分かった事だが


クラスどころか、学年でも良い意味で目立つ

イケてるグループの長のような男子だったのだ。


それに比べて私はデブ以外の特徴が無く、人見知りも激しいので大人しく

スクールカーストやらで見るならば

最下層に当たる女子だった。


客観的にそれが分かっていたのもあり

小学校に入ってからの私は


「Aくんと将来結婚する!」


と言わなくなった。

Aくんが嫌いになったわけじゃない。


プライベートでは仲良くするが空気を読んで

学校では知らない生徒のフリをしていたのだ。


クラスも一度も同じにならなかったし

集団登校も隣の班だったし


誰も私とAくんに接点があるなんて思っていなかった。



そんな状態が続いた小学校高学年になった頃

同じクラスだったイケてるグループの女子たちが私のところにやってきて


「Aくんの事知ってるの?」


と聞いてきた。


「知ってるけど」


何を問われているのか、はかりかねた私は様子を伺いながら答えた。

人気者のAくんを紹介せぇ、という事なのだろうか?

と思っていたら


「Aくんと一緒にお風呂入ったって本当?」


といきなり言われた。


「入ったけど……」


とそのままに答えると


「きゃー、うそ、何で?」


と女子たちは騒いだ。


ん?待てよ、この子たちは昨日とか一昨日とかに

私とAくんが一緒にお風呂に入ったと思ってないか?


私は幼馴染だし、もっと小さい頃に何度か入っていた事を

答えたつもりだったんだけど


というか、その情報どこで知ったんだろうと思っていたら


「Aくんがピューレラさんと一緒にお風呂入った事あるって言うから

あまりに意外で確かめにきたんだけど、本当だったの?何で?」


と言われた。


まず、どうやってAくんが私とお風呂に入ったという話になったか知らないが

昔の事だと言って女子どもを落ち着かせようと

私たちは母親同士が親友の幼馴染なのだと伝えた。


「えー、幼馴染なの?似合わないー」


知らんがな。


やっぱりスクールカースト最上層のAくんと最下層の私が

仲がいいというのは世間は納得しないんだなと思い


Aくんにも迷惑(?)かけないように空気読んできて良かった

と思っていたら

女子たちが意外な事を言ったのだ。


「Aくんってば俺はピューレラと一緒にお風呂に入った事もあるなんて言いながら何かピューレラさんの事かばうんだよ」


と。かばう?


一匹オオカミである事をそれほど気にしない私だったで

深刻に考えていなかったが


その当時、特殊な家庭環境と私の大デブな外見などから

イジメでは無いんだけど

わたしと距離を置こうとする子たちが多かったのだ。


多分、それを見かねたAくんが

私を避ける相談か、悪口でも言っていた女子たちに

自分が近しい人間である事を言ってくれたんだろうと察した。



この件の後、私は久しぶりにAくんに話しかけ

「何で、私と一緒にお風呂に入った」

と言ったの?と聞いた。


そうしたらAくんは

「いいだろ、嘘じゃないんだしアイツらには、それぐらい言った方がいいんだよ」

と言った。


私はそれ以上、Aくんにその件について何も言わなかったが


Aくんは私が勝手に空気を読んで知らない人のフリをしなくても

公にでも親しい事を知られても構わないと思ってくれていたんだなと知れたのだった。

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