第10話 Sにいちゃん

私の一番昔の記憶、八甲田山を見に行ったエピソードで

一緒に行ったのは、母親と母親の弟である叔父だった。


叔父は私にとって第2の父親というぐらい身近で心の拠り所である人だった。


この叔父は母親とかなり歳が離れている事もあり

私はずっとSにいちゃんと呼んでいた。



母親の実家は鹿児島で、母は金の卵とかいうやつで岐阜県にやってきた。

その後、結婚して愛知県に住みだした母親を追って

Sにいちゃんは私たちの住んでいた同じ町にやってきた。


アルバムを見ると、私が母のお腹の中にいる頃からSにいちゃんは

鹿児島を出て愛知県に来ていたようだ。


母は5人兄弟の下から2番目。つまりSにいちゃんは末っ子。

母は兄弟の中の唯一の女という事もあり

超高齢出産で祖母がSにいちゃんを産んだ後


母親代わりのようにして育てたらしい。


だからだろう、Sにいちゃんが地元に残ったり他の男兄弟の元に行かず

遠く離れた愛知に住む母を追ったのは。



私が本好きなのは父親の影響だと前に書いたが

マンガ好きの影響はこの叔父からだと思う。


それも青年マンガは叔父の買っているマンガからハマっていった。


私の父とSにいちゃんはあまり仲が良くなかったようで

母とSにいちゃんと3人の事は良くあったが

父と合わせて4人という事はあまりなかったように記憶している。


けれど私はSにいちゃんが大好きだった。

特に猫可愛がりしてくれたわけじゃない。

一緒にいるだけで何故か安心感があり楽しかったのだ。


そんなSにいちゃんだが、どうも金回りが悪かったようで

何度も母にお金の無心をしていた。


その事が原因で、私が小学校に入った頃からしばらく

音信不通になったのだった。

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