第4話 父親2
幼稚園児の頃、父親の役職を尋ねたら
「重役」
という答えが返ってきた。
ジュウヤク?
幼児の私にはそれがどれだけ偉いのか分からない。
社長や部長は分かっても、ジュウヤクとは何ぞやそう思ったものだ。
父親が普通のサラリーマンではなくて友達と会社をやっている事は幼いながらにも知っていた。
父親がそんなような事を話してくれていたからだ。
そしてその一緒に会社をやっている友達とは家族ぐるみの付き合いで
ちょうど私と同じ歳の女の子がいたので、私たちは物心ついた頃から大の仲良しになっていた。
ところが、その会社は上手くいってなかったのだろう我が家の借金はその会社の運営費だったのではないかと大人になってから推測している。
というのも、その会社は私が小学校低学年の頃には倒産したと思われるからだ。
母は私に倒産という事を伝えようとしたというより倒産により借金が残った、もしくは増えた事が忌々しかったのだろう、父親に対する愚痴を独りごちるようにしながら会社で使っていた各種書類の余りを、私の遊び道具として与えた。
納品書や伝票のような物だったと思うが、会社のオリジナルの物で会社の名前が印刷されていた。
それが我が家の納戸のようなところを占領してしまうほどの量があり、幼い私にも、その異様さは分かった。
母は私に
「将来結婚するなら、普通のサラリーマンに限る」
というような事を言っていたが
多分、父の会社の事での苦労から力説するように言っていたのだろう。
でもそれ、小学校低学年の子に言うんだからね、そしてその頃も相変わらず銀玉弾きが日課だった母より私は変わらずパパっ子なのだった。
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