第3話 父親1

私という人間の一番最初の形成は、小学校低学年ぐらいまでの父親からの可愛いがられ具合が関係している。


私はパパっ子だった。


父親が休みの時や平日の帰宅後は、膝に乗って過ごすぐらいベッタリだった。


喫茶店のモーニング文化圏に住んでいたので、幼児の頃から休みの日は朝食は喫茶店でとり、その時は私と父親の二人っきり(私は一人っ子)で母親は家で留守番するか銀玉センター(?)に出かけていた。


そう、母親は銀玉を愛している人だったので毎日のように軍艦マーチを聴きに行っていたのだ。


だから余計に父親との時間が多かったのかもしれない。


そんな父親は、口癖のように銀玉ランドの住人である母親の事を


「ママはね、ピューレラの事が大好きなんだよ」とか


「ママは本当はすごく優しいんだよ」


など母親のいないところで母親の良いところばかり言っていた。


子ども心にも


「そんなわけあるか!いつもキーキー、怒ってばかり優しいのは、そんなママを許しているパパの方だよ」


と思っていた。


夫婦喧嘩していても、母親が一方的に父親にヒステリックになっているばかり。


父親は弱々しい人では無い。

それどころか、勝新太郎と石原裕次郎を足して割ったような恰幅が良い人で、性格も豪快なところがあり商売人だからか口も上手い人だった。


尻に敷かれているわけでもないのに父親が母親に優しくいたのは性格上の問題だけではなく、母親に苦労をかけていると思っていたからだ。


我が家には、私が幼い頃より結構な借金があったらしいのだ。

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