ワタシから私へ

仮面のワタシに執着することが、

どれだけくだらなかったのか、どれだけ異質な生き方だったのか。

ようやく分かった気がする。


ワタシが信じ、愛し過ぎていた、あの仮面のワタシは、

ワタシ自身を殺していた。


仮面はワタシの本心を隠していた。


本当は知っていた。

人間は、汚いだけでなく、美しいことも。

キレイな感情を引き立たせるために、汚い感情が存在していたことも。

キレイな感情も、汚い感情も、お互いに存在しているから社会が動いていることも。


そして、本当は思っていた。

心無い言葉を言われた時、心が傷つき叫びたかった。

手を差し伸べてくれた人の手を掴みたかった。

期待してくれた人の期待に応えたかった。

信じたい人を信じたかった。


何より、このまま死にたくなかった。


中身のワタシは、全て捨てられてはいなかった。

削りかすになろうとも、生きていた。


他の捨てられ、殺したワタシは、もう戻ってこない。

昔の中身を殺す前には、もう戻らない。


当たり前だ。


でも、繕った感情ではなく、自ら感じた感情を持つことは出来るかもしない。

空っぽの中身を、満たすことは出来るかもしれない。


そうなることが、生きる意味を見出すことになるわけでもない。

ワタシという存在価値を見つけることになるわけでもない。


ただ、今よりもワタシでいることに、ワタシらしい姿を好きになることに、

意味があるような気がして。


いつか、ワタシがワタシの感情を持つことに意味を持ちたい。

いつか、いつか、ワタシがワタシである存在価値を持ちたい。


ずっと、本当はそう思っていた。


もうワタシを殺さない。

暗く、湿気のある部屋で、フラフラと立ち上がり、

今まで立派で完璧で美しく、愛し過ぎた仮面を


壊した。


死ねなかったことは後悔している。

でも後悔を変えるために、私は生きようと思う。


私が私として、存在を認めるために。

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仮面のワタシに殺される私。 文月綾花 @ayafumi000

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