第7話もう一方の落ち人たち
さて一方の高校生たちは……
白き巫女姫様から説明を受けていた。
この世界にはそれぞれの国に聖獣さまがいるのだ。
この国ファニールには白き聖獣さまがおられる。
聖獣さまはふだん聖霊さまの御許で過ごしてらっしゃるのだけれども、たまに悪戯心を出されて他の世界から人や物を呼び出してしまうのだ。たまにご自分の番を探されることもある。その為にそれを制約で止める事が出来ないという事もある。
ただ落ち人がそれまで無かった理や現象を持ち込む事や様々ないざこざが起きる事もあり、守りに長けた白き聖霊さまはその時に他国からの干渉をはねのけてくれている。
返しの召喚術に使われる魔力を人間が集め矯めてくれる代わりに、聖獣さまが地に下りられている時は、聖霊さまがその国を繁栄に導いて下さるなど……
四人の高校生に巫女姫が説明し、また元の世界に戻れるまでの生活について話し合う事となった。
彼らは最低限の衣食住は保証されること、勉強など学習するなら図書館などを利用しても良い事など説明された。
すると背の高い筋肉質の男子が言った。彼の名は
「ひとつ質問があるんだけど、いいかな?」
「どのような事でしょう」
「元の世界に戻れるのはわかった。でもそれにどれくらいの時間がかかるんだ? 俺たち塾もバイトも部活も休んでしまうんだけど。今は夏休みで学校は休みだけど一ヶ月もすれば始業式だぜ?」
その問いに巫女姫は申し訳なさそうに答えた。
「申し訳ございません。はっきりとした日時は分からないのです。ただ今回召喚させて頂いた時の場所や日時などの記録は残っていますので、さほど変わらない時に還せるかと……」
四人はびっくりしたような表情をしていた。
それもそのはず四人は
「えっ? 俺達は居なくなっている事も向こうじゃ知られてない可能性もあるのか。こっちで宿題やってしまえば夏休み遊び放題? それともこっちで遊び放題のが楽しいのか?」
「無理無理むりむり。こっちで何で遊べばいいんだよ。スマホも圏外だぜ? ゲームも出来やしない……明後日からイベントだっていうのによ」
もう一人の男子は片手でスマホを操作しながら言った。彼の名は
どうやら彼のスマホの電池はまだ残っているようだ。
それをみた女生徒の一人もスマホを肩からかけたカバンからゴソゴソと取り出す。長髪ロングの彼女の名は
「ホントだ……圏外……電池は65%かぁ。充電ってできないわよね……音楽も聴けやしない」
そりゃそうだろう。こちらには電気がない。どこを見たって電線の1つも無かった。
それでも帰る事ができると保証してもらえたのだ。しばらくこちらの世界を楽しむ事にしようと彼らは話し合った。ただそこにはうつむいて声を出せない少女も一人いたのだが。そして俯いているショートカットの彼女の名は森田ひかる《もりた ひかる》という。
世話係として少年たちには青年の侍従がつき、少女たちには母親くらいの年頃の侍女がつけられた。
部屋は男女別の棟にありそれぞれ個室が与えて貰えることになった。
部屋にはベッドとクローゼット、簡易な机と椅子、そして窓にはカーテンが掛けられていた。灯りは小型のシャンデリアのようなガラス細工で出来ている。
トイレや洗面所は部屋を出て階段側にある。
それぞれを案内され、衣服は男子には文官のような服と下着が、女子には侍女が来ているワンピースと下着が支給された。学校帰りで夏の制服姿だった四人は汗で濡れた服を早速着替えたのであった。
汚れた服は自分で洗濯しなければならないようで……それを抱えた四人は途方に暮れていた。ここには洗濯機が無いのだ。
それぞれ世話役に聞き、慣れるまでは教会の下働きがしてくれる事になった。(女子は小物洗濯は自分でできると言った)
部屋にもどり一人でいると寂しくなったのか、女子二人は一緒にいることが多くなった。
「どうしよう……ママに連絡できない」
ひかるはスマホの圏外の表示をみて泣きそうになっている。
「うん。圏外のままだね。早く帰れるといいなぁ」
史帆はわりと落ち着いた声で答えた。どうしようも無いことに時間は使いたくないとばかりにスマホをカバンに戻し、ノートやテキストを机に広げた。ここは史帆の部屋である。
「しーちゃん……」
ひかるが何か言いたげに声を出したが、はっきりとは何も言わなかった。
「ひかる? 今は何も出来ないよ? だったら宿題済ませちゃおうよ。ひかるは勉強はどこでする? ここに机を持って来てもらう?」
史帆の前向きな行動は、ひかるを落ち着かせたようだ。
世話をしてくれる人を呼ぶ時はベルを鳴らすようにと言われていたので、机にあったそれを鳴らした。
ノックのあと入ってきた侍女の方にお願いして小さな机をもうひとつこの部屋に運び入れてもらった。
部屋は狭くなるが史帆は気にも止めないようだった。
可愛い猫と異世界生活~家出中に飛ばされた? こーゆ @kouyu421
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