終 ループの先に愛がある
真っ白な角砂糖の部屋で、私はガラス越しにヘプバーンを見ていた。
この部屋で真夜中にも関わらず、ヘプバーンの体を弄くっている。
結局、私は何も出来なかった。
こんな過ちを繰り返すのか?
何故・・・何故・・・・
心と心がまるで殴り合いでもするかのように
考えれば考えるほど、心身は蝕まれる。
気紛らしに買ったコーラも普段なら甘く感じるはずなのに、今ではとても苦く感じた。
時計は間もなく12時を指す頃合だ。
今日で三月も終わる。
ハハハ、嘘が本当か。
そうなるだろうか・・・・
ピーッとドアがスライドした。
どうやら時間らしい。
科学者さんがヘプバーンのいる部屋と音声を繋げる。
「気分はどうかね?」
老いた科学者が優しく問いかける。
「問題ないです。それと最後にダーリンと話していいですか?」
「構いませんよ」
それからヘプバーンが近付いて来る。
私もガラス越しに彼女と手をかざす。
「ダーリン・・・・」
「ごめん。ごめんね。私、何も出来なくて。本当はヘプバーンを幸せにする自信が無くて・・・・だから、君を救えなかった。本当にごめんね」
「ううん。ダーリンは勇気が無かったんじゃない。ただ、私を愛してくれただけだよ。愛するってことは側に居るだけしか出来ないんだよ。だから、ダーリンはそのままでいいの。ただ、そばにいて」
自然と涙が出そうになるも、必死に堪えて笑顔を作る。
私は本当に彼女を愛していただろうか?
「ねえ、ダーリン」
「・・・何?」
「一つだけ言わせて。私はダーリンのこと大切に思ってるし、ずっとずっと側に居たいって思う。だから━━━━━」
「大好きッッッッ!!」
「・・・・っ!」
瞬間、私の脳内を様々な記憶が飛び交った。
見覚えの無い出会いに見覚えの無い思い出。
ああ、そうか。
私は何度となく繰り返しているんだ。
ヘプバーンとあの日の記憶を一から。
ヘプバーンの顔はどれも笑顔で、どの私も彼女を愛していた。
だから私は・・・・
ダーリン、ダーリン、ダーリン!
・・・・・!
その時、朦朧とした意識から彼女を抱きしめた。
「好きだ!愛してる!ずっとずっと愛してる!!!」
「・・・・ダーリン?」
「これからも君と居たい。居させてくれ」
「・・・うん」
地面に降りてふと、腕時計を見る。
深夜の四月一日の12時ちょうどだった。
見るや、さっきまであった研究室も無くなっており、回りは夕日に沈んだ海が広がっている。
ほんと、嘘だらけだ。
それから取り残された黒スーツの男性が電話で今まで暴れていた人々が大人しくなり、検索をしたら人間その物になっていたと。
いっちゃ悪いが、こんなファンタジーあっていいものか。
すると横で、ヘプバーンが妙に微笑んでいた。
「ねえ、ダーリン。私のこと、愛してる?」
「うん。私はヘプバーンが好きだ。これからも一緒に年を取りたい」
「そう。じゃあ一つだけお願いがあります」
「キス、して?」
それに私は笑ってしまい、そっと夕日の海に影を重ねた。
完
マシーンの恋に落ちて~嘘が本当に~ 西銘勇河 @101101
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