#4

小鳥の声がした。

目を覚ますと、辺りは青白い暗さだと分かる。もう朝か。

背伸びをして下を見ると、裸だと分かる。

確かあのままお風呂に入ってそのまま寝たんだ。

その証拠に隣で裸で眠るヘプバーンがいた。

赤子のような愛おしい寝顔に何となく微笑む。━━━━この子とは初めて会う。

けど、初めてじゃない。

きっと夢のどこかで会っているのだろう。

だからこんなキモチになるのだ。

そう、このキモチこそ、‘愛している’ということなのだろう。

「うにゅ。ダーリン・・・」

私は彼女の前髪を触る。

不思議と好きになっていた女の子。

自分でもよく分からない。

たった一日会っただけの子を好きになるなんて、普通じゃ考えられない。

けど、何だろう。

私は彼女を幸せにする自信がない。

それまでは彼女を預かってくれる場所を探さねば。

「起きて。ヘプバーン」

「うにゅ?ダーリン・・・?」 

「君と、初めて会った場所に行かないか?」

「・・・・うん、分かった。行くよ」

このためらいはどういうことなのだろう?


「着いたね」

「そうだね」

私が興味方位で来た海辺の小さな小屋。

ここで、初めてヘプバーンと会ったんだ。

彼女はどこか儚げに小さな小屋を見ていた。

この小屋から始まり、終わる物語。

私の職は幸いなことにケアマネジメントに関わる仕事だ。

彼女のような特殊な子を受け入れてくれる所はきっとあるはずだ。

だから、私が幸せに出来るまでは。

「ヘプバーン」

「何?ダーリン」

「実はその、今から君には━━━━」 

ザッザッ

浜に大きく踏む音と共に声を掛けられた。

振り向くとそこに、スラリと鍛えられた体付きのいい男二人がいた。

「お話中すみません。あなたに一つ、申し上げたいことがあります」

私はふと嫌な予感がした。

心の底では分かっていた残酷な言葉に。

「そちらの機械はあと一日もしない内に暴走いたします。‘これ’といるということは命を落とすということです。直ちに‘処分しなければ’なりません」

「・・・・」

「・・・・」

私とヘプバーンは静まり返っていた。

分かっていた。

分かっていたとも。

けど、分からなかった。

私たちはこの人達がFBIであるということと、ヘプバーンを処分しなければならないことを重く知らされた。


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