個性の消失

「僕、今日から普通になるよ」

「はあ!? なにいってんだ、お前。これまで散々、変人で通してきたってのに!?」

「そうだ」

「そりゃ、また何でだ?」

「それはね、これから先の世界じゃなんの役にもたたないからさ」

「ふーん……」

「僕だっていつまでも子供でいるわけにはいかないよ」

「じゃあ、具体的になにするのさ」

「この頑固で反抗的な性格を捨てて、色んな癖とかも消すのさ」

「へぇーー」

「世間の大人はオンリーワンなんて言うけどさ、本当は素直で従順の方が喜ばれるんだ。個性なんていらない。普通が、目立たないのが一番」

「それじゃ、この先お前の人生はなんの面白味も無いってことか?」

「そう………………。そうすれば、辛いことなんて無いでしょ?」

「そんなのお前じゃねえだろ……」

「という訳で、まずは君に死んでもらうよ……」

「ぐふっ、な、なにしやがる…………」

「普通になるためには、君は……」


不要なんだ


僕はもう一度ナイフを突き立てる。

今まで、誰よりもそばにいた「敵」に向かって。

僕の象徴である「友」に向かって。



だから、僕は大人になりたくない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

だから僕は大人になりたくない M.A.L.T.E.R @20020920

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ