静眸園

安良巻祐介

 

 水飲み鳥に似た、恐ろしく足の長い、全身木製の人物が、テーマパークの広場を大股で、定時に合わせてゆっくりと歩きまわっていて、こちらへ向かっててっぺんのシャッポを少し上げて、挨拶をした。

 私は目鼻のないその顔を呆然と見上げながら、おずおずと草臥れた猫帽を脱いで、形ばかりの挨拶を返す。

 視界の端に、誰も登れない巨大な遊具が幾つも立ち並び、とんでもなく高いところを、タバコの煙に似た雲が緩慢に渦巻いて行くのが見える。

 空があまりにも広過ぎる。

 こんな遊園地はとても取材できない。

 私は尻尾を切られた鼠のように逃げ出した。

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静眸園 安良巻祐介 @aramaki88

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