ペンは剣や魔法よりも強いし嫁もできるから俺得

ロブスト

第1話 適職無し

俺は悔しかった・・・

適職試験に行ってみたら周りからは笑われ、

試験官には才能がないとか、しょせん一般人とか、なだめられた・・・

ちくしょう・・・ちくしょう・・・・

異世界に来ても俺は剣も振れないし、魔法も使えたりしないのか・・・・


「俺の存在って・・・・はぁ・・・・・・」


噴水でうなだれてる男、それが今回の主人公、高橋佐竹たかはしさたけだ。

そんな彼を見てひそひそする異種族・・

それもそのはず。彼のうわさは瞬く間に広がった。

適職試験には何かしらの適職が決まるのだが、

前代未聞の『』になったのである。

まわりの視線が痛い・・・

肩を落としながら佐竹はその場を後にした・・

気がつけば彼は市場を歩いていた。

色んな食べ物や衣類、武具を売っていたが

彼はかっこいい剣や防具をみただけで涙が出てきて悔しかった。


「お、おいあんた・・どうしたんだ・・?あ、もしかしてお前さんか?ってやつは?」

武具屋の店員が出てきて聞いた。

彼は頷いた。


「ま、まぁ・・気を落とすなよ・・レアケースらしいぜ・・?適職無しって・・」


彼は惨めな想いで無言で立ち去ろうとした。


「あ、ちょ、ちょっと待ってくれ!」


店員が制止した。


「なんだ?どうせ俺を馬鹿にしたいんだろ?『適職無し』の俺をあざ笑いたいんだろ!!?ああ!!!??」


佐竹は怒鳴り散らした。

買い物していた人たちは一斉に彼を見た。

彼はいたたまれなくなって、走ってこの場を離れた。

彼は自分の耳をふさいで泣きながら叫んで走った。


そして城下町を出て近くの海辺にたどり着いた。

彼は砂浜に座ると体育座りをした。


(死にたい・・・・・)


そう思った。

どうしてリアルもこの異世界でも厳しいんだろう・・

そうも思った。

ふと気がつくと、ナイフが落ちていることに気がついた。

ナイフを取ると、刃の部分は鋭く尖っていた。

彼はそのナイフをじっと見ていた。


(これで・・・死ぬかな・・・・)


彼はナイフを両手で持つと心臓の部分に近づけた。

手がブルブルと震えた。


(死ぬんだろ!!?だったら一思いにやれ!!!!)


自分で何度も発破をかけた。

息も荒くなって今か今かとナイフを心臓に近づけた。

が・・できなかった。

何度も何度もやったが・・・できなかった。


「くそが!!!!!!!!!」


彼は砂浜に拳を何度も叩きつけて泣いた。

すると、悲鳴が聞こえた。

立ち上がって見てみると、ウサギの獣人がイヌとオオカミの獣人に手をつかまれていたので会話を聞いてみた。


「やめてください・・・」

「へへっいいだろう?俺たちと遊ぼうぜ?」

「あんまり騒ぐと・・よ??」


刺すかもよ・・の言葉で彼はそちらのほうに行ってみた。


「あ?なんだてめぇは?」

「あっちいってろよ。」


二人の獣人は笑いながらあっちに行けというハンドサインをした。


「なぁ・・刺すんなら・・・刺してくれねぇか?」


彼は二人にお願いした。

二人はお互いに目配せすると


「「は??」」


と言った。当然である。

いきなり人が現れたと思えば、

刺してくれと頼み込んできたのである。


「おいおまえ、バカじゃねぇのか?」

「頭のネジ何本抜けてんだ?お前は?」


二人は面白おかしく笑った。


「本気だよ!!!!」


彼が怒鳴ると二人の顔が険しくなった。


「ったく・・うるせえんだ・・よっ!!」

「きゃぁ!!」


オオカミの獣人に殴り飛ばされた。

痛い・・・


「違う・・刺せ・・刺してくれよ・・・」

「うるせえぞ!!」


オオカミの獣人が近づいてまた殴りつけた。

顔を殴られた。


「刺せ・・刺せ・・」

「っく・・この!!」


それから何度も殴られた。頭、顔、腹、足・・・

殴れる場所は全部殴られた。


「あ、兄貴・・これ以上やったら・・・」

「はぁ・・はぁ・・・も、もう・・・・」


ウサギの獣人は目を伏せていた。


(ヒ、ヒドい・・・)


彼女は涙を流した。

殴られた彼は痛みでもう動けなかった・・が、


「う・・うう・・刺して・・・刺して・・殺して・・・・」


彼はゾンビのように立ち上がった。

そして二人に近づいた。


「う、嘘だろこいつ・・!!?」

「あ、兄貴・・!怖いよ・・・・!!」

「うっ・・くっ・・・ズラかるぞ!」


二人はウサギの獣人を置いて逃げて行った。

彼はそのまま前に倒れこんだ。

ウサギの獣人は驚いて駆け寄った。


「殺して・・殺して・・・・!!」

「あぁ・・こんな姿になって・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・・!!」


痛々しい佐竹に泣きながら謝った。


「うぅ・・涙でしみる・・・」


ウサギの獣人ははっとして目から出る涙を抑えようとした。


そしてウサギの獣人に手を伸ばし


「君みたいな天使がお迎えしてくれるなんて・・僕は・・・・・・」


それからプツンと何かが切れたと思ったら

視界が真っ暗になった。


(これで死ぬのか・・短い人生だった・・・)


そして意識がなくなりかけた・・・・・・


(いや!!kemoloversさんの子を描くまでは・・書くまでは死ねねぇ・・!!!)


ガバッと起き上がると

そこはベッドの上だった。

辺りを見渡すと、見知らぬ家の中のようだった。

そしてベッドの近くのイスに座って眠っている

ウサギの獣人がいた。

佐竹はゆっくりと頭を倒して天井を見た。

まだ多少痛むところはあるが、大分よくなっていた。


(はぁ・・・こんな世界に来るべきじゃなかったのか・・?最初はすごくわくわくしていたのにこの仕打ち・・・現実の世界もこの世界も・・残酷だ・・・・)


そして気がつくと朝になってたのか、窓から朝日が入ってきてまぶしい・・


「あ・・!気づかれました・・?」


ウサギの獣人が安心した表情で尋ねた。


「おや?目が覚めたかい?」


ウサギの獣人の隣に青いスカーフを首に巻いたウサギの獣人が顔を覗き込んだ。


「あんたずいぶん派手にやられたね・・この子があんたをここまで運んできたからビックリしちゃったわよ。彼氏を連れてきたのかと思っちゃったわ・・」

「もう・・そんなんじゃないよお母さん・・」


ウサギの獣人はまんざらでもなさそうに頬を赤らめた。


「まぁでも、この子を助けてくれてありがとね。ケガが治るまでは家にいるといいよ。いいかい?ララ?」

「うん、そのほうがいいよね。お母さん。」


半ば強制的に決められてしまったが

行く当てもないのでよしとすることにした。

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