振り返ればあの時ヤれたかも

シーズ

第1話

人間なら誰しも、生きていく上で何かしらの制限がある。

例えば、人はいずれ死に至るし、大抵の人間は自らの生活の為に身を粉にして働かなければならない。

かくいう俺もあくどい制限をこの身に背負っており、心労を深めながら生活しているわけである。


俺の心労の根源、憎たらしい制限を課してくる人間は、とても身近にいる。

朝比奈涼子。俺の義理の姉であり、俺の人生の最大の障害と言っても過言では無い。

何かあるごとに俺をこき使い、高慢ちきな態度で俺の精神をすり減らしてくるのである。

朝起きればやれトーストに蜂蜜を塗れだの、歯ブラシを濡らしてもってこいだの、俺をまるで専属の使用人であるかのように扱うのである。

極め付けに、俺が嫌そうな顔をしているのを見ると、「私の方が年上なんだから、そんな嫌そうな顔しない」などと言う。

実際には同い年で、誕生日がたった二日違うだけでこの扱いを強いてくるのである。

何度こいつより早く生まれていたら……、と神様を恨んだことか。

もしも過去に戻れたらと、今の技術力では到底ファンタジーな妄想に耽らざるを得ないほど、毎日疲労していた。

そんな妄想をしていると、目覚ましのベルがけたたましく起床時間を知らせる。

朝から気が重くなるようなことを考えるんじゃ無いな、と自分を叱咤し、気だるい身体に鞭打ち自分の部屋を後にした。

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