第4話嫌われ者は思い出す
学校も終わり、麟弥りんやとの集合場所のファミレスに来たが――
「お、晴人ーこっちだー」
手を振っている麟弥を見つけ、席まで移動する。席に着くと、そこには二人の女子がいた。
……もう一度言おう。
そこには二人の女子がいた。え? 何故?
「どした? 早く座れよ」
麟弥に促されたので、二人の女子に対して向かい合う形で座った。
「晴人、紹介するよ。岩代さんと小日向さん」
岩代さんは笑顔で会釈をしていたが、小日向さんと呼ばれた方はこちらをじーっと睨んでいる。ていうか、岩代さんは知っとるわ! ん? 待てよ? 確か麟弥はそれとなく聞いてみると言ってたはず……。
!?!?
「麟弥! どういうことだよ! それとなく聞くんじゃなかったの!?」
「あーその話なら、今から岩代さんが話してくれるよ」
岩代さんからだと……!?
「えっと、まずは朝逃げてごめんなさい。見てるのを知られたらなんだか恥ずかしくって」
「悪気はないんだってさ」
麟弥の一言を聞くと凄く安心した。
「そうでしたか! 良かった〜てっきり僕のことをこ――」
「お、おい晴人! ドリンクでも取ってこい! そしてその件に関しては忘れろ!」
口を塞ぎながら麟弥は早口で言った。
「わ、わかった」
僕なにかやばいこと言いそうだったのかな?
「なら、私も一緒に取りに行ってきます」
岩代さんも丁度飲み終わったらしく、グラスを持って立っていた。
ドリンクバーコーナーに行き僕は自分のグラスを用意する。岩代さんはどうやら紅茶を飲むらしい。僕が何を飲もうか迷っていると。
「水書くん、実は私達この前の事故が初じゃないんだよ」
岩代さんが唐突に話しかけてきた、ってえぇ!?
「え、僕らってあの時以外で会ってるんですか?」
焦りを隠すように聞いてみる。
「うん、私達が会ったのは入学式の時だよ」
入学式……?
「それ、何かの間違いじゃないですか? もし会っていたら覚えているだろうし。」
岩代さんみたいなかわいい人なら尚更。
「覚えてないのかぁ――私のことあんなに抱き締めてくれたのに」
抱き締めただと!? やばい全然覚えてな――
「あんなに抱き締めて私を保健室に運んでくれたのにー」
……バリバリ覚えてました。
「もしかして、僕があの時運んだ女子って……」
「そう、私だよ」
衝撃の事実。まさかそんな前に会っていたとは。
グラスに入ったコーヒーがこぼれそうになるくらいうなだれた。席に戻ってからは麟弥と小日向さんも含めて談笑した。
あいかわらず小日向さんは僕を睨んでいるけど。
時間は瞬く間に過ぎ去って、それぞれは帰宅の準備をしてファミレスを出る。僕はどうやら岩代さんと帰り道の方向が一緒のようなので岩代さんと帰ることになった。帰ろうとすると――。
「水書くん、少しいいですか?」
小日向さんに呼び止められた。
「こっちに来てもらってもいいですか?二人きりで話したいので」
これはまさか――!
「言っておきますけど告白とかじゃないんで」
俺の考えを読み取るかのように言った。小日向さんについて行くと、小日向さんはこちらを向いて睨んで言った。
「美鈴ちゃんは優しいからあなたとも仲良くしようとしているだけ。思い上がらないで」
……知っているさ。そのくらい。
「私は、あなたの事が嫌い。何故かはわからないわ。でも、あなたを見ると嫌で嫌で仕方ないの」
今までと同じ。
『何故かはわからない。』
聞き飽きたその言葉が慣れることなく自分の心を貫く。
「だから、これから先美鈴ちゃんに近づかないで。美鈴ちゃんに人を嫌う気持ちを与えないで」
だからこそ、僕は同じ過ちを繰り返す。
「近づかないで? そんなの言われなくてもそうするさ。僕は人が嫌いだ。上辺でしか人を見れない、あんな風にみんな仲良くを言ってるような人は大嫌いだ! そんな理想は叶わない! 人は必ず優劣をつけて、自分が上であることに安堵する。そんな奴らの為に傷ついている下の人間のことも考えたことのないようなあんたらに、僕の何が分かるって言うんだ!!」
演じよう、この道化を。僕はピエロだ。
訂正しよう。
嫌われる理由は体質でもなんでもない。理由は一つ、僕がピエロだからだ。今までも、これからも、僕は道化を演じ続けてやる。僕は気づかなかった。僕の後ろに気になって追いかけてきていた二人がいることを。
嫌われ者の僕に彼女ができました @suzukiamon
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