8 ナハティガル:蒼穹の軍都
0 soalla // #00519a-Aq
彼女は追跡さえしませんでした。
追おうと思えばできないわけでもなかったのでしょうが——
今は「うまくいった」ということだけ。
私が離れてからのマスターの成長は目覚ましいものでした。
というよりも、私の目が曇っていただけなのかもしれません。
庇護だと思っていたものは、彼女にとって枷でしかなかったのかも、
そう思い、少し反省をしました。絆を取り戻す前に。
主が寄る辺を見つけたとき、
そして自ら立つことを覚えたとき。
竜と主とは変わっていくのです。
「自分自身」から、「他人」に。
ゼーレは頼んだとおり、ランティスに話を繋いでくれました。
この国の情報網は、彼女をほとんど瞬間的に移動させてくれます。
足取りを辿られたくないので、なるべく他の情報に偽装して、
そして万一解読されても、どのようにでも申し開きができるように。
彼女はスペクトからナハティガルに至り、ランティスの執務室へ。
ランティスはすぐに応えてくれました。
この国ではどの竜よりも疎んじられる
燦を拐かした不届き者でもありましたから、
ナハティガルに至る手前の荒地で、
ランティスが派遣した少数精鋭の警備隊にあっさり捕縛されました。
一方その頃、燦を我々から「保護」した黒い竜は、
悠々とナハティガル市庁舎に降り立ちました。
黒い鋼と赤い翼の威容は、それが何なのかを知らなくても
火竜を信奉する者たちには好ましく映ったようです。
そして彼はそこで燦を爛に引き渡し、
自身はまるくなってひとときの眠りにつきました。
捕らえられたマスターたちは、一旦ランティスの預かりとなり
市庁舎の一室に幽閉されることになりました。
外部との接触を禁じられ、何らの通信手段もない部屋です。
もちろん、直接来訪するランティスや爛との連絡を隔てるものはありませんから、
幽閉というのは建前にすぎません。
外との連絡が絶たれるということは、
外から察知されることもない、ということ。
我々はここで態勢を一度整理して立て直すことになりました。
ここはアドラの中で、ユーレから最も離れた都市。
私はユーレに置いていた私の浮虫を呼び戻しました。
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