24 「えっと、ここかな?」
そんな感じで先程の授業の内容を教え終わると、いい感じに弁当を食べ終わった。実際に説明してみると、あの授業は大したことをやっていない。
勉強を教える意外で僕らが話すことは特にないので、数学1を教え終わると二人の間に会話はなくなる。朝日さんは机の中からノートを一冊出すと、鉛筆を使って絵を描き始めた。僕は特にすることもないので、朝日さんが描いている絵をぼんやりと眺めながらスマホをいじる。やっぱり、絵がうまい。ただ僕の絵柄に似てるって言うのが複雑なんだよなぁ。たぶん朝日さんは僕の絵柄に似せて描いているんだろうけど、正直朝日さんが描きやすい絵柄ではないのではないかと思う。なんとなく朝日さんにはもっとかわいい系の絵柄のほうが似合うと思うんだけど、今それを言っても特に意味がないので、言いたい気持ちをぐっと抑える。僕がなに言っても説得力皆無だしね。
「ねぇ
突如、教室の後方からそんな声が聞こえてきて、教室中が静まり返る。あぁ、またやってるよあのバカップル。確か、今熱烈な告白をしたほうが
「きゅ、急にどうしたの?」
「告白の時以外に好きとか言ってなかったなーって思って。」
「――もうヤダ。」
そう呟き机に突っ伏す六分儀君。なんでもいいけど、六分儀って苗字かっこいいよな。なんか強そうに聞こえるんだけど、わからない?
これ以上二人の会話を聞いても口から砂糖を吐く羽目になるだけだとわかっている僕は、イヤフォンをして聴覚からの情報を遮断し、机に突っ伏すように寝て視覚からの情報を遮断。これで、あの甘々な会話を聞かされなくてすむ。
その状態でいると、午後の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴り、僕たちはまた勉強という面倒なことをさせられる羽目になる。仕事をする大人たちからすると、勉強をしているほうが仕事をするより楽だと思うのかもしれないけど、現在進行形で学生の僕にはよくわからない。
教科書を読めばだいたい理解できてしまう僕は、欠伸をしながら授業を受ける。するといつのまにか授業は終わり、放課後になっているから不思議だ。こうしていると、とても無駄に一日を過ごしている気がする。
「じゃ、行こ。」
朝日さんは僕にそう言うと、僕の手を引いて歩き出す。なぜか毎回朝日さんと手を繋がされるのだが、特にデメリットがあるわけではないので気にしないことにしている。いや、まったくデメリットがないわけではないか。石橋君たちに睨まれるというデメリットは存在するが、それは大した問題ではない。気にしなければ問題のないことだ。
いつも通り特に会話もないまま朝日さんの家に入ると、いつも通りプリントを使って問題を解いてもらう。実はこの問題、徐々に難易度を上げているのだが恐らく朝日さんは気が付いていない。まぁ、難易度が同じ問題ばかり解かせても効果が薄い気がするしね。
「ここ、わからない。」
「えっと、ここかな?」
いつも通り文字数の少ない質問だが、どこが解けないのかは大体わかるので問題ない。なるべく朝日さんがわかりやすいような教え方で僕は朝日さんがわからなかったところを説明する。
それを数回繰り返すとだいたい六時くらいになるので、僕はそのタイミングで家に帰ることにしている。長居するのもあれだし、朝日さんは集中しているのでこれ以上勉強しても効率が下がりそうだからだ。毎度のことだが、朝日さんは玄関まで僕を見送ってくれるのだが、実はこれが少しうれしい。まぁ、可愛い女の子が「また明日」って言ってくれるんだから、テンション上がらないわけないよね。って、こんなのはどうでもいいことか。
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