1.3

「あはははは!そうだよ!甘々だった!

 でも、俺は『本物』のお前とは違う!

 だましだまされの宮殿の中で駆け引きをしてきた。卑怯な手だって使うぜ!」


「ああ、そうか。成長したな。でもこの程度だ」


 『偽物』の後ろに『本物』が立っていた。

 その体には傷一つなく、爆発を避け切ったことを示していた。


「この程度の小細工。森の木たちの方がもっとうまくやっていたぞ。

 落とし穴に爆弾、毒針、毒ガス……。

 爆発させるなら避けられてしまうことも想定して動けよ」


「お前ッ……!」


 ザンッ。


 『本物』は『偽物』の首を一撃で切り落とした。

 さっと吹き出る血を避けると言う。


「お前はある意味『本物』だったよ。

 俺が宮殿から一度もでたことがなかったらお前みたいになってたんだろうな。

 ま、だからと言って森に感謝したりはしない。

 あの地獄、二度と経験するのはごめんだぜ」


 『偽物』の死体に一瞥くれるとカント振り返って両手を築き上げる。


「さて、ミヤコ!無事でいてくれよ!」


 カントは中庭を走って、自分が開けた穴に飛び込んだ。


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 ミヤコは真っ暗な部屋の中にいた。

 円形の大きな部屋の中にいることはわかったが、彼女は構えたまま迂闊には動き出せなかった。

 そこらじゅうから敵のEEの気配がするのだ。


「私に何の用なの!?」


 ミヤコは叫んだ。暗く身動きが取れない場所。

 なぜだか、やたらと不安になる。


 すると、正面から一人の女の子が歩いて近づいて来た。

 ミヤコは理解する。

 その足の片方が義足であることを。


「久しぶりね『うさぎ』」


「えっ?」


 ミヤコは目の前の少女を見る。

 見覚えなんて全くない。

 その上、うさぎと呼ばれることに全く覚えがなかった。


「あなたは誰?」


「私?私は『やまねこ』。あ、そうか、あなた記憶喪失になっているのよね。

 忘れてたわ。

 それなら、少しお話ししましょ、私たちのこと。

 あなたも知りたいでしょ?あなたの過去」


「もちろん知りたいわ。聞かせてちょうだい。私の過去のこと」


 ミヤコは前に進み出た。


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 ユキコは人間原器の沼の前で二人のユキコと対峙していた。

 一方のユキコは自分をサコだといいもう一方は自分をユキコだと言っている。


 サコと名乗ったのは一人だけ。

 つまり、サコを味方にできたユキコが勝つ。

 ユキコ(本物)は悩む。サコに認めてもらうにはユキコらしく、なおかつ本物にしかできないことを言わなければならない。


 ユキコ(偽物)が動く。


「サコ!早く、あいつを倒しましょ!」


「ですが、ユキコ様。私にはまだ………」


「そんなこと言ってる場合じゃないのよ!

 早く、この獣化騒ぎ抑えないと、国がまずいのよ!」


「ちょっと、急いでいるのは私も同じよ!

 あなたこそ、国をまずくさせている陣営でしょうが!」


「はぁ!?偽物のくせにごちゃごちゃ言ってんじゃないわよ!」


 サコは畳み掛けるユキコ(偽物)に対して待ったをかける。


「ひとつだけ質問させてください。それで決めます」


 ユキコの顔したサコはそう言うとじっと二人の顔を見る。


——たった一つの質問で見抜くと言うの?


 ユキコ(本物)はサコを見直した。

 しかし、冷静に考えて見るとそれはおかしい気がした。


——一問で見抜ける程度なら、これまで入れ替わって来た人たちを見抜けなかったのはおかしい。

——私ですら、今、サコが本物かどうか良くわかっていない。

——本物の可能性が高いだけだ。


 サコは頭を振る。


——いや、もし偽物なら質問する理由がないわ。

——二対一で私を確実に殺せるのに。

——ここは、信じましょう。サコの質問、どんな質問……?

 

 サコはじっと考えていたが、ユキコの目を一人ずつじっと見つめてから、言った。


「あなたは本物ですか?」


「もちろん、本物よ!」

 ユキコ(偽物)は即答した。

 早かった。ユキコ(本物)は考える時間を与えてもらえない。


——私らしく、答えなきゃ。

——本物かどうか?もちろん私が本物なことは一番よく知ってるわ。

——そんなこと主張したって意味はない。

——あいつも主張してる。

——偽物にできないこと……。この場で偽物じゃできないこと!


「なら、偽物は私でいいわ」


 ユキコ(本物)はこう言った。ユキコ(サコ)はぶふっと吹き出していた。


「ユキコ様。天邪鬼がすぎますよ」


「私を選ぶの?」


「ええ。真面目に聞いて真面目に答えてくれることの少ない方が私の主人です」


 すぐにユキコ(偽物)が叫ぶ。


「違うわ!サコ!あいつはそうやってユキコらしさを騙ってるの!騙されないで!」


 ところが、偽物には不運な出来事が起きてしまう。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ユキコ(偽物)は後ろから飛んで来た物体にあたり弾け飛ばされてしまった。

 人間原器の沼の淵ギリギリを飛び壁に激突する。


 飛んで来た物体はユウトだった。


「ユウト!」


「ユウト様!?」


 ユキコとサコの叫び。

 そして、ユウトの下敷きになった者はユウトの治療の“ギフト”によって姿が変わっていた。

 ユキコ(サコ)は慌ててそこに近づき、その姿を見て驚く。


「リュッコ!」


「あちゃーバレちゃったか〜。

 原器で私の存在の定義そのものをいじってユキコになりすましたのに〜」


「存在の定義をいじったのに元に戻った……?

 それに、ユウトはリュッコのことなんてよく知らないはず……。

 ここまで完璧に元の姿にもどすことなんてできないはずなのに」


 ユキコはリュッコとユウトを見比べる。


「ま、わたしは、ユキコのお利口さんな感じ。

 嫌いだったから、元に戻ってよかったよ〜」


 リュッコがそういった時、ユキコははっ!と気が付いたことがあった。


「ユウト様、こちらへ!」


 サコはユウトを起こし、リュッコから引き剥がす。

 ついでにじぶんに触れてもらう。

 ユキコの姿が溶け、元のメイド姿のサコに戻る。

 

 だが、サコは決断を間違えた。

 ユウトを助ける前にユキコの安全を確保すべきだった。


「ちゃ〜んす!」


 リュッコは起き上がった途端ユキコを狙う。

 手に持っていた短刀をぐぐっと引き寄せ、ユキコの心臓を狙う。

 ユキコは一瞬だったが深く考え事をしていた。

 目を開いていても何も見ていないタイミングを狙われてしまった。


「死ねぇ!」


「ユキコ様!!」


 飛び出して来たのは、ミギトだった。

 リュッコの短刀はミギトの左胸に深々と刺さっていた。


「おいおい、ミギトォ。じゃますんじゃねぇよ〜。

 チコを殺しておいて、今更、部下みたいな顔すんのか?」


「どけ!」


 サコの見事な回し蹴りがリュッコに炸裂する。

 リュッコはひらりとかわすと遠くから様子を伺う。

 ユキコは蒼白な顔色をしてミギトを見ている。


「ええ。私は生き物としてやってはいけないことをしてしまいました。

 仲間を、自分を信じてくれていた仲間をその手にかけたのです。

 チコ殿…。彼女の最後の瞳が忘れられません……」


 ユキコは震える声で言う。


「チコ……!死んでしまったのか……!

 でも、あなたは悪くないわ……。

 全てはこの状況を仕組んだ敵が悪いの……。

 サコ……。ユウトを連れて来て……!治すから!」


 だが、ミギトは首を振って言う。


「いえ、ユキコ様。治療の必要はございません……。


 ゲフッ。私は、もともと獣なのです」


「そんな……!」


 ミギトは申し訳なさそうに目を閉じると続ける。


「ここで、彼女らに協力しなければ元に戻さないと言われました。

 私は元々トラでした…。

 私は仲間のことを一番大事に思って行動して…来た。

 早く虎に戻りたくて一生懸命動いた。

 でも、いつの間にか私は人としてできた仲間を裏切るようになっていた……」


 ミギトはユキコの頬に触れると言う。


「ユキコ様……。こんな悲劇、終わらせてくださいませ……。

 獣を、人間原器を使わなければ“ギフト”が使えない人間は“ギフト”を使うべきではないのです………。

 EEから人間を解放するのはあなたしかいません……。

 必ず、そう言う世界を実現してくださいね……!」


「ミギト!遺言みたいなの残すな!今すぐ治してやる!」


 ユキコは吹っ飛んだ衝撃で気絶しているユウトの手をミギトに当てようとする。

 しかし、ミギトはそれを払いのけて言う。


「いえ……、私は治療されて獣に戻るくらいなら、人として死にたいのです……。

 信ずべき仲間を殺した罪……それを抱えて生きれるほど……私は強くない……」


 そう言うとミギトは短刀を体の中へ自ら押し込んだ。


「ぐううっ!心臓に届くのが……っ!わかる………!ゴフッ!」


 そう言ってミギトは事切れてしまった。

 ユキコは大粒の涙を流しながら言う。


「このバカ!!あんたの言う新しい世界を作るために、人手、足りてねぇんだよ!

 勝手に責任とった気になって勝手に死にやがって!!

 後悔したんなら、私の下で馬車馬のように働けよ!!」


 ユキコはミギトの開いた目をゆっくりと閉じてやる。

 ユウトが目を覚ます。


「ミ…ギト……。死んだのか……」


「ユウト……。チコも死んだって……私の仲間、次々に死んでしまう……」


「クソッ……。でも、俺もあと二回致命傷を食らったら終わりだ……。

 俺は戦闘向きの“ギフト”じゃないから……カズトの相手は厳しい……」


「お前、ユキコに何してんだよ!」


 ドスン!と大きな音がする。

 ユウトたちが見たのはリュッコの上に巨大な岩が落ちて来た場面だった。

 リュッコは残酷な笑みを残してあっさりとつぶされてしまった。


「このゴミが。ユキコは俺のもんだって言ってんだろうが。勝手に命狙いやがって」


 リュッコが潰れる様をまじまじと見てしまったユキコはカズトに叫ぶ。


「カズト……。あなた、人の命をなんだと思ってるの……!?」


「人の!?ユキコ。人に価値なんかねぇよ!」


 カズトは両手を広げてわからないとポーズをとる。


「大体な、人の価値を問うてくる人間に一度聞いてみたいことがあるんだ。

 なぜ、人の命の価値だけ語るんだ?

 同じような形してるやつしか認められないのか?

 だとしたらちょっと違う形をした人間は無駄な生き物か?


 同じ考え方をするから価値があるのか?

 考え方なんていくらでも嘘をつけるし、明日には変わる。

 変わってしまったら無価値か?てめぇ自身の考え方も変わるのに。


 しゃべれるからか?同じ言語でないだけで無価値になるのか?

 音で会話しなかったら価値が無いのか?


 生産性があると価値があるのか?

 人間という種の保存にどれだけ価値があるんだ?

 宇宙規模で見たら一粒のゴマ以下の価値くらいしかないんじゃないか?」

 

 カズトは続ける。


「そんな人間に価値があると思ってるやつだって今、心の中では思っているはずだ!

 わかったよ。この世に生きる生き物の命はみんな平等だとな!」


 カズトの演説は熱を帯び始め、彼は汗をかいてしゃべっている。


「だがしかし!無があるから有があるのだ!

 すべての命が有価値ならば、結果的にその命は平等に無価値!

 どうして人だけを特別視する!?

 強い個体だけが生き残り、強い個体だけが権利を主張でき、強い個体だけに価値があるんだよ!」


 ユキコはユウトがこれまで見たことのない、怨嗟の表情を浮かべる。


「なら、あなたが、死んだら。それはあなたが弱かったってことよね。

 弱肉強食の世界ってそう言うことだもんね……?」


「ああ、もちろんだ!そして、俺は絶対に負けない。

 その準備をして来た。ユキコ、お前は必ず、俺の人形にしてやるぜ」


 ユキコは黙ってユウトをおんぶする。


「ごめん、ユウト。一回分。私の怪我の治療に使って」


「……いいよ。俺はユキコの専属医師。

 君が普段通りに戦えるようにメンテナンスするのが仕事なんだから」


「……ありがとう」


 ユキコはユウトをおんぶする。

 ユキコは自分の胸にユウトの掌の温かみを感じる。

 ユウトのTシャツはすでに首元から腰にかけて破けてしまっている。


「悪いわね。私たちは二人で一人ってことにするわ」


「いいぜ?だが、ユウトは殺すからな?」


「その時は私も一緒に死ぬわ」


 ユキコはくるりと後ろを振り返るとサコに指示する。


「サコ。ここはいいからミヤコを助けてあげて。

 あなたでは私の戦闘速度についてこれないから」


「……わかりました!」


 サコは少しためらったのちに走り出した。


——私にもチコのような戦闘能力があれば、こう言う時役に立てるのに!

——正直、ユキコ様に先に見出されて優越感がなかったわけじゃない。

——でもユキコ様と腕試しをするチコ。

——私は羨ましかったわ。もう任務から解き放たれたのなら、ゆっくり休んで……。


 サコは涙を拭いて走った。


 カントはそんなサコを見送るとユキコの方へ振り返る。


「さて、ユキコ。俺のものになれ!」


「お断りよ!身体強化・レベル10!」


 ユウトはユキコの見ている世界を初めてみることになる。

 どうやら、おんぶされているユウトにも身体強化の影響が現れているらしい。


——すごい、時間がゆっくりになったみたいだ。


 ゆっくりと動くカズト。

 その横に走り込むとユキコは拳を固めて殴りかかった。

 だが、カズトの顔に拳が届く前に止まってしまう。


「ほぉ、すごいスピードだな。だが、それじゃあ届かない」


 ユキコは後方に飛んで距離を取る。


「カズト、一体どんな“ギフト”が……?」


 ユウトは答える。


「俺が確認しただけでも7種類だ。

 まず火、水、土、空気、雷、重力の六大元素。

 これらは全部自由にあやつれる!

 それに加えて自分の周囲に物理的障壁を作り出す“ギフト”だ」


「ずいぶんバランスのいい“ギフト”を集めたわね……」


「ふふふ、大変だったんだぞ。

 こうして自然の力を操る“ギフト”を持っている生き物を集めては奪い取る。

 俺が望む“ギフト”を集められたのは最近のことさ」


 カズトはそう言うと地面に手を当てる。


「最近手に入れたのはこの重力操作の“ギフト”だ。早速試させてもらうぞ」


 ズンッ!とユキコは自分が突然重くなったような感覚を得る。

 みると自分の周囲だけ少し陥没していた。


「負け……るかぁ……!」


 ユキコは重力の呪縛を無理やり突破すると高速で走り始める。

 重力も視線などなんらかの方法でユキコを捉えなければならないはずだった。


「火の祭り」


 カズトの炎を操る“ギフト”と空気を操る“ギフト”の合わせ技。

 ドーム状の洞窟内にブワッと火が広がり、熱気が立ち込める。


「ふっ!」


 ユキコは火を物ともせずに駆け抜ける。

 火の勢いが空気によって強くさせているため、一瞬通るだけでも皮膚の表面があぶられるほどに熱い。


「ユウト頼むよ!」


 ユウトは必死でユキコに触れていた。

 自分の掌から流れるEEの量でユキコの怪我の具合がなんとなくわかる。

 掌から流れるEEは徐々に増えていた。


「ちょこまかと。そんなに頑張ったって俺に攻撃できないよぉ。

 ウォーターカッター」


 強い圧力をかけた水が土から噴出する。


「きゃあああああああ!」


 突然足元から出て来た水による斬撃をユキコは避けきれない。

 むしろ自ら突っ込んでしまった。


「ユキコ!」


 ユキコの左足がズタズタに切り裂かれて落っこちてしまった。

 ユウトはユキコの足をすぐに治す。

 血管や神経、筋肉、骨が定位置に戻り、元のユキコの足へと変貌する。


 治療中にも関わらず、ユキコは悲鳴一つ上げずカズトから目を離さない。


「大丈夫、ユウトはそのまましがみついてて」


 壁際を走っていたユキコはドンっと壁を蹴って一気にカズトに接近する。

「オラァ!」


「無駄だって」


 ユキコの拳はカズトに届かない。

 それでも、ユキコは次々と拳でカズトを殴り、蹴る。


「ワカンねぇかな!あたんねぇんだよ!黒い雷!」


 重力の力を込めた雷がユキコを直撃する。


「あががががががががが!」


 感電したユキコからは煙が登る。

 すぐに煙は治るが、痛みは確実にユキコを蝕んでいる。

 だが、ユキコは痛みの中でも笑う。


「ユウト、殴る勢いによって物理障壁に当たるまでの時間が違うわ。

 早ければ早いほど、あいつの体に近づく。

 ユウトが治してくれるから、リミッター解除するね」


 そう勝手に決めてしまったユキコは自分のEEをさらに燃やす。


「身体強化・限界解除」


 これまでユキコの体を覆っていたEEの倍以上の輝きがユキコから放たれる。

 白い髪の毛と合わさって神々しいほどだった。


「さすがは俺のユキコだねぇ。俺も本気で戦えそうだぁ」


「無駄口は私の速さを見てから言うことね」


 ユキコの姿がブレる。

 同時にカズトの目の前に現れる。

 超速の踵落としがカズトに決まり、重力操作によって浮かんでいたカズトを地面へと叩き落とす。


 すぐに第二撃を行うべく、カズトに近づく。

 EEを一瞬噴射して空中で加速する。

 ユウトはどれだけユキコが無茶をしているのか実感する。


——限界解除してから常に骨折再生、内臓破裂再生レベルのEEが使われていく!

——文字通り、限界を超えて身体強化している!


 地面に叩きつけられたカズトに凄まじい勢いでユキコは迫り、拳をぶつける。

 次々と繰り出す拳。

 ユキコは一発ずつ加速量を多くし、カズトに反撃の隙を与えない。


 最後の一発は最大限EEを込めて加速させた拳!


「ぐううう!」


 カズトの周囲は陥没し、彼はついに両腕でユキコの攻撃を防ぐ。

 だが、ユキコは唇を噛んでそれを見ていた。


「届いてない……!」


「惜しいねぇ!後一ミリくらいじゃないか?

 あはははは、君の全力をもってしても俺の半分くらいだなぁ?」


 ユキコはバッとカズトから離れる。ユキコはユウトに小声で問いかける。


「ねぇ、ユウト。

 私が私じゃなくなっても、あなたは私の味方でいてくれるよね?」


 ユウトはユキコからのメッセージを受け取った。

 そして、自分を負ぶってくれている彼女の覚悟も。

 命どころか、彼女は彼女の人間性すらもかけて戦うと言っているのだ。


「わかった。君を信じるよ」


 ユウトがそう言った瞬間、ユキコはいつの間にか試験管にすくっていた深緑色の液体を飲み込んだ。

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