第43話 コタンタン町.4


朝はアイリちゃんに起こされる


左手はお約束のモニュポヨン、アリサさんのモニュポヨン掛布団も健在である


アリサさんをどかして共同浴場に向かうとする



入浴後のフルーツ果汁入りミルクを飲んでいるとミリアちゃん達が出てくる


深紅の女性も一緒である、彼女の名前はローザと教えてもらった


ミリアちゃんがフルーツ果汁入りミルクの瓶を渡す


不思議そうに受け取りミリアちゃんの指導の下に正しい作法で一気に飲み干す


余所の子になんてこと教えてるのかと



ローザと共に教会でお祈りをする、彼女もまた敬虔な信者のようである


しかし彼女の祈り方はちょっと違ってた


神に祈りの言葉を捧げながら自らを傷つけている


自らの爪で自らの皮膚を切り裂き血がにじみ浮きだし流れる


手の甲を腕を胸を自ら傷つける


もしかして体の傷は戦闘ではなくこの祈りの痕なのかと


俺の視線に気が付き何事もないかのように長手袋をしショールを羽織り肌を隠す


目の前で見るとだいぶ引く光景であった



朝食はローザと一緒に取るデサジューノ&メリエンダ・メディア・マニァーナである


タルタ・デ・サンティアゴにレチェ・フリータにポルボロンにマサパン


ブレンド茶とホットチョコレートなど各々好きなもので楽しむ


ミリアちゃんがしきりにローザに話しかける、アイリちゃんも話しかける


アリサさんは学者魂に火が付いたのか手帳相手にブツブツ呟いている



昼に武器屋に品物を受け取りに行く


水晶を銅の飾りが覆い長い鎖が付いている、鎖の先には銅の棒が付いている


完璧である、礼を言って船に戻るとする


船で水晶に魔法陣を刻んで、固めた触媒に水晶を埋め込んで完成である


銅の棒を海に沈めてテストしてみる


問題なく起動しているようである




カール王子を探すが居ない、アン王女も出かけているようである


今日もコックに言われてローザも一緒に釣りである


夕食までに誰が大物を釣れるか競争である



夕方にはカール王子も船に戻ってきたのでアースを見せることにする



「これは?」


カール王子が聞いてくる



「魔熊対策用の防具です、盾に付けて大地とつなぎます」


アースの説明をする



「そんなことが出来るのか」


「それは面白い」


「研究の余地があるようだ」


「どうやって思いついたんだい?」


カール王子が食いついてくる



「ただ、魔道具の逆が出来ないかと思ったんですよ」


「それでアリサさんに考えてもらったんです」


エッヘンである



「この短時間で良くここまで」


「さすがはアリサ教授だな」


カール王子はアースをしげしげと観察して、魔法陣を読み解いている


しきりに感心していた


お褒めに預かりアリサさんも鼻高々である



「ところで、あちらのご婦人は?」


カール王子がローザを見る


ローザは針に掛かった魚と格闘中であった



「えーっと、件の話の女性です」


カール王子に答える



「もう知り合いになったのかい?」


「しかも、仲良く釣りまで」


何やらあきれた様子である



「あれはミリアちゃんがですね」


「俺ではないですよ」



「同じようなものだよ」


軽く笑うカール王子である



「では、このアースは預からせてもらう」


「討伐の日までに出来るだけ多く作らせるようにしよう」


ジャラりと鎖を鳴らしてカール王子が船室に入っていく




それから討伐の日まではローザとずっと一緒だった


デサジューノにメリエンダ・メディア・マニァーナにコミーダにメリエンダでセナである


釣りをして、もう一度要塞の観光と灯台に登る、岬の高台にピクニックに行く


サロンでおしゃべりして帽子屋に洋服屋に鞄屋に靴屋にショッピングでキャッキャウフフ


船の貨物室でミリアちゃんとアイリちゃんとアリサさんとローザで仲良く寝て起きる


俺はのけ者であるが、夜中にアリサさんは俺の所にくるからまあ良いかと



討伐の日の朝、アイリちゃんに起こしてもらう


左手のモニュポヨンを起こす、両手でモニュポヨンする


モニュポヨンモニュポヨンモニュポヨンモニュポヨンモニュポヨンモニュポヨンする


40モニュポヨン程でアリサさんが目覚める


顔を前髪で隠すが真っ赤である、おっぱいを腕で隠しながらジリジリと俺から下がる


シーツで体を隠してコソコソしだす


俺も支度をしてみんなで共同浴場に向かう


みんなでフルーツ果汁入りミルクを正しい作法でグイっといく


みんなで洗濯する


俺以外で教会で神に祈る、ローザはまた自傷しながら祈りを捧げている



みんなで朝市を回るが商品はほとんどない、すぐ売り切れるのだろう


人もさらに増えているようである



船に戻り食事をして装備を整えて冒険者ギルドに向かう


冒険者ギルド前は人だかりである


カウンターで参加申請をしてパーティ編成をして魔の森の森狩りに向かう


俺達も列に並びローザをリーダーとして参加申請をする



「いつの間に知り合ったんだ?」


カウンターにいたレオンが話しかけてくる



「うちの子と仲良くなりまして」


レオンに答える



「仲良くなったって…おまえ」


レオンも言葉に詰まる



「では、いってきます」


レオンに他に返す言葉が出てこない



魔の森への道にはカール王子の騎士団が待機している


海兵は既に森に入り包囲を狭めて追い立てているらしい


自警団と冒険者が魔熊を探す、魔熊を見つけてから騎士団が突入である


俺は森狩りが面倒なのでカール王子の傍にいる


カール王子がそんな俺を見て笑う


ローザは森に入りたがったがミリアちゃんが止めている



しばらくするとカーンカーンカーンと木の板を叩く音が聞こえる


見つけたようである


音の方向に冒険者が自警団が走り出す


騎士団は隊列を組み進む


俺達はカール王子と護衛の魔術師達と一緒に行く


アン王女もマイケルもフェイさんもうり坊を抱いた執事も一緒である


木の板を鳴らす音はいたるところから聞こえる


この辺りにいるようである



「キッキキキッキ」


マイケルが魔の森を指さす


指さした先


騎士団の隊列の右側の魔の森の中から大きな影が飛び出してくる


毛が逆立ち紫色の火花を散らす体長4メートルほどもある黒いクマである


騎士団の中央が吹き飛ぶ



「アース用意」


カール王子がすぐさま指揮をする


騎士団が足元の地面に銅の棒を埋め込み盾を構えてクマを包囲する


司祭が神の加護を唱える


淡く光輝くオーブが空から降ってくる、騎士団が淡く輝く


護衛の魔術師が騎士団に魔法を発動する


水の防御と土の防御と防御力アップと攻撃力アップである


アリサさんは吹き飛ばされた騎士団の治療と麻痺の解除を行っている


俺も手伝うことにする



クマは暴れる


走り突撃する、爪を立て薙ぎ払う噛みつく


騎士団は盾を構えてクマを抑える


ひと当たりごとに銅の鎖に電気が走る



「包囲から出すな、各自連携を重視せよ」


「弓と槍を土と水の魔法で強化せよ」


「高レベル以外の魔熊への直接魔法は控えよ」


カール王子が指示を飛ばす


護衛の魔術師とアリサさんはバッツンバッツン魔法を魔熊に撃ち込む


冒険者パーティの魔術師は数度直接魔法を撃った後は支援に徹している


矢が放たれ槍が突く


騎士団がクマを抑え込む


クマは騎士団の壁に何度と無く体当たりをする、爪を立て牙をむく


騎士団はクマを阻む、身体強化して盾の武技を惜しみなく使う


神の加護に守られ鉄壁となる



当然に、クマも技も使う


飛び上がりスタンプからの全方位の放電からのかち上げである


地面が割れ騎士団の一角が崩れアースも抜ける


俺とアリサさんはすぐさま治療の魔法を飛ばし麻痺の解除に治癒の魔法を使う


クマはカール王子に咆哮しながら突進する


カール王子と護衛の魔術師は呪文を唱えて迎え撃つつもりである


ミリアちゃんが盾を構えてカール王子の正面に回る


身体強化をしてバッシュを下からクマに撃ち込む


クマが吹き飛ぶ


大きく弧を描いて頭から地面に落ちる


そこにカール王子から放たれる幾本もの光の矢が捻じ込まれる


地面からも幾本も伸びる槍がクマを貫く


水の槍もクマの身体を貫く


竜巻が起り火炎が舞う


クマが飛んで行ったことにポカーンとするミリアちゃん


その肩にマイケルが乗る、ミリアちゃんの頭をポンポン優しく叩く


よしよし、かよと


マイケルが俺を見る、力こぶを見せつけてくる


はいはい、ありがとうと手を振る


騎士団は既に体制を整えている、アースも刺しなおしている


冒険者たちも弓を撃ち槍を振るう


クマは起き上がり咆哮する


騎士団に体当たりして爪を立ててて牙をむく


このまま押し切れると思ったところで包囲していた騎士団の触媒が切れる


入れ替わりに控えていた騎士が前に出る


その隙にクマが包囲を破る


クマは走り回る暴れ回る


弓が放たれ槍が振るわれ魔法が飛び交う


業を煮やして剣で突入するものは弾かれ、帯電する雷に身を撃たれる


ミリアちゃんも前に出る、クマの正面に陣取り盾を構える


ミリアちゃんの盾は既に強化済みである


土魔法のアースシールドの効果を付加している


アイリちゃんも前に出る、槍の風の刃を発動してクマを突くえぐる


アリサさんと司祭は治療と治癒を続けている


ローザも前に出る、防御など考えていない全力で両手剣をクマに叩きこむ


弾かれ雷に撃たれ麻痺しても引かない、戦技を撃ち続ける


俺は触媒の切れたアースを回収する


回収して鞄の中の新品のアースのコピーと交換して渡す


アースを交換した騎士が前に出てクマを抑える


順番に騎士のアースを交換する


こんどはアースをクマに巻き付かせる、投げてフライで操作する


クマに何本もアースを投げつけ巻き付ける


クマの紫の帯電が消える


地面にこすれる銅の鎖が火花を散らす


それを見て騎士団もアースをクマにかける


突撃する


剣で槍で拳で突撃する


魔法が放たれる、光の矢に水の矢に土の槍に風の刃に炎が爆ぜる


クマを押し倒し騎士団が海兵が自警団が冒険者が殴る切る突き刺すえぐる刻む


クマが動かなくなるまで誰も手を緩めなかった


そして


クマは動かなくなった


ローザはクマの傍らでクマを見ていた


クマは魔石に変わり姿を消す


ローザは魔石の傍らで魔石を見ていた



勝どきがあがる


声で地面が震えるほどに




深夜、港の北側の岬に立つ


討伐で町はお祭り騒ぎである、飲めや歌えの大賑わいである


しかし、幽霊船の件は解決していないのである


ローザの最後の晩餐も終えてここにやってきた


彼女は逃げようともしないし、命乞いもしない


淡々としていた


ここは数日前にみんなでピクニックに来た場所である


ピクニックのメンバーの他にカール王子と名主と提督の爺さんと冒険者ギルド長がいる



「ローザ、すまんな」


レオンがローザに申し訳なさそうに話す



「いや、礼を言うのはこちらです」


「ありがとう」


ローザが頭を下げて礼を言う



「他に何か希望は無いかね?」


紳士の名主がローザに聞く



「いえ、願いは叶いました」


「十分です」


ローザが紳士の名主に微笑む



「しかし何かあるじゃろ?」


「なんでもいい、言ってみよ」


提督の爺さんがローザに話す



「では」


「村の人達の墓を」


「墓をお願いします」


申し訳なさそうにローザが言う



「よかろう、おぬしを含めて墓を用意しよう」


「海軍がある限り弔い続けると約束しよう」


提督の爺さんが答える



「名主としても約束しよう」


紳士の名主も答える



「冒険者ギルドもだ」


レオンが答える



「ありがとうございます」


ローザは深々と頭を下げる



カール王子は一言も発しない、見ているだけである


ローザはミリアちゃんの傍に来る



「ありがとう、楽しかった」


ローザはミリアちゃんを抱きしめる


ミリアちゃんがうなずく



「ありがとう」


ローザはアイリちゃんも抱きしめる


アイリちゃんがうなずく



「ありがとう」


ローザはアリサさんも抱きしめる


アリサさんがうなずく



「ありがt」


ローザが俺に抱き着くのを制する



「そうか、ありがとう」


ローザはおれに頭を下げる



5人を残し俺達は岬を後にする


岬の下の入り江に向かう、断崖絶壁のぶっつけの潮である



「で、どうするの?」


アリサさんが聞いてくる


ミリアちゃんもアイリちゃんも俺を見ている



「考えた結果、成仏は無理かと思いまして」


話している途中で3人が顔を近づけて無言の抗議をする



「成仏が無理なら封印できないものかと考えています」


「はい」


恐縮しながら答える



「封印?どうやって?」


アリサさんが聞いてくる



「これで」


「要するにスノードームだよね」


水晶を出して3人に見せる



「スノードーム?」


ミリアちゃんがキョトンとする



「この中に入れるのです?」


アイリちゃんが水晶をつつく



「アイリ正解」


出来ればだけどね



「では作戦を説明します」


「落ちてきたローザさんをアリサがフライで引き寄せる」


「ミリアが受け取る」


「アイリが黙らせる」


「以上です」


「質問は?」


首を振る3人、質問は無いようである



しかし、幽霊船がいつ現れるのかなと考えていたら霧が掛かってきた


良い展開ですと、ご都合主義に感謝していると


海面をこちらに向かって歩いてくる人影が見える


海の方から海面を歩いてくるのである


やばい


アリサさんが倒れると振り返る


しかし、既に気絶してミリアちゃんとアイリちゃんに支えられていた


ミリアちゃんもアイリちゃんも人影を見て震えている


ファンタジーなのに


しかし、アリサさんが幽霊に弱い事を忘れていた


フライ要員が居なくなってしまった


震えているミリアちゃんとアイリちゃんの視線を追う


振り返って人影の方を見ると


しだいに姿があらわになる


貿易会館1階カウンターの爺さんがそこにいた


ああ、爺さんだったのかと



「えーっと、あなたが嵐を越えるのに協力しましょう」


「時期は言えませんが必ず約束は果たしましょう」


「それまで封印されてくれませんか?」


水晶を見せる



爺さんが笑い、姿が消える


そして幽霊船が目の前に現れる


霧を纏う朽ちた帆船である、嵐に敗れ沈んだ船である



「さまよえる幽霊船、ヘンドリック船長よ」


「この港から出港していただきたい」


「貴殿の望みは叶えられないが乙女を捧げる事は出来る」


「どうかこの港から出航してほしい」


「乙女を捧げる」


崖の上から紳士の名主の叫びにも聞こえる声が聞こえる



霧の向こうから影が落ちてくる


フライで引き寄せる


気を失いグッタリとしているローザがこちらにやってくる


ミリアちゃんに受け渡す



水晶を幽霊船に向けて覗き込む


水晶の向こうで幽霊船と霧が揺らぐ


吸いこまれるように霧が水晶に溶け込んでいく


水晶の中に幽霊船は残り水晶の向こうの幽霊船は消えている


静かに霧が晴れて行く


視線を感じて崖の上を見るが何も見えない


暗くて遠いのだ、見えるはずがない



水晶の中の幽霊船を眺める


幽霊船は霧を纏いながら航行している


爺さんの顔やドクロが浮かんでは消えて行く



「約束は必ず守りますよ」


水晶に向かって呟く


水晶を時間停止のポーチにしまう



アリサさんとローザをフライで運ぶ


船まで運ぶわけにはいかないので岬の方に行き芝生に寝かせる


ミリアちゃんとアイリちゃんは嬉しそうである



「うふふ、マサトさんありがとうございます」


「さすがは私達の魔法使いさま」


ミリアちゃんが上機嫌である



「マサト様、ありがとうです」


「さすがは魔法使いさまです」


アイリちゃんも嬉しそうだ



「まあ、いいけどね」


「ローザさんに上手く説明してね」


2人が起きるまで待つとする


夜の潮風が芝の上を走る、なかなか心地いい




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界をチートとハーレムと旅行と @ikenob

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ