びっくりDEATH! まさかこんな人だったなんて
@jun2000
びっくりDEATH! まさかこんな人だったなんて
「人生は100年超えてからが勝負!」
そんなすごい事を曾祖父は口にしていた。ミラクルマンみたいなたくましがあって、ジェントルマンみたいな紳士でもあった。だから周囲とか世間は、勇造という男に対してこんな事をつぶやいていたモノである。
ーさすが勇造! 100年経っても大丈夫ー
しかしそんな男も、正月の餅がノドにつまってアウト! 100年生きても終わる時はあっさり逝く。まさに教本みたいな死にざまだった。
「グスン……ひいおじいちゃん……」」
高1のひ孫こと、香坂帆乃香はわんわん泣いてしまった。たのしい正月もドーン! と沈んでしまった。香坂家は灰色のようなオーラに包まれてしまう。
「ほんと……曲がったことが嫌いで絵に描いたような紳士だったわね」
帆乃香の母は勇造を褒めたたえた。それは大家族全員が思う事であり、勇造の人生が男らしくステキだったことを証明している。
「それでさぁ、おじいちゃんが使っていた部屋はどうなるの?」
帆乃香がそれとなく口にしてみた。香坂家はめちゃくちゃにお金持ちだから、曾祖父から帆乃たちが一同に暮らしてもスペースは余りある。曾祖父が使っていた2階の部屋は空っぽになるという。置かれているモノはすべて処分するとのこと。
「じゃぁさ……ひいおじいちゃんのパソコン……わたしが引き取ってもいいよ?」
帆乃香いわく、勇造の部屋にあるハイスペックなゲーミングPC(ノート型)を自分が引き取る。思い出を大切にしたいというのが表向きで、実際のところは前々から欲しいとあこがれていた。
「そうだなぁ……帆乃香が引き受ければ、ひいおじいちゃんもよろこぶだろう」
まるで軽いせんべいでも食べるようにサク! っと認めてもらった。香坂家の面々の大半はパソコンにうとい。それがライトな無責任と絡み合うモノだから、曾祖父のパソコンをひ孫娘にあっさりくれてやったりする。
「大丈夫、わたしちゃんと責任もつよ」
帆乃香は両親を安心させるため、自分のイメージを良くするため口にしておいた。大切なモノは外に出しておく。プライベートなモノも同じで、決して中身は見ない。その上でパソコンはリカバリーさせてもらうと。
「ひいおじいちゃん、今日からこのパソコンは帆乃香が使わせてもらうね」
神妙な面持ちとやったぜ! 的な心が混在する。帆乃香ルームの机には勇造が愛用していたゲーミングPCが置かれた。
まったくの余談だが勇造が使っていたPCはすごいモノだ。なんせCPUは50コアにして100スレッド。メモリは32G搭載し、ハードディスクは100Tで1万5000回転ときたものだ。
ーノート型にしては熱すぎるだろうー
そんなすごいパソコンを帆乃香はゲットした。さっそく中身をチェックさせてもらおうと電源を入れた。
「すごい! Windows10が15秒で立ち上がった!」
帆乃香はホクホク顔でうれしそうな声を出す。そうしてパソコンが立ち上がってみると、いわゆるごくふつうのデスクトップ画面が出現。そう、この時点ではふつうにしか見えないパソコンなのである。
「ひいおじいちゃんはこのパソコンで俳句を書いたりラジオを聞くのが好きだって、よく言ってたなぁ」
しんみりとした表情でマウスを動かす。それとなくDドライブを開いてみる。するとまず最初にエロゲーと書かれたフォルダが目にとまる。
「え、エロゲー?」
100歳の老人がエロゲー? なんて思いつつ、まさかね? なんて感じで開いてみた。するとどうだろう、びっくりするほどアイコンが並んでいる。
「やだなにこれ……」
帆乃香はずら~っと並ぶエロゲーアイコンを見た。その数じつに10万個であり、エロゲーミュージアムがつくれそうな感じだ。
「ま、まぁ……100歳になると何かを悟るって事はありえるよね!」
Eカップの胸をドキドキさせつつ、ここは前向きに考えようと深呼吸。100年も生存すれば、二次元の方が好きになるかもしれない。そう思えばまったく腹は立たない。それどころか、ひいおじいちゃんかわいい! と……苦しいながら思えなくもない。
「エロ系って名前のフォルダか……」
ゴクっとつばを飲む帆乃香だった。それを見ちゃうってことは、100歳の性癖が丸わかりってこと。
「ひいおじいちゃん、帆乃香だったら見てもいいよね!」
女子高生が勇気を出してクリック。するとまず巨乳って書かれたフォルダが目に入る。これに関しては、帆乃香はちょっと赦せると思った。
「まぁ……おばあちゃんが爆乳だったもんなぁ……これはもう仕方ないのか」
やさしい理解を胸にもつ帆乃香。でも他のはちょっと意外だった。ジェントルマンがこんなモノを! と言いたくなる名前のフォルダがゴロゴロ。どうやら性癖は色々あって、しっかり個別に保存していたらしい。それはまさに男の熱意そのものだ。
「ま、まぁ……男だもん。うん……男性はHで当たり前。わ、わたしだってもう高校生なんだから、そんなことに腹を立てたりはしないんだ」
少しハァハァっと息が切れている。早くパソコンをリカバリーしたいと思うのだが、ここでふとフリーの日記ソフトが目に入る。
「日記……日記かぁ……」
ーどっくん・どっくん・どっくんー
帆乃香が心臓をおちつかせようと左手を胸にあてる。なかなか豊かでやわらかい弾力の内側がドキドキするせいだ。
ーひ孫娘とはいえ曾祖父の日記を勝手に見てはいけないんだよー
これがまず天使の放つメッセージ。白い衣装の存在が帆乃香に理性を促す。たしかにそのとおりだと一応は思う。
ーひ孫娘なんだからさぁ、ジジイの日記を見ても罪にならないってー
これが悪魔のささやく声。黒い衣装のやつが帆乃香に冒険を促す。人の道に反することをやろうぜ! とささやきまくる。
「み、見ようと思っても……パスワードがかかっているはず……」
帆乃香は言い訳をしていた。白い矢印を動かしても、パスワードがかかっていて見れないはずだから自分は無罪だと。
ところがどっこい!
「あ、あれ? ウソだ……」
なんと日記を開けてしまった。パスワードがかかっていなかったので、すごいスピードで日記が立ち上がってしまった。
「パスワードをかけないなんて……ひいおじいちゃんの男らしさって事なのかな」
帆乃香は日記を閉じようとはしたが、そこはやはり人の心がもつ弱さってやつで、なんだかんだ言い訳して見てしまうのだった。
ー勇造の日記。〇〇月〇〇日。本日は将棋クラブに行った。相手のやつ、ワシが待ったを頼んだのに拒んだりする。仕方なく腹いせに、やつのお茶に鼻くそをプレゼントしてやったんだ。ざまーみろ! 老兵は死なず!ー
「ぇ、えぇ?」
読んでおどろかずにいられない帆乃香だった。鼻くそをプレゼントだなんて、紳士のやる事ではないからだ。
ー勇造の日記。〇〇月〇〇日。暑いのでジュースを買おうとコンビニに入った。そこまではよかったが店員の態度が気に入らない。だからトイレの便器にでっかいのを落としたら、流さずに退出してやった。ざまーみろ! 老兵は死なず!-
「うぉぉぉ!」
たまらず叫び声をあげる帆乃香だった。天井を見上げた後、ぜいぜい息を乱して手を握る。そしてこれには言わずにいられない。
「100歳のくせに中身は小学生か!」
ふざけんじゃねぇ! とか思いながら、その一方ではちょっと面白いからと読み続けてしまう女子高生だった。
ー勇造の日記。〇〇月〇〇日。歩いているとわかい女のスカートが、恵みの風によってまくり上げられた。でもがっかりさせられた。なぜなら見えたのはクマさんパンツだったからだ。20歳を超えてそれはないだろうと哀しいキモチにさせられた。でもいいモノを見れたのは確かだ。老兵は死なず!-
「見せるためにパンツを穿いてるんじゃないからね!」
帆乃香はイスから立ち上がっていた。真っ赤な顔をしてパソコンを指さすと、クマさんパンツの何が悪いのよ! と声を荒げてしまった。
「ちがう、これは勇造おじいちゃんの書いた日記じゃない……きっと別人だよ。別人がこっそり書き換えたりしたんだよ」
しだいに腹が立ってきた。でも最後にもう一つだけ読もうと思ってしまう。それは人の心にあるかなしい性質。
ー勇造の日記。〇〇月〇〇日。今日、こっそり帆乃香の下着を見た。ブラジャーがEカップだと判明。なかなかいい成長具合。亡くなった婆さんの血が脈々と受け継がれているようでうれしい限りだ。帆乃香の乳がどれくらい成長するか、それを見守るためにもそうそう簡単には死ねない。老兵は死なず!-
「やだもぅ……ひいおじいちゃん……」
ぐったり疲れたという感じで、帆乃香はボーッとしてしまう。100歳超えても元気だとは思っていたが、これは元気の悪用だと言いたくなった。
いや、実際に祖父のパソコンには元気の乱用がたっぷり見て取れる。浮気という名前のフォルダには、どこぞの女と浮気したときの記念写真が星の数ほど入っている。
「たまにちいさな旅行をしたいとか言っていたのはこれが原因か!」
帆乃香が赤い顔で手をにぎりしめる。知らない場所で仲良く微笑む勇造と浮気相手、くったくのない笑顔でWピースをやっていりしている。
「ひいおばあちゃんだけが最高の女とか言っていたくせに、ひいおばあちゃん以外の女性は目に映らないとかほざいていたくせに」
帆乃香はおよそ200万枚ある浮気画像を、家族に見せてやろうかと思った。ジェントルマンも一皮むけばデビルマンなんだと訴えたくなった。
「クソジジイめ!」
初めて荒々しい言葉が出た。でも……それでも曾祖父をキライにはなれない。なんだかんだ言っても愛情は不変。たのしかった思い出は大切にしたいとも思う。
「まぁいいか……あの世でひいおばあちゃんに怒られたらいいよ」
ひとまず愛情にて心を平穏に保てた。帆乃香は決して祖父をキライになったりはしない。悪口を言う気もない。
でも……
「ひいおじいちゃんは素晴らしい紳士だったわね」
誰かがそう言うと心の中で、次のように反論したくなるクセがついてしまった。
(ただの幼稚なエロジジイだーつの!)
びっくりDEATH! まさかこんな人だったなんて @jun2000
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