自称ゲーマーの僕が唯一攻略できないゲームについて

皐月鬼

攻略開始

 僕はゲームが上手い。流石に、ゲームをすることを職業とするプロゲーマーと比較してそれ以上のプレイヤースキルがあるのか、そう問われてはいと答えるのは傲慢だし、そう答えるつもりも毛頭ない。

 それでも僕は、自分でゲームはかなり上手い方だと思う。ジャンルを問わずにあらゆる作品を今まで遊んできたが、それらのうち一秒でもプレイ中行き詰まったものはなかった。全てのゲームは僕にとって「ヌルゲー」で自然と脳内に攻略法が浮かび、同時に指が動く。そうやって迷うことなく、あっさりとクリアしてしまうのが僕の普通だった。

 だがそれはある日、呆気なく壊された。


 僕は梅雨のある日、ゲーム内イベントに参加した。ジャンルはMMORPG。内容は「制限時間内にどれだけの敵を倒し、高スコアを獲得できるか」というもので、年に四回行われる。特にプレイヤーレベルの違いによるハンディキャップは存在せず、個々のプレイヤーが今まで得てきた武器、防具、スキルの全てを駆使して争う。

 イベント開始の合図と同時に、プレイヤーが一斉に走り出した。まずはフィールドに大量発生している雑魚モンスターの処理からだ。他のプレイヤーに負けじと僕も攻撃を入れていった。

 そして、雑魚モンスターをある程度倒した所で中ボスが現れた。当然雑魚モンスターよりも獲得できるスコアが高いため、プレイヤーは攻撃の対象をそちらへ変えた。

 僕も高スコアを狙うべく中ボスへと狙いを変え、スキルを叩き込もうとした。しかし、

「……効かない?」

 僕の攻撃が入らない。何回、何十回と武器とスキルを使って攻撃を試みるが、一ダメージも入らないのだ。何かのバグか、そう疑って他のプレイヤーの様子を窺ってみるが、誰も気に留めることなくダメージを与えていく。

 ダメージを与えるのに特別な条件が存在する可能性を考えてみるが、周囲の様子からその線もおそらくない。

 自分だけダメージが与えられない、その理由を考える、考える、考える……



『終了まで残り五分です』

「……え?」

 考えているうちに、気が付けばイベント終了五分前になっていた。

 周りにはもう誰もいなかった。

 突如、孤独感と後悔の気持ちで胸がいっぱいになった。そして、やっと現状を理解した。

 僕の攻撃が敵に入らなかったのは運営のミスでも、イベント特有の仕様でもない……自分のレベル不足で。今の状況は、自分のやり込み不足が招いた結果なのだと。

 完全にこのゲームを舐めきっていた。やり込まなくても、容易に攻略できるものだと思っていた。プレイヤースキルで何とかなると思っていた。

 だが、現実は違った。結果なんて見なくても分かる。この有様だ。参加プレイヤーのうち最下位は免れないだろう。


 このままではいけない。僕のプライドが許さない。だから僕はこの日から、このゲームを死ぬほどやり込み、全プレイヤーを完膚なきまで叩き潰す決心をした。 


ゲームタイトル――学校

イベント名――定期考査


 攻略開始。

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