彼女の笑顔の下で一枚一枚落ちていく花びら。
一枚一枚落ちていく時間の流れ。
それでも私はここにいると告げる彼女の命が、その花びらが落ちる波紋で伝えようとする。
だけど、「僕」はそれを感じることはできなかった。
ただ、失ってわかる彼女との時間。彼女は「僕」の中で笑っている。
儚く綴られる物語は、僕(彼)と私(彼女)で語られます。そして、彼女との出会いは彼にとって価値観を変えるものだった。
人が過ごす時間は限られている。その中でどう生きるのか、どうかかわるのか。それをこの物語は教えてくれている気がします。
最初、彼に自らの弱さを重ねたような彼女は、彼に対していい感情を持っていません。でも、命の花を散らしながら過ごす彼との時間で、自分らしくあり続けようとした彼女も変化していきます。
『死にたくないよ…』
最後の一枚で見せた感情。それは変化という名の生きている者の証。
意味などないとは言わせない。
凛として咲き続けた彼女と、あとでそれを知る彼。
雨か涙か分からない笑顔を最後に見たという彼の言葉に、彼の静かで強い意志を感じました。