私の町の小さなトンネル

安里 新奈

過去と未来の交錯線上

私たちの町には、何十年も前に封鎖されたトンネルがあります。


そこにはお化けが出るだの、冥界に繋がっているなど、3人に聞けば違う噂が出るほど地元では有名なトンネルです。


私も何度か訪れたことがあり、確か一回目は小学校の遠足だったと思います。


他のみんなが「なんか聞こえた!」「誰か見えない?」などと話している中で、私はお昼ご飯の事しか考えていないのをよく覚えています(笑)


でも当時の私には、そのトンネルはとても怖いものとして植え付けられていました。


そんな私の印象が変わったのは、小学校卒業の直前くらいだったと思います。


その頃から生粋のインドア派だった私ですが、よく友達に病気になるからと言われて嫌々外で遊んでいました。


そんな彼女が、「あのトンネル」に近づくのは必然だったのでしょう。


私たちは4人で、暑さに負けずトンネルを目指して歩きました。


かなり道のりが長かったり、鳥の声に毎回驚いていましたが、なんとかたどり着くことが出来ました。


トンネルの中は、冷たい風が流れてきて自然のクーラーに感じたことは今でもハッキリ覚えています。


そうして私たちがトンネルの中で遊んでいると、私たちが来た方とは反対側から足音が聞こえてきました。


トン・トン・・トン


私たちがとっさに振り返ると、そこには帽子を深くかぶったお爺さんがいました。


「幽霊じゃないよね・・・?」


「はっは!残念ながらただのお爺さんだよ」


お爺さんは楽しそうに笑っていました。


「こんな所で何してるんですか?」


「まあ散歩かな・・ここは涼しいし、落ち着くんだよ」


「怖くないんですか?」


「怖い?とんでもない、まあ暗くて薄気味悪いから気持ちは分かるけど」


するとお爺さんは、私たちにある事を教えてくれました。


ここは明治時代から昭和中期まで使われていたトンネルであること。


日本の中でも歴史のあるトンネルであること。


そして、国道が近くに出来たことによって使われなくなってしまったこと。


「使われなくなったら怨念とかってあるんじゃないですか?」


「うーん・・逆だと思うけどね。昔はここら辺って凄く賑わってたらしいから、今は寂しいんじゃないのかな」


「寂しい?」


「うん、きっと昔みたいに人がいなくて寂しいだけと思うよ。だから噂になりたくて怖いことしてるんじゃないのかな」


そう言われた私は、子供ながらに納得してしまった。


「だから今を生きてる私たちには、このトンネルがあったことを忘れちゃいけない義務があるんだよ」


「ありがとうございました。勉強になりました」


「ははっ、暗くなる前に帰るんだよ」


お爺さんはそう言って歩いていってしまった。


「私たちも帰ろうか」


「そうだね」


そう言って帰る私たちに当たる冷たい風は、なんだか今までと違うようにも感じた。

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私の町の小さなトンネル 安里 新奈 @Wassy2003721

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