2-9
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襲撃は昼間同様突然だった。
私は怪我の痛みもあり、寝付けない状態だった。
それでも休みは取らないといけないと思い壁を背に座り込み、目を閉じていた。
眠りに入るか入らないかという状態だったと思う。
ガラスが割れる音がした後、すぐに銃の発砲音が響いた。
その音で兵士の全員が目を覚ました。
もちろん私もとっさに動き出し、姫様のいる角部屋へ向かう。
その間、兵士には警戒するよう指示を出した。
「姫様!ご無事ですか!?」
「ヨエン!私は大丈夫ですけど今の音は?」
姫様は部屋の中央で侍女3人に囲まれ守られている。
とりあえずは侍女も含め、無事を確認できた。
侍女3人のうち2人はおびえている表情を見せるも、しっかり姫様の前に立って守る姿勢を見せている。
残る1人、アマンダはというと鋭い視線を窓に向けていた。
メギキッズドッ
今度は部屋の外から、ガラスではない何かが割れるような音がした。
アマンダが振り返り、視線を私に向ける。
「ヨエン様!ここは私に任せてください!外をお願いします!」
「何を言っているのアマンダ!ヨエンはもう戦えないでしょう!」
「姫様、、、!」
私が答えるよりも先に姫様が口を出す。
アマンダは外を見ていたが、何かが見えたのだろう。
それに音の方も気になった。
「アマンダさん、ここはお任せします!」
「ヨエン!ダメ!」
「姫様、私は大丈夫です!すぐに戻ります!」
「すみません、ヨエン様。お願いします」
「ヨエン!」
身体を乗り出そうとする姫様をアマンダが制止する。
姫様の声を背に、廊下へ出た。
状況は急転していた。
見張りの兵士が敵と思われる者と対峙している。
廊下は狭いが、その状態でも敵は5人ほど見えている。
手前の1人は剣と盾を、次の1人は手斧を、その次の2人は手槍を手にしており、最後の1人は短めの剣を片手に握り、もう片方の手には銃を持っていた。
盾を持った敵がと味方の兵士が近距離でにらみ合う形になっていた。
「貴様ら、何者だ!姫様が狙いか!」
問いかけるが鋭い視線だけが飛んでくる。
敵はじりじりと距離を詰めるように動いている。
このままでは追いつめられる。
さっきの問いに返事はなかったが、しばらくして一番奥の男から声が上がった。
「おい!もしかして奥のあんた、こいつらの敵か!?」
よく見れば一番奥の男は槍を持った敵と相対している。
どうやら私たちの襲撃に巻き込まれたのだろう。
好都合かもしれないと思った。
追いつめられる形から挟み撃ちの形に変わる。
「そうだ!こいつらは私たちの敵だ!」
「そうかい!じゃあ俺が何をしても驚くなよ!」
男はそう言うと剣を持ったまま喉元に手を当てる。
しばらく何かつぶやいたかと思うとそれは起こった。
ガシャンガシャンガシャン
廊下には窓が張られている。
もちろんガラス張りで、それが突然割れ始めた。
次の瞬間、4人の敵が倒れ込む。
それぞれ頭のあたりから赤黒く染まっていた。
あまりに突然で瞬間的なことだったので体が固まる。
他の仲間も理解が追い付かないのか次の行動を取れないでいた。
先ほどの銃を持った男はというとそのまま目の前の部屋の中へ駈け込んでいった。
剣を振りかぶっているところを見ると、他にもまだ敵がいるのかもしれない。
そこで我に返った。
「3人は姫様の護衛、警戒に当たれ!」
「はっ」
兵士に言葉を発し、男の後を追いかけた。
部屋を覗くとそこには先ほどの男だけが立っていた。
部屋は返り血で濡れ、男自身も赤く染まっている。
本人の出血もいくらかあるのだろうが、一瞬で片が付いたのだろう。
だがそれ以外に人の姿は見えなかった。
「退けた、、、のか?」
見知らぬ男に声をかけた。
本来は助けてくれてありがとう。とか、迷惑をかけた。とかそういったのが正しいのだろうが、自然と戦いの結果を尋ねていた。
なんとなくだった。
「ん?あぁ、逃げられた。それよりさっきは助かったよ」
「いや、私たちの方こそ助けられた。感謝する」
逆に礼を言われたので、素直に返した。
変な話だが、それがとても心地よかった。
2度ほどしか言葉を交わしていないが、この男にはなにか感じるものがあった。
「それより大丈夫か?姫様とやらは?」
男に言われて、ハッとする。
敵がいなくなった以上、姫様を護るのが第一だ。
男に言葉も告げずに部屋を出た。
廊下に味方の兵士の姿はない。
姫様の部屋にいるのだろうと思った。
だが姫様の部屋にたどり着くと予想と違う光景が広がっていた。
アマンダが大きな剣を手にしている。
両刃で重さを利用して人を切るタイプのものだ。
「バスタードソード、、、」
一撃一撃が重いはずだ。
私の盾で受けられるだろうか。
アマンダの腕力はどのぐらいだ。
すぐに攻撃を仕掛けられるか。
この狭い部屋では手槍のほうが有利か。
味方のはずのアマンダを冷静に考察する。
何故ならその剣の持ち主と対峙する可能性があったからだ。
その剣先は護衛の兵士の胸をまっすぐに貫いていた。
剣に命を握られて ゆそうたい @yusoutai
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