姉には姉の猫がいた
また夢の話…。
じゃあないんだ、今回は違う。
両親が逝き、姉と師も逝き、世話になった長も逝き… 馴染みのフレンズ達が次々と世代交代していくのを見ながら俺は自分のやるべきことがなんなのかと一人思い悩んでいた頃のことだ。
ある日スタッフの協力要請でサバンナちほーに足を運んだ、見境なくケンカをふっかけるフレンズがいるとのこと。
さて、まずは“この子”が何者なのか知らなくてはならない。
「はいはいそこまでー?猫科かな?お名前は?」
「なんだぁテメェ!テメェもぶっ飛ばされてぇのか?!アァン?!」
なんだよ露骨にイライラしちゃって。
まったくライの時といい若いライオンの子はなんでこう血の気が多いのかねぇ?おじさん困っちゃう。
目の前にいるのがライオン系のフレンズののはわかった、何ライオンなのかまではわからないが通常よく知られるライオンのフレンズは姉さんが消えたあと既に現れている俺がライと呼んでいる子なので、恐らく種類はまた別だろう。
「なんだ腹でも減ってるのか?それともケンカがしたいだけか?下らんことに力を使うな、面白くもなんともないし疲れるだけだぞ?」
「るっせぇ!!!つえーやつ!もっとつえーやつぁいねぇのか!」
ダメだこりゃ、話を聞いてもらうには一回叩きのめさないと。
心苦しいけど仕方がない。
「なら俺が相手だ、そらこい?受け止めてやるぞ元気な子猫ちゃん?」
「なめやがってテメェ真っ白やろぉぉぉぉっ!!!!」
…
すんげー力、でも経験不足だな?軽く捻ってやりましたよ。←ドヤァ
で、その子を引っ捕らえて今は図書館に帰ってきたわけだ、なんのフレンズかわからない時は皆さん是非ジャパリ図書館へ。
なんてね?俺はお察しの通りシロと呼ばれて数十年、ホワイトライオンのハーフのユウキじいちゃんだ。でも見た目は若い、素敵だろ?
「じゃあ博士?この子は誰かな?」
「博士が答えましょう!この子はライオン!ですが… 現存するライオンではありませんね?恐らく絶滅種かと思われるのです」
お、いいね博士?だんだん長が板に付いてきたじゃないか?それでそれで?何ライオンなのかな?
「生意気なチビ!食っちまうぞおらぁ!」
「ひぃ!?大旦那!何故こんな危険な子を連れてきたのです!」
「こらやめないか… 博士も長らしく毅然として?負けちゃダメだ、それでこの子はなんて子なの?」
暴れるニャンコを簀巻きにして暴れられないようにはしているが、やれやれスゲー気迫だな?マジで博士くらいなら食われそうだ。
そんなことをほんの少し心配しながら博士の答え待つ、博士も獅子の睨みに恐怖し怯えながらも答えがまとまったのかやがて彼女の正体を口にした。
「オホン!恐らく… 絶滅種バーバリライオン!ではないかと!」
何この子がバーバリライオン?なるほど腕っぷしに自信があるわけだ…って
「違うね、絶対違う」
「んなっ!?」
バリーさんには会ったことがある、クロがずいぶん昔にゴコクで世話になったのでお礼参りに行ったのだ。
あの時手合わせを願われて丁重にお断りしたけど聞いてくれなくて結局手合わせして無様に敗北したんだけど… それ以来会う度に
まぁバリーさんのことは追々だ。
ところで答えに自信があったコノハちゃん、驚愕を露にしているもよう。
「そんなはずは!?」
「違うよ、だってバリーさんはゴコクで会ったことあるもの、落ち着きのある戦闘狂だった」←超偏見
「じゃあ誰なのですかー!?」
「それを聞きに来たんだよ、ほらがんばって?」
やはりまだまだ未熟だな博士?無理もない、長どころかフレンズ歴が幼いのだから。
しかしこの時そんな博士の悲痛な叫びを聞き付けたフクロウフレンズ、ワシミミズクの助手ことミミ先生が音もなく俺達の前に現れ可愛いコノハちゃんのために助け船をだす。
助手… クロの嫁である以上俺の義理の娘だが、なんだろうなこの自分より歳上が息子の嫁になった感は。
なんて、大して気にしちゃあないんだけど。
「博士?どうしました?」
「ミミ先生!この子はバーバリライオン!そうですよね?」
「フム…」
必要もないのに掛けているメガネをクイッと直すと、助手は件の簀巻き暴れんニャンコに目を向けた。
「なに見てんだゴラァッ!」
「まったく口の悪い… わかりました、惜しかったですね博士?この子はバーバリライオンではありません」
「え!?では一体!?」
「ケープライオンです、北のバーバリライオン南のケープライオンと言われているそうで、どちらも絶滅種で現存するどのライオンよりも大型です」
なにケープ… ケープライオンだって?
あー待てよ?なんだっけ?なんか思い出しそうだ。
ケープライオンか…。
確かバーバリライオンと対を成すと言っても過言ではない存在、強いわけだ。
そんなケープライオンのことなんて誰に聞いたんだっけ?えーっと… 参ったな歳だな。
結構大事なことだったはず、俺にとっても身近な…。
あぁそうだ。
姉さんに聞いたんだ。
あれは俺がまだ修行中で城に世話になっていたときのことだ。
…
「さぁこいっ!全力だぁーっ!」
「よろしくお願いしまぁぁぁッす!!!」
当時16才、野生解放を上手にコントロールできない俺は姉であるライオンのフレンズのところで世話になりつつ、師であるヘラジカのフレンズの元で修行を積んでいた。
二人とも… 今では代替わりが済み新しいフレンズとなった、立派な最後だった。
が、この時の師匠は若くそらもう元気に俺をビシバシしごくし、姉さんは変わらずおおらかで優しい素敵な姉さんだ、そして強い。
「甘い!もう一度だ!」
「べぎらぼぅ!?」←ダメージボイス
速攻の返り討ち、さてどうすれば無敵の師匠に勝てるのか?
「シロ?」
「ハシビロちゃん!」
「ヘラジカ様には武器があるでしょ?やっぱり素手と武器だとリーチも変わってくるし、これを使ってみたら?」
ハシビロちゃんからおもむろに槍を貸してもらった、例のガチ槍だ。
武器か… そのアドバイスいただき。
「よし!いくぞぉーッ!」
「あまぁーいッ!使い方がまるでなっていないぞ!」
「えんだぁぁぁあ!?」←ダメボその2
そう武器の扱いなんて知らない、俺はいつだって力任せさ?達人の槍と素人の槍ならそれは差があって然りだろう、もっと練習がいるな。
そんな時。
「「シロ!」」
「アルマジロちゃん!シロサイさん!」
「もっと守りを意識してみようよ!」
「確かにヘラジカ様は強いですわ!でも隙は誰にでもありますわ!」
守り… 防御… よし!防御に徹して隙を突くために期を伺うんだ!ハシビロちゃんみたいにな!がむしゃらはやめた!
「こいっ!」
「行くぞぉーっ!!!!」
「ぶぅっぱぁぁぁ!?」←ダメボその3
しまった、そもそも師匠の当たりが強すぎる。
更に俺は防御も下手だしそんなに打たれ強くない、それにしたってなんでこの人こんなに当たり前にガード貫通してくるんですかね?痛いです!?←裏声
その時。
「シロ!」「シロさん!」
「ヤマアラシちゃん!カメレオンちゃん!」
「こうなったら相手の力を利用するでござるよ!」
「それは私が針を使い身を守るように!つまりカウンター!ですぅ!」
「拙者の様に姿は消せないでござるが、素早いシロさんならなんとかなるかもしれないでござる!」
「おっし!カウンターか!」
今度は先程の反省を生かし防御や回避を巧みに使い、一定の距離を保ちつつ師匠の攻撃のタイミングを計る… そう期を伺うんだ、ハシビロちゃんみたいにな!。←ハシビ論者
「でぇぁぁぁあ!」
来たな!よし今ッ… 待って思ったより早かっt「エィヤァァァ!!!」
師匠の声と共に体を駆け巡る強烈な衝撃。
「ヒーリン…グッバイ…!?」←お大事に
安定の敗北。
皆のアドバイスも虚しく師匠は更にその上をいくスピード、パワー、テクニックを使い俺を叩きのめした。
なんかあなただんだん強くなってませんかね?そもそも勝てねえのに勝てっこねぇよ… でも、俺も同じようにだんだん自分の力を理解してきてるってそんな気がする、修行の成果としては上々だ。
遠退く意識の中皆の声が…。
「ねぇ?今日誰の番?」
「拙者昨日膝を貸したでござる」
「ヘラジカ様も手加減を覚えるべきですわ?長いと夕方まで寝てるから足が痺れますの」
「仕方ないですぅ、地面にほっとくのも可哀想だし今日は私が…」
おぉ… 今日はヤマアラシ膝枕かぁよろしくぅ~?なんて開き直ったことを思いながらその日の俺はやがて意識を手放していき、視界はゆっくりとブラックアウトしていった。
…
「ん…」
「おー?起きたかー?心配したんだぞ~?」
「あれ、姉さん…?」
ヤマアラシ膝枕の予定だったが、何故か俺は城に帰り姉ライオンの膝の上で目を覚ました、迎えに来てくれたのかもしれない。
「あ、ごめん姉さん… すぐ起きるから」
「もうちょい寝てれば~?急に立つと倒れるぞ~?」
「だってなんか起きてると恥ずかし… うわわ…」
立ち眩みだ、ヨロヨロとした後すぐに膝を着いてしまった。
姉はそんな俺を見かね華麗な手際で俺の頭を再度自分の膝へ置いた。
見上げると心配そうに俺の顔を覗き込む姉の顔が見える、こうしてるとスゲー安心するんだけど照れ臭いじゃん?だって僕男の子。
「ほら言わんこっちゃない?」
「ごめん…」
「いいって?安心してねーちゃんに任しときな?」
姉は優しかった。
姉弟と言っても、俺は赤の他人なのに。
そもそもライオンは他所から来たオスからプライドを守るんだ、パークの外から来た俺は姉さんにとって他所から来たオスではないのか?なぜ弟として受け入れてくれるんだろう?
なんでこんなに誰かに優しくできるのだろう?
「姉さん?」
「んー?」
「姉さんは… なぜ俺の姉さんになってくれたの?」
気になったからというのもあるし、なんだか不安になったのもある。
フレンズは皆優しいが、当時の俺にはいつかまた孤立してしまうのではないかという恐怖がどうしても消えなかったからだ。
特に修行中の今、様になってきたとは言え本当に己の獣の部分を完全に操りきれるのか… そんなのはやりきってみないとわからない。
俺はフレンズじゃない、半分だけだ… そもそも根本的に違うのかもしれないのでできる保証がない
だからつい不安が声に漏れてしまった。
いつか姉さんも俺が疎ましくなってどこかに行ってしまうのかな?って。
そんな俺に姉は言う。
「単に気に入ったのもあるし、なんとなくほっとけないってのもある、シロはいつも目が寂しそうだからね」
目を見てわかるくらい孤独に怯えているのか俺は… 向こうの暮らしが自分にとってストレスでしかなかったということだろう。
気に入ったと姉は言ってくれるが、それでは何かの拍子に距離を置きたくなることもあるのではないか?
なんて考えてる時点で俺は姉を信頼しきれていないということだ、とても失礼で自己嫌悪に陥る。
「ほらそれだよ?なんか悲しいことを考えてるだろ?心配すんなって!ねーちゃんが着いてる!ねーちゃんはいつまでもお前の味方だよ?」
「ありがとう…」
姉はいつもこうなのだ、不安にまみれた俺に「ねーちゃんが着いてる」「ねーちゃんに任せとけ?」って頼もしい言葉を掛けてくれる、姉さんに対してかなり気を許してる自分がいることもわかる。
ただ俺が質問したのは別の意図もある。
「ねぇ?でもその姉さんであることに拘るのは何故なの?」
「嫌か?」
「うんん、嬉しいよ?兄弟なんていなかったからなんかくすぐったい… そうじゃなくて、無理に姉にならなくても他にもさ?」
「お、嫁がいいのか?」
いや違う待ってなんか違うわそれ。
嫌とも言わないが複雑だ… 言葉を失ってしまった。
「そんな変な顔をするなよ~?じょーだんだよ?」
「あ、うん…」
だから照れ臭いんだよまったく。
じゃなくて?本題に戻ろう。
「他の、オーロックスさんとかアラビアオリックスさんとかツキノワさんと同じで、部下と大将でも変わんないんじゃない?家族は家族なんだから」
「そうだなぁ… もちろん三人も大事さ?その通り家族、プライドだと私も思ってるよ?ただシロは弟かなって、なんかねーちゃんになりたいって思ったんだよ?」
この時、何故だか姉は一瞬酷く寂しそうな顔をした。
姉の言う俺の不安な顔ってきっとああいう顔なんだろう、普段あんな顔をすることはないのでやけに記憶に残っている。
あぁそうだ… 確かこの時だ、この時俺は聞いたんだ。
「実はねーちゃんにも昔ねーちゃんがいてさ?」
「姉さんに… 姉さん?」
「そう、まだ私がフレンズになったばかりでサバンナにいた頃のことさ?あの頃は友達も少なくってねー?」
姉の姉、そう姉さんには姉さんがいたって話… そこにあの名前が出てきたんだ。
「どんなお姉さん?」
「ケープライオンって言ってね?私なんかよりうんと強くてカッコいい、本当の百獣の王だよ」
ケープライオン… 姉さんの。
姉さん。
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