楽園に猫一人②

 LBsystemType2エルビーシステムタイプツーとは。


 人間がセルリアンに対抗する際、通常兵器ではまるで相手にならない。

 故にセルリアンの対処はフレンズ任せになってしまうのだが、このType2はそれを解決するための装具である。


 グローブ状(改造後の通常は腕時計)の本体にはサンドスターを備蓄する為のタンクが内蔵している、そのサンドスターを動力にしてLBsystemType1、つまりフレンズ達がボスと呼んでいる青い個体のラッキービーストとリンクすることで、それらを装甲として身に纏うことができる。


 サンドスターを動力にすることでタダの人間もフレンズ達に遅れをとらない身体能力と力を発揮しセルリアンに対抗する。


 また、倒したセルリアンからサンドスターロウをタンクに入れておくことが可能であり、それを浄化して動力に変換することもできる。


 フレンズを守るために造られた人間がセルリアンに対抗するための装備、それがType2である。


 戦闘方法はなにも徒手空拳だけではない、装甲の一部を変形させて武器を使った戦闘ができる。


 ウェポンモード

 ビーストSlaMpNumスランプナム

 

 スラッシュモードの切断、ハンマーモードの打撃、そしてシューティングモードの銃撃による攻撃が出来る。


 シキが得意とするのはスラッシュモード、所謂ブレードを使った戦闘だ、恐らくハンマーは隙が大きく本人の好みではなく、シューティングはシキ自身の射撃の腕がアレな為と思われる。←真意不明


 さらに、対象のフレンズからサンドスターのサンプルを抽出しそのフレンズの能力を付加した装甲に変換させることができる機能が搭載されている。


 例えば彼の恋人、ジェンツーペンギンのフレンズのサンドスターをセットすれば水中を飛ぶように泳ぐことができる、水中戦でも遅れをとらないというわけだ。



 そしてそんなType2シリーズはシキだけの唯一無二の存在ではない。



 空から真っ直ぐ火山へ向かうシキに合流する二人がいた。


「やぁシキ君!緊急出動も楽じゃないね!」


「グレープさん!」


「ホントだよ~、セルリアンも空気読めないよね~?」


「レイバルさんも!」


 飛んでいるのはフレンズには大変珍しいオスの個体、フンボルトペンギンのグレープ。

 そして彼に掴まり宙ぶらりんになっているのがサーバルキャットのフレンズ、ただしみんなのよく知るキョウシュウのミンミィな彼女とは別個体… 学名より、Leptailurusレプタイルルス servalサーバルの、レイバルと名乗っている。

 

 彼ら二人が使うのはシキの使う旧型であるversion0をフレンズ向きに改良を加えたものである。


 通常version0はフレンズでは使えない、サンドスターを動力とするためフレンズの体内のサンドスターが奪われてしまうためだ。


 そんなサンドスターを動力として動く装置をフレンズでも装着出来るようにした物がversion1。


 専用のバイクであるマシンダイバーを装甲に変えて戦うのはグレープ、名付けて『走甲ライドダイバー』。

 シキが使う『セット グレープ』とは、グレープのライドダイバーのような能力を付加した装甲に変化させた状態である。



 そしてそのversion1に更に改良を重ねラッキービースト3型(type3)との結合、連動を可能にした物がversionNext、装着者はレイバル。


 安全性を重視したためか単純な火力では改良前より低下しているが、Leptaclawレプタクロウというレイバル専用のモードがあり、それはサーバルキャットであるレイバルが使用し易いように改良されたSlaMpNumである。


 Clawモード、Punchモード、Shootモードの三つを使い分け、近接攻撃をメインに戦うことができる。


ちなみにtype3の羽を使い飛ぶこともできる。



 LBsystemType2とは、そんな三人が操るこの世に3つしかない対セルリアン用の装備。


 戦う覚悟を持った三人だけが使うことを許されている戦いのための装備…。


 彼ら三人はそんなType2シリーズを駆使し、この楽園パークを守る為に立ち上がった、正にヒーローと言っていい存在である。





「見えてきた!数、多いですね?」


「最近多いよね?何が原因なのかな?フィルターは生きてるはずなんだけどなぁ」


「セーバル達も知らないって言ってた、きっと火山意外に原因があるんだよ!」


 そうして今に火口に到着するというそんな時だ、三人の目に飛び込んで来たのはまさにその目を疑う光景だった。





「ガァァァアアアアッッッ!!!!!」


 パッカーン!パッカーン!パッカーン!


 そこには既に戦う者がいた。


 獣の如く咆哮を挙げ、全身に輝きを纏い。


 時に切り裂き時に叩き込む、爪や拳を模した光体を操る“男”。


「なんだあれ!?誰!?」


「ひゃ~スッゴい迫力、生身であの戦闘力?しかも僕と同じオスのフレンズ?」


「見た感じ猫科?でもあんなの見たことがないよ?あの技は何!?野生解放ってレベルじゃないよ!?」


 白い髪をなびかせその頭には猫耳が揺れている、尻尾もスルリと伸びた彼の姿はそう。


 まるで物語に出てくる伝説の…。


「白炎の… 獅子?」


 シキがついこの間ジェーンに勧められて読んだ本、それにでてくる主人公そのものであった。









「このッ!」パッカーン!

「そろそろ…!」パッカーン!

「帰らせてくれよ!?」パッカーン!



 やっと減ってきたな?厄介なやつらがわんさか現れたもんだなしかし、俺だってもうアラサーなんだからこんな重労働ばっかりやってたら腰にくるよまったく… なんなんだよこいつら!いい加減にしろ!


 ウォォォォ…


 何か学習したのか数体纏まって襲いかかってきた、俺はサンドスターコントロールを駆使し後ろは右足から出したサンドスターの足で破壊、前方二体は左右の腕から拳を発現させ破壊、最後に体を空中で反転させ両の手を合わせると一気に叩き付けた。


 パパパパッカァーンッ!!!


「一丁あが… らないか、もぉ~勘弁してくれよ!」


 そうしてそろそろ息も上がりウンザリしてきた時だ、上空から舞い降りる三っつの影がそこに降り立った。



「装着!」




 そのうち一人が落下中に叫んだ、小柄の若い男性… なにやらガチャガチャと装備を身に付けている。


「SlaMpNum!スラッシュモード!」

 

 そんな掛け声ともに金属音をたてながら彼の装甲が変形していく、そしてその手には剣のような物が出現した。


「そぉらぁっ!」


 強固なセルリアンだったがその剣… いやブレードだ、あれはブレードだ!←どっちでもいい


 とにかくブレードでやつらの足や触手を切り裂き瞬く間に石を一刀両断した。


 パッカーン!


 弾け飛んだセルリアンの影から着地で隙のできた彼に向かいもう一体が迫り寄る。


「危ない!」


 俺は叫んだが、どうやら心配は無用だったらしい。


「任せて!さぁダイビングに付き合ってもらおうか!」


 その声と共に降りて来たのはまるでバイクのパーツを装甲として身に纏った青年だった。

 俺にはなんとなく分かる、彼は若く見えるがさっきの小柄な彼よりも戦い慣れている、無駄の無い一撃をセルリアンにお見舞いした。


「まずひとつ!」

『Let's! マッハダイバー!』パッカーン!

 

 お見事、あっさりと敵は倒され仲間の無事を確保した。


 そして、続けて現れたのは俺から見ても完全にサーバルちゃんみたいな子だった。


「速着!」


 彼女もまた掛け声と共に装甲を身に纏い始めた、ピンク色の可愛らしいフォルムと侮ることなかれ、ものすげー速さでセルリアンを翻弄し始めたのだ。


「私は速いですよ!」

『critical!Lag Claw!』

パッカーン!パッカーン!…パッカーン!


 速すぎてよくわからなかったけど一気に3体も倒したぞ、今も「うみゃうみゃ」言いながら残りを蹴散らしていく。


 男性陣も凄まじい勢いで敵を掃討していく、俺もせっかくなので加勢したいのは山々だが三人のチームワークが絶妙なので俺が無理に入るとバランスを崩してしまいそうだ。


「お二人!もう一息だ!そろそろ仕上げ行きますよぉー!!!」


「「了解!」」



 小柄な彼が叫ぶと残り二人も動きを合わせ始めた、なにやら息のあった動きで跳び上がると三者それぞれの方向に彗星の如くキックをセルリアンに浴びせた。



「「「蹴り崩せっ!!!」」」

『S_G_L ALL LINK!』


 パァァァッッッカァァァァァァンッッッ!!!!









「大丈夫ですか!?」


 掃討が終わるとこちらを気に掛けて駆け寄る少年からは先程の装甲がガシャガシャ言いながら剥がれていく、やがてそれは一ヶ所に集まり形になり…。


 ってあれラッキーか!?


 え?あれラッキーだったの!?いや、それよりも彼に受け答えだ。


「ありがとう、助かったよ?数が多くて参ってたんだ、君は… あ、特別調査隊の人かな?その装備は?」


 とても若いがきっとミライさんの部下なのだと俺は思った、そしてこの装備はサンドスターを使った新兵器で特撮大好きな父さん辺りが武器を持ち込めないパークでセルリアンに対抗するために作ったんだと思い込んでいた… 突っ込みどころはまだまだあるけどきっとそうに違いない。


「特別調査隊…?あ、“フレンズ探検隊”のことですか?いえ、実は俺は只の成り行きでこうなったんですよ?えーっと… シキです、普通にシキと呼んでください?」


 フレンズ探検隊?


「ん~… わかったシキ君、うん… 俺のことはシロと呼んで?ここではみんな俺をそう呼ぶから」


「シ、シロ…!?さん?やっぱりそうなのか… え?どうなってんだろ… 本物?本物!?」


 大層面食らってらっしゃるがそんなに驚くようなことだろうか?それとも安直な名前に驚いているんだろうか?


「シキ君どうしたのさ?」

「何か問題?」


 そう言って集まったのはいつの間にか装甲が外れた残りの二人だった。


 近くで見ると分かる、男性の彼はフレンズだ… 彼もハーフだろうか?フルルと要所が似ている、ペンギンのフレンズで間違いないだろう。


 もう片方はサーバルちゃん… によく似た猫科の子だ、よく知るサーバルちゃんよりも落ち着いて見えるし、おでこのエムゥ!が別の模様になっている、耳の生え方も少し違う、恐らくサーバルキャットの別個体で間違いないだろう。


「いやぁお兄さん強いんだね?あんなの普通一人であそこまで戦えないよ?僕じゃ無理!しかも圧倒的だったし… あ、僕はフンボルトペンギンのグレープです、よろしく?」


「本当に!あれは何?わかった!野生解放より先にあるスーパー野生解放でしょ!Type2も無しにあれだけ戦えるなんて普通じゃないもの!あ、申し遅れました!レプタイルルスサーバルのレイバルです!」←興奮


「二人ともありがとう、あれはそんな大層なものじゃないよ?ちょっとコツがいるけど… 俺のことはシロと呼んで?グレープさんに… レ、レイバルちゃん?よろしく」


 フム… レレレプて、レイ… れぷてぃあ… とにかくレイバルさんの名前は学名からとってていて、グレープさんはきっと紫のバンドを付けてるからだろう。


 三人はやはり戦闘要員?きっと他所のエリアから連れてきたんだろう、ってことはミライさんたちの船が来てるのか?


 だが待てよ?先に確認しなければならないことがあるな。


「そうだ、三人に聞きたいんだ!スザク様が石板に戻ってしまったんだよ!でもあの方がセルリアンにやられるはずがない!なにか知らないかな?なんでもいいんだ!」


「「「スザク様?」」」


 俺の質問に三人は疑問の表情を浮かべていた、スザク様ってなんぞや?って顔だ。


 そう、始めからそんな人は知らないという顔をしているんだ。


「そう、え?知ってるだろ?四神獣スザク様だよ、俺のせいで復活してフィルターがあるから動けなくってここで… あれ?」


 さっきはセルリアンを倒すのに必死だったからあまり気にならなかったけど、なにか違和感が… なんかおかしいなと思ったんだよな、これは俺が思っている状態よりもっと別の意味で厄介そうだぞ?


 レイバルさんはキョロキョロとする俺が気にかかったのだろう、なにやら申し訳なさそうに声を掛けてきた。


「あの?スザク様ってあのスザク様のこと?もしかして知り合いだったの?言いにくいんだけど、四神は何年も前に火山のサンドスターロウを塞ぐためにフィルターを張って石板に…」


 勿論知っている、色々おかしいな?彼女はまるで昔のスザク様を知ってるみたいなことを言うんだ、それよりも何よりおかしいと思ったのはこれだ。


「B2戦闘機… セルリアンになった時破壊したはずなのに」


「あれを知ってるのかい?えーっと、シロさん?」


「いや、ちょっとね?シロでいいよ」


「そぉ?じゃあ僕のこともグレープでいいよ!」


 タイムスリップ?いや、なんかこうもっとおかしなことになっている気がする、前にも似たようなことがあったよな?10年は前だったと思うけど、思い出せない…。


 頭が痛くなるな…。


 眉間にシワを寄せ考え込む俺を見たシキ君がなにやら不思議そうに顔を覗き込んできた、しかし目ぇ細いね君は?なんか見てて和むよ、戦う時のあのギャップはなんなんだよ?


「あの~?シロさんちょっと尋ねてもいいですかね?」


「え?うん、構わないよ?」


「あの、間違ってたらごめんなさい… シロさんって奥さんいます?あと子供も、しかも双子なんじゃないですか?」


「っ!?」


 えぇ!?シキくん!なんで知ってるの~!?俺ちゃんったら他のエリアにまで名を轟かせる有名人だったのかしら?それともミライさん達が前情報として話した?一体その細目には俺のどこまでが見えているんだい?


 待てよ?もしかして?私のファン?ムフ…。


 いや!


 いや!


 なんなんだよ!←混乱


「あぁよく知ってるね?その通りだよ」←平常心


「マジかよぉ… え、実在したの?ジェーンさん何て言うかな?」


 なんだかひたすら唖然としてる様子、なんだその、まるで偶然マイケル・ジャクソンと同じ満員電車に乗ってしまって揺れで何度もぶつかってきて「sorry」(ソプラノ)って何回も言われてるような顔はさ?


「シキ君?とりあえず園長に会わせる?」


「へぇあ!?そ、そうですね!うんうん!」


「何を慌てているの?シロのこと知ってるの?」


「知ってるって言うか伝説っていうか…」









 その後話していてわかったことなのだが、どうやらここは異世界だと言うことと。


 この世界には俺の嬉し恥ずかし波乱万丈な人生が本となってパークに蔓延してるらしいということだった。




「白炎の獅子か… いいなぁ…」←封印中

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