姫猫と謎のフレンズ③
「それでね?そのお姉ちゃんはろりーた?がなんとかって言われて連れていかれちゃったんだけど?マフラーのお姉ちゃんが助けに行ったからきっと今はまたどこかで謎を解いてるとこだよ!」
「面白いお姉ちゃんだね?ユキのママもお耳と尻尾が無いからなんだか似てる!でもろりーた?ろりーたって何かな?」
「わかんない、でも捕まっちゃうくらいだからきっと凄く大事なものだと思う!」
お宝かな~?なんて話ながら二人は城の外で遊び回っていた。
そう、遊び回っていた…。
クロユキ捜索は二人が飽きたという理由から放棄されてしまったのだ、まったく子供というのは時に残酷だ。
なぜならクロユキは探しても探しても見付からなかった、小一時間は手分けして探した二人だったが当然見つかるはずがない。
彼は“ここ”にはいないのだから。
それでも始めはここか?そこか?と隅々まで探した、でもあんまり見付からないのでギブアップ… 見ているのなら出てこいと叫んでみたがそれでも姿を見せない。
「前も消えちゃったと思ったら森の中で寝てたのをママが見付けてきてくれたから、多分見付けるのが遅くてまたどこかで寝てるんだね?ほっとこう!」←無慈悲
「クロともお友達になりたかったけど、それなら仕方ないね?ほっとく!」←無慈悲
前回の経験から、シラユキはクロユキが消えても自分の思い過ごしと感じるようになっていた… そしてそれは不幸中の幸いなのかもしれない。
自分が自分の存在しない世界に来てると知れば取り乱してしまうだろう、だがもっと言えば話が難しくて理解できない。
シラユキは歳並の子供… クロユキのように難しく考えることもないが、その分大事なことに気付くとこともできないことだってあるだろう。
それが本人にとって悲しいことなのか、あるいは幸せなことなのか。
それはわからない。
…
「ねぇちびレオ?そういえばどうして平原はこんなに散らかってるの?ユキが明るい時に来たときはこんなの無かったのに…」
シラユキは常々疑問だった平原に突如として現れた物体達について尋ねた。
ちびレオはここに住んでいるのだし、きっと何か知ってるだろうと思ったのだ。
「それは“けもマ”をしてるからだよ」
「けもマ?けもマ… なにそれ?」
「“けものマーケット”だよ?あれ?知らないの?じゃあ教えてあげるね!」
けものマーケット。
へいげんちほーの二大勢力であるライオンとヘラジカが協力して開催したイベント、それがけものマーケット、略してけもマ。
舗装された道を挟みどこからともなく集まったフレンズ達がブルーシートなんぞ敷き、思い思いの物をそこに広げ寄ってらっしゃい見てらっしゃいとお客を集める、そこに市場のようなものを作り上げる… 故にけもマ。
「お店屋さんってこと?」
「そんな感じ、ジャパリマンと物を交換するんだよ?ユキがさっき遊んでたクマちゃんもけもマの売り物だから、ちゃんと返さないとメッ!て言われちゃうからね?」
「そうだったの~!?どうしよう!」
「大丈夫!内緒にしとくからこっそり戻しちゃおう!」
何でも前に盗みを働いたフレンズはサバカバンとかいう罪人を閉じ込める建物に入れられてその尊い人生に幕を閉じたとか…。←閉じてない
そしてこの時、シラユキはちびレオの言葉に安堵するばかりで重要なことをスルーしていた。
普段自分の知ってる平原ではマーケットなんて開いていないということを。
…
それから二人はその体力が尽きるまで延々と遊び続けた。
シラユキは人間の体だが、限りなくホワイトライオンに近いのでその身体能力は通常の7才のそれを遥かに凌ぐ、故にライオンのフレンズとして十分に能力を発揮できるちびレオのアクロバティックな動きにも対応できた。
普段は二人とも子供だからと遊んでくれる大人からは手心を加えられる、要は気を使われるのだ、クロユキにしてもかなり子供にしてはいい動きをするがそれまで… シラユキにはさすがに敵わないので頭を使い小賢しい方法で彼女を翻弄する。
だが今夜、二人は考えるなんてまどろっこしい真似はせずただ全力で遊び笑いあった。
時に走り、時に跳び、飛び付き転がり抱き合ったりした。
なんの気兼ねも無く、気が済むまで遊び尽くした二人。
既に空はだんだんと青白くなり朝が近いことを教えている。
「もうすぐ朝陽が昇るんだね?ユキこんな時間まで起きてたことないから夜が終わるとこ初めて見たよ…」
「わたしも、ユキと遊ぶのに夢中でこんなに時間が経ってると思わなかった…」
「朝陽が昇るとこ見てみたいけど… なんだか眠くなってきちゃった…」
「わたしも…」
遊び疲れてウトウトし始めた二人は、タイヤ広場の大きなタイヤの下で身を寄せ合い横になった。
あくびなどしながら、コクリ…コクリ… と頭を揺らしていると、眠りに落ちる寸前にチビレオが言ったのだ。
「ねぇユキ?」
「ぅん…?」
「またあそぼーね…?」
「ん… 約束… またあそぼ… zzz」
「「Zzz…」」
…
…レオ …びレオ!
と心地好い微睡みに包まれながら聞こえる声に彼女は耳を貸す。
「ちびレオ!ほら起きて!」
「ん… ママ?」
「ダメじゃないかこんなところで寝たらぁ!風邪ひいちゃうぞ?ママ起きた時ちびレオがいなくて凄く心配したんだぞ~?」
ちびレオは一人外のタイヤ広場で眠っていた、大きなタイヤの下だった。
目を覚ましたとき娘がいないことに気付き焦って外へ飛び出したライオンはすぐにちびレオを発見、こうして母親らしく注意してるところなのである。
「あれ?ママ?ねぇママ?」
「どーした?熱でもでたかい?」
「ん~ん、隣にもう一人いたでしょ?わたしと同じくらいの子」
「えぇ?お前一人だったよ?」
そんなはずは無い、確かにあの子とくっついて横になっていたはず…。
ちびレオはなんとなく残るぬくもりに確信を持ち母に尋ねた。
「絶対いたよ!」
「どんな子なの?」
「えっと… 髪が雪みたい白くてね?あとは… あれ?お話しして仲良くなって… おばあちゃんにも会ってそれから… あれ?なんでいないの!?」
「要領を得ないなぁ…」
夢でも見てたのだろう、とライオンはちびレオの言葉を軽く流していた。
しかしちびレオとてこの気持ちを夢で片付けるのは納得がいかない、何か痕跡は無いのかと周囲を見回した。
「夢じゃないもん!えっと… あ!ほら!クマちゃん!見て?その子はあそこにあるクマちゃんで遊んでた!… あ、でもけもマの事は知らなかったの!悪気はないから許してあげてママ!」
ゴロンと平原に横たわる大きなクマのぬいぐるみ… それを指差してありのまま伝えたのだが、ライオンは眉間にシワを寄せ答えた。
「ちびレオ!ダメじゃないかけもマの商品で勝手に遊んだら!」
「違うもん!わたしじゃないもん!お友達がいたのぉ…!」
「ちびレオ~?ママ怒らないから正直に話してごらん?欲しいなら買ってあげるから?」
「なんで信じてくれないのぉ?ふぇぇ… 絶対いたんだもん… いっぱい遊んでまた遊ぼうって約束したんだもん… うぇぇ…」
この時、ライオンの親バカに火が着いた。
ぎゅっと娘を抱き締めると優しく慈愛に溢れた声を出し彼女は言ったのだ。
「よしよーし… ママが悪かったねぇ?ちゃんとちびレオのこと信じるよ?」
「ほんと?グスン」
「当たり前だろう?そうだ!一緒にその子を探そう!全員!しゅうごぉぉぉう!!!」
ライオンの雄叫びに早朝叩き起こされた部下の面々はわたわたとその場に整列した。
「来たか!いいかよく聞け!フレンズ探しだ!」
「誰っすか?」
「眠みぃ…」
「zzz」
「ちびレオの友達!同じくらい小さな髪の白い子だ!探しだしてうちで面倒見るぞ!」
「「えぇ…」」
拗らせたライオンは夫婦らしくヘラジカにもこの事を話して全力で捜索に入ったが、その子が見付かることは決して無かった。
大きなクマちゃんはちびレオの手に渡ったがそのクマちゃんには確かにくっついていたそうだ。
白く美しい長い髪の毛が一本だけ…。
…
どこかのちほー… そこを歩く二人のフレンズがいた。
「キリンさん?アミメキリンさん?聞きましたかあの噂?」
「噂?何かしら?」
黒くサラサラとした長い髪の子は青いツナギを着ている、彼女は隣にいるアミメキリンのフレンズに聞いた。
「ちびレオちゃんに同じくらい小さなお友達ができたそうですよ?みんなで誰だ誰だって探してるらしいです」
「事件の匂いがするわね…」
自慢のマフラーをなびかせながら、アミメキリンはその鋭い目をキラりと光らせた。←鋭くない
「なんでも白い女の子らしくて、それでミナミコアリクイさんがヘラジカさんに誘拐されたけど勘違いだったとかなんとか」
「フレンズ探しも名探偵の仕事よ!と言いたいところだけど、私達も私達で今は暇ではないわ… 一応それらしい子を見かけたら話しかけてみることにしましょう?」
「それ大丈夫なんですか?僕また捕まらないですよね?」
最近は話しかけただけで防犯ブザーを掻き鳴らす事案もよくあると聞く、しかも彼女は半分誤解とは言え前科がいくつもあるのでまた長に捕まる可能性も然り。
ぶっちゃけくっそビビっていた。
そんな彼女の言葉に、キリンは一歩前に出るとくるりと振り返りビシッと強く指を差す、そして大きく自信のある口調で答えた。
「大丈夫よ!正しい行いならみんな必ずわかってくれる!仮にまた捕まるようなことがあっても… この名探偵アミメキリンが必ずあなたの無罪を証明してみせるわ!そうでしょ!“つなぎ!”」
つなぎと言われた少女も、彼女のそんな頼もしい言葉にニコッと小さく笑うと答えた。
「はい!そんなことよりお腹が空きませんか!おやつにしましょう!」
「お昼を食べたばかりじゃないの!ジャパリマンだっていつでも手に入る訳じゃないんだから我慢しなさい!」
「なんで我慢する必要なんかあるんですか!」
「今説明したでしょ!?」
アミメキリンと謎のヒト。
二人の奇妙な旅もまた、続く…。
…
「あぁ~あのときでしょ?ユキが外で寝てておばちゃんめっちゃ焦ってたよ」
「そうそう… ちびレオ!ちびレオちゃんだよ!なんであのときは忘れてたのかなぁ?また会いたいなぁ?まさか従姉妹がいるなんて思わなかったし」
どうやらシラユキも似たような体験をしたようだ、とクロユキは興味深くそれを聞いていた。
共通の特徴としては当時記憶が曖昧だったことだ、ただ… シラユキの場合どうもクロユキとはパターンが違う。
彼には結構な時間のズレ、つまりタイムスリップが起きていたが、シラユキは話を聞く限りほぼ自分たちと同じ時間軸の場所に行っていたらしい。
何か法則でもあるのか、それとも理由もなくランダムで起きた不思議体験なのか…。
そもそもこういう体験をしたのは自分たちだけなのか?父はどうだ?母はどうだ?
クロユキは昔からの癖なのか、わからないことが起きるととことん頭を悩ませた。
気になるなぁ… 例えばほら、その話ユキばあちゃんは知らないのかな?あとはあれ、ナリユキじいちゃんに聞いたら例のお姉さんのこと知ってたりして?
この体験僕らだけに限らないと思うんだよなぁ~?パパなんて絶対体験してそうなんだけどなぁ~?
クロユキのそんな考え… それはそれとして、シラユキは突然立ち上がると長の二人に尋ねた。
「ねぇ博士達!けもマってわかる?」
「けもマ?あぁ… けものマーケットですか?」
「懐かしいですね?」
「え!?知ってるの!?」
驚いたことに二人はけもマを知ってると言うのだ、シラユキが突っ込んで尋ねると二人からはこんな答えが返ってきた。
「まだシロが来る前のことでした」
「道具を使うことを広めようと平原にガラクタを持ちよりフレンズ達を集めてマーケットと言うものを開いたのです」
「博士達主催なんだ?」
「そうです、利便性の高さに合わせジャパリマンで交換… というものだったのですが」
「我々意外に道具をまともに使える者などほとんどいるはずもなく、訳のわからない物の為に大事なジャパリマンを渡せるかとあまり流行らなかったのでそれっきりなのです」
たまに好奇心で交換していくフレンズもいたのだが、結局使い方を理解できずその辺にポイっと捨てていく者や返品を願う者で溢れてしまい大失敗に終わったそうだ。
「しかし、どうやってそれを知ったのです?」
「お前達が生まれる前のことですよ?しかもグダグダのやつが一度きり」
「まぁそれはいいじゃん!私に任せて!けもマやろうよ!私大学で経済学の講義受けたことあるから自信あるよ!」
「ほぅ?面白いですね?」
「そこまで言うのなら試してみるのです」
シラユキは自信満々に目を輝かせながらけもマを成功させると言い切った、なにやら秘策があるらしい。
長の二人もその気になりおよそ数十年ぶりのけもマ復活を目論んだ。
そしてそんな三人を見てクロユキは密かに思っていた…。
絶対失敗するな…。
「ねぇミミ?」
「なんです?」
「なんだか最近顔色が優れないよね?食も細いし、はしゃぐのはいいけど絶対無理しないでよ?」
「わかっています、でもそんなに私のことが心配なら… クロも着いてきてくれたら良いのではないですか?」
ゆっくりと空から降りて、そっと僕の頬に手を触れた妻は少し小悪魔の笑顔で僕にそう言った。
だから僕は…。
「ん―… 気が向いたらね?」チュッ
って言葉の後に不意に唇を奪った。
「ま、まったく人前でこんな!卑怯なのです!///」
「仕返ししたいなら、早く帰っておいで?」
「し、知りません!覚えとくのですよ!」
ほら、可愛いだろ?僕の妻は?
…
その後、シラユキが考案した謎のシステム“けも割引”とかいうやつのせいで、結局けもマは経済崩壊を起こし失敗に終わった。
経済学の講義とはなんだったのか。
クロスオーバー
猫シリーズ(気分屋)×アミメキリンと謎のヒト(bentmen)
コラボ先↓
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