第17話 憎悪と魔王3

お久しぶりです。

知り合いから神器と霊器の区別がつかないと意見を貰ったので、

神器→○○神剣

霊器→○○魔剣または○○聖剣

と表記を変更しようと思います。

これより前にでた武器の表記も順次変更します。

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「『ッ…無駄、だ』」

「何?」

代行者は、血を零しながらも不敵に笑う。

「『我の魂と、この宿魔者ホルダーの魂は既に融合し、1つとなった。貴様の滅びの力ならば我を滅する事も引き剥がす事すら造作も無いだろう。だが、1つとなった魂をまた2つに割れば、こやつは死ぬぞ』」

魂は1つの肉体に1つしか存在出来ない。これは世界があらゆる命に課した『理』。

天使は意志を持ったエネルギーの集合体、つまり肉体を持たない魂だけの存在なので、他にも魔法を使ったのかもしれないが、この理には縛られないのだろう。

シオンは〈心視の魔眼〉で代行者の魂を見る。

確かに、リリアの魂と天使の魂は混ざり合い、融合して1つの魂として存在している。これを無理に引き剥がせば、リリアの肉体はその負荷に耐えられず、死亡する。

「『分かったであろう、世界の異物。もはやどう足掻こうとぼぉぉッ!!?』」

「やれやれ、そこまで弱っていても減らず口だけは立派なものだ」

シオンは代行者へ容赦なく蹴りを入れ、代行者は幾本も木を薙ぎ倒してようやく止まる。

そして、左手に持つ〈依代の剣〉に魔力を込めて剣をした。

シオンの魔力が不格好な剣を巡り、複雑な魔力回路を満たす。

これで第一条件はクリア。

依代の剣が漆黒の、竜の顎を象った魔力を纏う。

「お前達の思惑は知らぬが、あの時代は地獄だった。誰もが誰かを憎み、呪い、殺し、奪う終わりのない地獄だ」

「『それがどうしたっ!神は世界そのものだっ。世界がそう在る事を望っーがはあっ!?』」

シオンは思い切り身を起こそうとする代行者を踏みつけ、依代の剣を突きつける。

「生ある者の祈りを踏みにじり、誇りを嘲笑い、願いを無視し、ただ絶望と憎しみを押し付ける、そんなモノが世界だと言うのならばーー」

第二条件、剣を中心に半径2m以内に対象を収める。ークリア。

「何が立ち塞がろうと、俺が滅ぼす」

「『ッ…おのれっ』」

代行者は即座にシオンの足を払い除けるが、もう遅い。

「複合魔法〈禍竜暴喰ドラゴン・バイト〉」

依代の剣から、漆黒の魔力で出来た竜が飛び出し、代行者を喰らう。

だが、喰らっているのはリリアに混じった天使の魂のみ。

「『わ、我を、代行者である我を喰らうだとっ!?正気か貴様!!』」

「ふむ、動揺して現実が見えていないようだな。よく見るといい」

そう聞いて天使は、初めて己の魂に目をやって、戦慄する。

「『ッ…馬鹿、な…あ…!?』」

やれやれ、ようやく気づいたか。

「その竜が喰らったのは、お前ではない。だ」

依代の剣は、シオンの滅びの魂、虚滅剣の破壊の魔力を融合し、昇華させた魔法を封じてある。

複合魔法〈禍竜暴喰ドラゴン・バイト〉。

あらゆる因果を喰らい、破壊するシオンが扱う秘奥の1つだ。

唯一の難点と言えば、力が強すぎる余り、世界でシオンにしか制御出来ない位か。

そして、とうとう代行者とリリアの魂が

「『くうっ!』」

代行者は即座に再融合を果たそうとするがー

「〈消去魔法イレイズ〉」

それよりも先に、シオンの魔法の刃が、代行者が魂の融合に使用した魔法を消し去る。

『ぐああっ!?』

リリアの体から強大な魔力が溢れ出し、それは、魔力の翼を生やし立体を持った影のような風体の天使になる。

「お前には、色々と喋ってもらうぞ。宿魔者ホルダーの魂と融合する魔法に、代行者という役。どれも昔からある物ではあるまい」

『ーー話すと、思っているのか?』

「まあ、タダでは話さないだろうな。だが、が対価ならばどうだ?」

そう言ってシオンが手に取ったのは、地面に落ちていた怨絶神剣アルガビオンだ。

『きっ貴様ッ!!』

「《動くな》」

強制魔法オーダー〉が一瞬で、代行者ーーいや、天使の動きを拘束する。

「お前がこちらの質問に素直に答えるのならば、この神器は渡してやろう。何でも、憎悪神の復活に必要不可欠なのだろう?」

『…な、何が、知りたい…』

「幾つかあるが、そうだな。俺に成り代わり、世界を混乱させている者の正体は誰だ?」

恐らくだが、偽のシオンとセリカは別人と見て間違いない。もしセリカがシオンの名を騙り、世を乱したのならば、スカサハが黙っていない筈。

セリカはシオンに次ぐ高位の魔導師だが、スカサハには劣る。

『ふん、決まっている…。貴様を演じる事のできる者などーーッ』

憎悪の天使は、言葉を途切れさせる。

突如、遥か上空からかなり強い魔力を放つ魔法斬撃が降り注いだ。

「ッ!!」

シオンは一瞬で〈禍竜暴喰ドラゴン・バイト〉を展開して迎え撃つが、あろう事か、その斬撃と〈禍竜暴喰ドラゴン・バイト〉はお互いを喰いあって

「ちっーー」

『ぐああっ!?お、オノレェェッ!!』

即座に、憎悪の天使へ魔力障壁を展開するが、魔法斬撃はそれすらも紙のようにあっさりと切り裂き、憎悪の天使を消滅させる。

だが、まだ斬撃の雨は止まない。

「〈神殺紅雷槍ロンギヌス〉」

シオンは冷静に斬撃の穴を見極め、絶妙なタイミングで渾身の魔法を放つ。

神殺紅雷槍ロンギヌス〉は魔法斬撃を爆破しながらも上昇し、襲撃者が居るであろう場所を射抜く。

だがーー、

「掠ったか…」

斬撃の雨は止んだが、肝心の襲撃者は無傷に等しい。

全身を覆う黒いフード付きローブに骸骨を模した銀の仮面。その仮面が魔力を隠しているのか、全く魔力が感じられない。

右手には、黒い刃に紅いラインの入った魔剣。

同じ霊器クラスの中でもトップクラスであろう魔力を放っている。

「断神魔剣ペルペドロ…。お前が、国王か?」

しかし、襲撃者は一言も喋らずにもう一振、魔剣を取り出す。

今度は、やや刃渡りのある細剣だ。

穿空魔剣アロウズ。その名の通り、空間を穿ち、距離を超えて攻撃出来る上にーー、

ブンッ、と襲撃者が消えた。アロウズの能力を出力を上げて発動し、自身を転移させたのだ。

残ったのは、2振りの魔剣が残した魔力のみ。

謎は深まるだけであった。







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弱くてニューゲーム! 魔王は弱くなっても規格外だった。 @be-yama

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