サエコの審判

 受賞式。

 四位の子にポイントのカードを。

 それ以上の順位の子には、レアパーツと入賞ポイントのカードがパックされた小さな包みを渡して行く。


 この頃にはギャラリーも減っていて、周りには入賞者の関係者がちらほらいる程度になっていた。


「惜しかったね。ユウスケ君」


 私は、ユウスケにだけ、こっそり声を掛けた。


「やっぱ強かったよ。ディープフォレスト。最後のセッションも、最初にすれ違った時よけたつもりだったけど多分ロック進んでたんだ。強いよ、あのセリカって子」

「そっか」

「お姉さん名前なんてーの?」

「私? 水谷サエコ」

「ふーん。バイト?」

「そ。今日が初日」

「に、しては頑張ったね。お疲れ様」

「ありがとう。お疲れ様」


 会場の片付けをしながら、私は自分に問い掛け続けていた。

 決勝戦のファイナルセッション。

 私の、あのジャッジは正しかっただろうか。

 ディープフォレストのセリカは、今日優勝しなくても他で幾らでも優勝しているし、景品も何個も持っている。

 対するユウスケに取って今日のファイナルは千載一遇のチャンスだったはずだ。

 ユウスケを勝たせないまでも、私があそこでドロー判定をしていれば、ユウスケは優勝できていたかもしれない。

 そうするべきだったんじゃないのか?

 私は、間違ったんじゃないだろうか?


「お姉さーん! サエコー!」


 心ここにあらずでノソノソと片付けを続ける私に呼び掛ける声があった。


 赤いキャップに赤いシャツ。

 ユウスケだ。


「良かったよ! サエコの審判! じゃあねー!」


 私は咄嗟に、目頭が熱くなるのを我慢した。

 お前、いい奴だなユウスケ。これに懲りずに、またチャレンジしてくれよな……。


「あ……ありがとう! また来てねー!」


 両親だろう二人とこちらに手を振りながら去って行くユウスケに、私はぼそりと呟いた。


「なんで呼び捨てなんだよ……こんにゃろ」



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サエコの審判 木船田ヒロマル @hiromaru712

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