インディゴブルーの隕石

「……思ってたよりも寝覚めが良いのが腹立たしいな。」


けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ました僕は、すぐに、昨夜見た夢について考え始めた。


彼女はいったい何者なのだろう。

もちろん、思考したところで分かるはずもない。


「宇宙人?」


そんなことが現実に起こりうるはずがない。

馬鹿な自分自身を嘲笑した。


そうして、一度考えることを止め、寝癖だらけの髪の毛を鏡の前で整え、パジャマから制服に着替える。


リビングへ向かい、冷凍庫にストックしてあったピザトーストをトースターにセットした。


「…普段は夢見が良いはずなのに、昨夜のあれはなんだったんだ?」


実は僕は、自慢ではないが生まれてこの方悪夢を見たことがない。


小学生の頃から毎日欠かさず夢日記を書いているが、どれを見返しても怖い夢を見た、とは書いていないのだ。


それより幼い頃の記憶はすっぽりと抜けているため、生憎だが、確認する術はない。


ピザトーストを一気に口の中へ押し込み、甘すぎるカフェオレで流し込み、学校へと向かった。


* * *


「今日は転校生が来てています。皆さん、静かにして下さいね。」


季節はもう既に夏の気配を感じている。

そんな時期に転校生とは珍しい。


そう思っているのは僕以外のクラスメイトも同じようで、担任の指示には従わず、大変盛り上がっている。


女?男?

美少女?美少年?

不細工かも、などの心無い言葉も聞こえてきたが、知らんぷりをする。


他人の容姿を批判できるような見た目じゃないだろう、という言葉は心の奥底に閉まっておくことにする。


「では転校生、入って来てください。」


担任は諦め、転校生に声をかけた。

教室の扉がゆっくりと開き、転校生が入ってきた。


その瞬間、男子生徒からは歓喜の声があがり、女子生徒は静かになる。


僕はさも興味が無さそうに、頬杖をついたまま前方を見た。


「自己紹介をお願いします。」


「…はい。」


開いた口が塞がらないとは、この事だ。

スラスラと、綺麗な字で"火星 環''と書いた彼女は、夢の中で会った人物そのものだったのだ。


「火星 環(ひぼし たまき)と言います。」


凛とした声で慣れたように自己紹介をし、一礼する。


「火星さんは、ご両親のお仕事の都合で最近まで海外に暮らしていて、日本のことはあまり詳しくないようなので、ぜひ仲良くしてあげて下さいね。」


「よろしく、お願いします。」


彼女が少し微笑むと、男子生徒から歓声があがった。


僕はこの瞬間、あくまで初対面を貫こうと心による決めた。










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僕の血は火星のあか @killjk

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