青い便箋

バカ娘へ

　拝啓

　暑さも峠を越えたようで、朝夕の風に秋の気配を感じるようになりましたが、お元気でお過ごしのことと存じます。

　一日で10度近く一気に下がったみたいだから今日はすごく涼しいね。風邪ひくなよー？

　……っていうかお元気でお過ごしのことと思いますって、今日の朝も会ったよねぇ(笑)

　とりあえず、受験お疲れさま！　どうだった？

　さっさと受かって私を安心させてくれ。春より私の方が緊張してる気がするわ(笑)

　で、あの手紙から一年か。速いねぇ。あのときは「彼氏が出来ない～」だなんて言ってたけど、今は立派に将来の旦那掴んでるじゃんか。あざといわー。

　あんたの彼氏、健太。健太のお父さんはあんたのお父さんの大学の時の親友だから、私にとっては変な感じよー！　まさかあんたが高松君の息子とねぇ……って笑っちゃった。何の繋がりよ。すごいよ本当に。

　私にとっては(ご近所さんなのもあって)、健太も自分の息子のような感覚だから息子と娘が付き合ってる感じがして……どうもよろしくない感じがしてしまう(笑)

　まぁでも昔っから健太には「春を嫁にください」って言われてたからなぁ……やっとか！　って感じよ。

　――あ、これ言うなって言われてたやつだったww健太ゴメンwww

　さーて、娘イジリはこのくらいにしておこうかな。

　本当にあんたはバカね、なんも親不孝だなんて思ってないわよ。むしろ四年制の理数系行きますとか言われてたら私はぶっとばしてたもん、払えねぇよ！　って。専門選んでくれた時点で大分親孝行。こちらこそありがとう。女でシングルってやっぱ限界があるしね……いざとなったらお父さんの貯金使おうと思ってはいたけどね。

　仕事忙しくて小さい頃からあんまり構ってやれなくてほんとにごめんね。合格したら女二人旅にでも出ようか。金沢とか京都とか行きたいなー。春はどこ行きたい？　あんまり遠いと払えん。海外とか言ったらぶっとばす。

　春に言われて気づいたけど、ネイルもうこんなに剥げてたのね……この前塗ったのに。また今度綺麗に塗り直します！

　はやくネイリストになって綺麗に塗ってくださいよ、お嬢さん。ばばあはもう老眼でよく見えないんだよ(笑)

　あ、言い忘れてた。合格したからって気は抜かないこと。高校卒業出来なくなるぞー。お父さん、一時期ヤバかったんだから。出席日数若干足りてないわ(これはボランティアとかしてどうにか免除してもらったらしい)、推薦でさっさと決まったからって気抜いて勉強しなくてテストの点数ほとんど赤点だわで……ちゃんと勉強はしよう、そこそこでいいから。大変だったらしいよ(笑)

　さーて、私は春がちゃんと夢叶えられるように、もう一頑張りしてくるよ。幸い、この仕事は嫌いじゃないからね。男に負けないもんね！　一部の人からは「鬼の浅井さん」とか呼ばれてるらしいし。頑張んなきゃねー。

　私も頑張るから、春も頑張れ。きっとお父さんも桜の木かあの海で応援してると思うよ。

　じゃあ、夢に向かってまっすぐに。応援してます。

　　　　　　　　　　　　　　　　敬具

　　　　　　自慢出来るバカ娘を持つ母より