御守りのミサンガ

東郷 アリス

第1話 御守りのミサンガ

突然だが、私のおばあちゃんは十二年ほど前に亡くなった。

すでに歳は結構いっていたし、いつ死んでもおかしくないとも医者に言われていた。

その時のお母さんの泣き顔は今でも覚えている。


その時、まだ小学二年生だった私にはそのことがよくわからず、ただただぼうっとしているだけだった。

今ではその時のことを思うと、ああ、その時におばあちゃんが死んだんだ。

そう実感できる。


私のおばあちゃんは、物を作るのがとても好きだ。

ただ適当に作っているのではなく、街などにあるものよりも鮮明にできている。

そう、おばあちゃんは物を作るのが好きだし、とても得意なのだ。


そんなおばあちゃんに小さい頃、私は毎日のように一緒に遊んで過ごしていた。


寝る時に雷が鳴り響いていて怖くて泣き出してしまった時には、クマのぬいぐるみを渡してくれた。


私がワンピースを着たいといってお父さんとお母さんにだだこねた時は、おばあちゃんがワンピースを作ってくれた。


そんなおばあちゃんが私は大好きだった。


だから、おばあちゃんがいなくなった家に帰ると、何か心にぽっかりと穴が空いたような感覚に陥ってしまう時もあった。


そんなおばあちゃんが行きていた頃のある日のこと。


おばあちゃんが糸のようなものを使って何かを作っていた。


まだ小学生になる前の話だったから、その時はただの好奇心で動いていたような。


「おばあちゃん、なにつくってるの?」


「おばあちゃんはねぇ、ミサンガを作っているんだよ」


「ミサンガ?」


「ミサンガっていうのは、手首や足首につけるものなんだよ」


「ふぅーん」


「それでねぇ、そのミサンガをつける前に願いごとを込める。それで、願いごとが叶うとミサンガが切れるんだよ」


「へーそんなんだ!私もつけてみたい!」


「おや?真由美もつけてみたいのかい?」


「うん!」


そしておばあちゃんは、私にミサンガをつけてくれた。


「おばあちゃん、ありがと!」


「どういたしまして」


その時のおばあちゃんは、笑顔を返してくれた。




そしておばあちゃんが亡くなってから四年が経ち、小学生六年生の修学旅行中の時のこと。


その時私たちは、クラスの子たちとバスの中で喋っていたり、トランプをしたりして暇を潰していた。


その時だった。


合流地点の方から、トラックが猛スピードで走って来ていた。


「危ない!!」


バス運転手が声を張り上げで叫ぶ。


「みんな、伏せろ!!」


先生の合図にみんなが一斉に伏せる。


その瞬間。


ドシャンッ!!


私たちが乗っていたバスとトラックがぶつかった。




「みんな無事か!?」


先生は大きな声で言いながら、状況を確認する。

その先生の頭からは、血が出ていた。


結果的には、バスに乗っていた生徒と先生、運転手は無事だった。

運転手さんが重傷の怪我を負ったが、命に別状はなかった。



しばらくして警察や救急車が来ると私たちは、警察の案内に従ってバスから降りる。


バスを降りる人たちの中には、恐かったのだろう、泣いているかもいた。


私も安心したのだろう。

腰の力が抜けてしまい、その場に座り込む。


その時。


私の足首につけていたミサンガが切れた。

何かの効力が無くなったかのように。


そして私は、おばあちゃんの言葉を思い出す。


「ミサンガをつけてる前に願いごとを込める。それで願いごとが叶うとミサンガが切れるんだよ」


その言葉を思い出して私は気づいた。

おばあちゃんが、私のことを守ってくれたんだって。


それに気づいた私は、その場で座り込んで、大粒の涙を零した。


「おばあちゃん、ありがとう」


と言葉にしながら。





そして大学生になった今でも、おばあちゃんにとても感謝している。


私は、おばあちゃんのお墓に喋りかける。


「おばあちゃん、ありがとっ、また来るね」


そして私は、おばあちゃんのお墓を後にした。


そのとき、おばあちゃんが笑っているような気がした。

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