読書をする人なら、いつまでも自分の記憶に残り続けている一文というものがあると思います。それはたとえば、美しい文章の中の美しい一節かもしれません。あるいは、抜き出してみれば何でもない言葉のようであっても不思議と心の中に置かれ続けている、そんな一文かもしれません。なんにせよ、魅力ある一文が書かれた小説とはよいものです。
僕は本作品のある一文に心惹かれました。
本作品の文章はどこか芸術的です。
独特なリズムや、一秒前には思ってもみなかった意外なギャグや言い回しは、味わえば味わうほどに滋味を増してゆきます。思い切って余分なものを削いだ剥き出しの文章。最初は慣れないかもしれませんが、慣れ始めた瞬間に爆発的な面白さが来ます。
そう、面白いのです。文章が好きすぎて文章の話が先になってしまいましたが、物語自体がすごく面白い。意外性があるのは葬式をギャグにするというコンセプトだけではありません。センスの光るセリフ回し。予測不可能なシチュエーションギャグ。たぶん1秒に2回くらいのペースで楽しさがくると思います。
こんな弔電ある?
こんな焼香ある??
これ出棺????????
なんなんだよこれと突っ込みながら読んでいくと、思わぬ展開が待っていました。葬式をパーティーにするという非常識。だけど、根っこにあったのは。そんなお話です。
そして僕が惹かれた一文とは、ラストシーンのとあるセリフです。
意志の込められた登場人物の姿は、時にシンプルな文章でも情景を想像させ、脳裏に焼き付けるんですね。アガリちゃんが大好きです。
来てほしくなくても明日をやろう。
強さをもらえたような気がしました。