あやかしのいるまに

夜虎音

第1話

ぽつりぽつりと雨降っている。

今ならばあの思い出せない記憶が蘇るかもしれない。

とても大切で暖かな記憶。なぜ忘れてしまったのだろうか、心に空いた穴が10年だっても埋まらないのだ。

「春雨の 花の枝より流れこば なほこそ濡れめ香もやうつると」

今日教科書で見た俳句を思い出す。

「雨にうたれればこの桜の匂い私につくだろうか。」


ここは茜山あかねざんの麓にある茜山神社あかねやまじんじゃだ。150段くらいある階段の上にある。この町の英雄が祀られてるらしい。

「あーぁ、何も思い出せん!!!」

私は鬼崎きざき 紅音あかね。この神社は小さい頃から私の好きな場所。

ごーーーん。

「もう6時?雨が降ってると時間の流れがわかんなくなる。はぁ、もう帰ろ。」

反対側にあるお寺の鐘が鳴る。

私が動くと首についてるチョーカーの鈴がなる。

りんりんと可愛い音がする。

「~~~~~~~~~~~~、」

近くで誰かの声がした。気がした。

「なんだ誰もいないやん。」

赤色の傘をさして、染めたことのない黒髪をなびかせながら家に帰る。

「今日も思い出せなかった。」





「あかね様、申し訳ございません。」というつぶやきは雨音に溶けていった。



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あやかしのいるまに 夜虎音 @000yokone

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