第1編
グランダル王国時、トルテ二世の治世の頃じゃった。
彼の王は、根っからの女好きでの。
そりゃもうようけ妾を取ったもんじゃ。
しかし、変な趣味でもあったのか、お世継ぎに恵まれんかったが、ある時、第2王妃から女の子が、翌年第1王妃から男の子が御生れになった。
…しかし、生まれて間もない王女殿下が攫われ行方不明になってしまいおった。
その時は、国民皆悲しんだもんだ。
そして、15、6年ほど経ち、王子は両陛下の愛をめいいっぱいに受けながら、優しくかしこく成長しておった。ちょうど、今上陛下のようにの。だが、王子が当時の貴族の学院に入って少しし、王と私の子どもである、と王宮に言ってきた女がおった。
貴族が庶子を認知しない問題があったため、数代前の王から、父親をはっきりさせる魔道具があった。それを使うとどうもその女の子供の父親は国王陛下らしかった。
国はもう混乱したわな。王宮では、その女を捕らえるべきと、側室の一人にすれば良いと思う意見が割れておった。とりあえず、その子供を学院に入れることで話が決まった。
その子供は、女子だったのだが、今まで平民として育ったために問題をおこしまくった。
当時の有力諸侯の子息を籠絡し、他の令嬢子息に喧嘩を売りまくっとった。あの様子だけを見れば、確かに陛下の子供と言われれば納得してしまっていた。
ある時、王宮にやってきた女が第2王妃付きの侍女として王宮を出入りしていたことがわかった。ついでに、王が抱いたのは違う侍女でその女とは会ったことがないことも。
直ぐに女は、王女誘拐の犯人として扱われ、学院の王女も、籠絡しすぎて国を乱す危険性があったため、燈湖の塔に王族としての強要が身につくまで幽閉されることとなった。
まぁ、直ぐに自殺したんじゃがの!
これが、今の時代に伝わるクシュの乱じゃな。」
話終えたハイエルフの長老が一同を見ると、皆形容しがたい表情をしていた。
一人が手を挙げて聞いた。
「今では悪女とされるクシュも学院でもっと大人しければどうなったと思います?」
「そんなもん決まっとる。王家の血なんて争いの元にしかならんし、碌な教育も受けず男にしか興味ない王女なんて…な。何かしら理由がつけて殺してたじゃろ。ただ、本当に自分から身を投げたらしいの。」
その言葉に一同は言葉を失い、場が静まってしまった。
魔族の長老が、
「おい爺い!めでたい日だってのに、場を盛り下げてどうすんだ!俺が場を暖めてやるから、ハッピーエンドな話を用意しときな!
…次は俺が、魔族の話をしてやるよ!
昔、昔な…。」
武鏡 相生隆也 @carlot
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