子供の頃の夢/1

 「は?」

 ――珍しく、今日は来客者が来たから。

 今日は暑い。

 入道雲が遠くの空に浮いている。朝のニュースで言っていた。夕方まではとても暑いが、その後はだんだん涼しくなってからまあまあな雨が降ると。

 洗濯物も干したし、買い物にも行った。

 そういえば、台風が発生したらしい。この辺りにも来るらしいし、停電しないと良いんだけれどなあ。

 あ、そういえば、スキレットが欲しいな。今度キャンプ用品店でも行こうか。

 そんなことをボオっとしながら考えていたら、ピンポーン、と玄関のチャイムがひび割れたように鳴った。もしかしたら電池が少ないのかもしれない。これも買わないと。

 最近なにかインターネットで注文したかな、と考えながら、はいはーい、と返事をしてドアに向かっていたら足元にある大量の紐やら段ボールやらに絡まって躓いた。幸いにも食器などの陶器は無かったから良かった。

 点検かなんかで家に入るかもしれないので、軽く(さっきぶちまけた物も含んで)端に置いてからドアを開けた――。

 そしたらどうだ、崇めるだか言い出してニコニコしている頭の可怪しそうな奴と、ふわふわ浮いている無表情な奴が立っているんだぜ?怖くないか?

 だからつい、変な声が出てしまった。

 急いで口を抑えるも、頭の可怪しそうな方は目を輝かせて近づいてきた。

 「へえ!へえええ!君か、君かあ!なるほどねえ!」

 感情が激しすぎるだろ、こいつ。

 ていうか初対面(だと思う)なのに……わけがわからん。

 「いやあ、そんな怪訝な顔をするなよ少年。っつってもま、同年代かな?」

 ちろ、と女の方が『無表情』を見た。

 確かに、男の方は少し小さいけれど同年代なのかもしれない。

 「驚かせちゃった?いやあごめんごめん。怪しいもんじゃないさ」

「はあ……」

「僕はねえ、……うん、君の従姉弟なんだよ!よろしくねぇ」

 さっと右手を出して、握手を促す女の方はまだ従姉かもしれない、と思えるのに、未だ無表情の方は人間味の無いからか従弟ではなさそうだ。

 というか従姉弟だったら、一回ぐらいは会っているのかもしれない。オレが覚えてないだけで、小さな年齢のときとかに。

 ……あれ?今、女、僕って言った?男なのか、コイツ?いやでも、うん?

 「ほら、蓮ー。怖がられちゃってるぞ、君」

 難しい表情をしているのを見て、どう捉えたのかオレが『無表情』を不気味がっているように見えたらしい。

「そうか」

「ほら、もう少し笑って笑ってー」

「……」

「それで――なんのよーなんだ?従姉弟とやらが」

 睨まれた、気がした。

 否、睨まれた気がしたわけではない。あれは完全に――睨んでいた。

 「……おかしいな、連絡したはずだよ?今日、君の家に行くってさ」

 女の表情はまたすぐに笑顔に戻った。

 「とりあえず、悪いけど中に入れてくれるかな。暑くって暑くってさ」

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チルドレンヒーロー。 空のうに。 @kaseyadu

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