第17話 なんだか不穏な雰囲気です!!

 そして日にちはあっという間に得点上位者発表の日。結局ここまで山田君となかなか話す機会が得られず、このままでは山田君と勝負になってしまいます。

私、勝負は苦手です。勝ち負けがはっきり出てしまうからです。

 

山田君に嫌われたらどうしよう……。


 頭の中で今日一日どう過ごすのか考えるだけで40分の登校時間もあっという間に過ぎ去り、気が付けば学校の校門についてしまいました。結局解決方法は思いつかずどんよりとした気分になってしまいました。


 「おはよ!結衣。」


 「えっ!咲良ちゃん。どうしてもう学校に?」


 咲良ちゃんは普段8時15分を過ぎてから教室につくのに……。

 今はまだ8時前。まだまだ登校するような時間じゃないはずです。


 「なんでって。今日は山田と得点公開しあう日でしょ。結衣の勇姿と山田の泣きっ面を拝みに来たのよ。」

 

 見逃さないように早めに来て待機してたわ!と腰に手を当てて勝ち誇った顔を浮かべる咲良ちゃん。なんで咲良ちゃんがそんな顔をしているんでしょうか。


 「でもまだ山田君来てないし一回教室に入ろう?」


 「それもそうね。昼休みにでも山田連れ出してぎったんばったんにしてやりましょ!」


 「もう!あんまり山田君を悪く言わないでー。」


 「ごめんって。結衣にちょっかいかけるからさ。ついカッとなっちゃうんだよ。ほんとごめん。」


 胸の前で両手を合わせて謝る咲良ちゃんを見たらこれ以上何も言えなくなってしまいます。


 校門の前で話し込んでいた私たちが学校に入ろうとしたその時遠くから私の耳にかすかな、だけど確かに男の笑い声が聞こえてきます。


 「ナッハッハッハ!ナッハッハッハ!ナァッーハッハッハ!」


 結構距離はありますけどあの声、あの姿、山田君です!

 私が山田君を見つけたように山田君も私を見つけてくれたみたいです。

 私たちお互いに目線があっています。私の目からは山田君がこっちを見ているのがはっきりと確認できます。


 「うわ…。誰あれ。顔は見えないけどあんな奇声あげてるやつとは絶対関わりあいたくないわぁ……。」


 隣で咲良ちゃんが何か小声でつぶやいていましたが、残念ながら私には聞こえませんでした。


 山田君は全力で私たちの元に走ってきて、荒い息をつきながらも無事私たち目の前にたどり着き、深く一息ついて息を整えると私に指をさして一言告げるのでした。


 「同胞よ。今日こそ石碑に刻まれた記録とくてんけっかで勝負だ!」


 「うわ!山田じゃん……。」


 「私、山田さんとは戦いたくないです……。」


 自分の意見を小声ではありますが山田君に伝えたのですが、山田君は全く取り合ってくれません。それどころか、


 「何を言っている。怖気ついてしまったか?しかし心配することはない。我は最強がくねんトップ!我に勝てるものなどこの聖域クラスには存在しないからな!ワッハッハッハ!」


 ここまで自信満々な山田君を見ていると私の不安なんて杞憂なものじゃないかと思えてきました。


 山田君もしかしたら全部100点とかだったんじゃ。だったらこの自信にもうなずけるし。この考察が当たっていたら100点の数学だけ引き分けであとは全部負け。もちろん総合順位も負けているだろうし……。だったら別に勝負してもいいかも。

 

 友達と勝負して負けるならいいかな。


 せっかく同じ超能力者の友達ができたのに。勝負に勝ったことで嫌われたりしたら嫌だもん。


 「はい。わかりました。そこまで言うなら安心です!勝負しましょう!」


 私の返答を聞いて山田君は安心したようで、しきりにうなずいて囁くような声量で良かった。と言っていました。


 「よし、結衣もやる気になったことだし。山田!結衣の心を惑わすあんたには公開処刑の刑よ!」


 「そもそも貴様は誰だ。我と同胞ともだちの真剣勝負に水を差すな。」


 「私は結衣の友達の咲良ですぅ!結衣が良いって言ってるから今まで言わないでおいたけど正直結衣に慣れ慣れしくするのやめてほしいんですけどぉー!」


 「それこそ我と同胞ともだちの間柄に口出しする権利はないだろ。貴様こそ何の力もないのに同胞ともだちに近づくな。同胞ともだちは我と同じ選ばれし者だ。」


 「はぁ⁉何それ。日本語話してくれない?宇宙語で話されても私たち日本人には通じないんですけど!私と結衣のような日本人にはね!」


 「なんだと⁉そもそもな――」


 「はわわ……!!!!」


 二人の息つく暇もない舌戦にどうしたらいいかわからずただ立ち尽くすばかりです。

 どんどんとヒートアップしていく二人に流石に止めなければと決意し勇気を出して二人の間に身を乗り出します。二人とも横から急に飛び出してきた私にびっくりしているようで会話が止まりました。

 今がチャンスです!


 「ふ、ふたりともやめて!け、ケンカしないで!」


 「「す、すまん(ご、ごめん)。」」


 「で、できるだけ、仲良く、し、しよう?」


 「ちっ、同胞ともだちがそこまでいうなら仕方ない。仲良くしてやろう。」


 「結衣が言うなら仕方ないわ。結衣の顔に免じて山田の失礼な言動は許してあげる。結衣の!顔に!免じて!仕方なくね。」


 どうやらひとまず言い合いは収まったようです。


 「じゃ、じゃぁ、3人で掲示板見に行きましょう!」


 「あぁ、同胞ともだちとの勝負楽しみだ。」


 「えぇ、楽しみだわ、山田の泣き顔が見れると思うとね。」


 お互い渋々な感じがにじみ出てはいますが、けんかするよりはマシだと判断して3人で学校に登校しました。

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超能力者の私と中二病さん ねこまんま @neko_manma014

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