大魔法使いになったら、魔王の婿になりました。
芹澤©️
出会ったのは少女でした。
私はその言葉を聞いた時、正直げっ、としか思い付かなかった。
魔法を極めて早120年。
世界最高の大魔法使いだ、賢者だと褒め称えられ、最早年齢の枠組みからも外れたこの私が、ほんの余暇にと10年滞在していた国の長、国王から召集を受け城へ赴いた。今度は何を教えて欲しいと乞われるかと思えば、
「魔王との見合いが決まりましたぞ、いや、目出度いです。魔王と大魔法使いである貴方様が婚姻を結べば、両種族は更なる繁栄が約束されたも同然ですじゃ」
などと寝言をほざく。私は目がそれはそれは溢れんばかりに見開いていた事だろう。このひよっこの小僧は何の冗談を言っているのか、長年書物を読んで知識を詰めた頭でも理解出来なかったのだ。
「貴殿は何を言っておるのか分かって口にしているのか? 私は、何処の国にも所属しておらぬ筈だが、さて、これは何の余興か? 」
そう言えば、小僧は困った様に眉を八の字に下げると、
「申し訳ございませぬ。所属しておらぬから、としか言いようがありませぬ。魔王及び魔族が住まう地は、瘴気が濃い。我ら只の人間は足を踏み入れる事は叶いませぬ。その点、大魔法使いである貴方様ならば、大丈夫でございましょう? 」
「大丈夫だからと言って、平気だとは限らぬとは思わないのか? 」
確かに瘴気はどうとでもなる。寧ろ、瘴気などと言うが、本質は魔力の濃縮されたもの、魔族が住まう地はエネルギーの溜まり場だ。魔力を多く消費する魔法を得意とする私には何ら問題も無い。かと言って、はいそうですかとは言う筈も無いが。
「そもそも、この話は何方から出たものだ? 魔王自ら要請した訳ではあるまい」
「それが、他ならぬ魔王自らの要望ですのじゃ。何やら、自分に見合う魔力の使い手を伴侶に選びたいという事で、他の種族にも連絡は届いているかと思いますが……」
おいおい、勘弁してくれ。何で今更婿探しをしているんだ。魔王には娘が居たのか?
「……断ったら? 」
「我ら人族は魔王に滅ぼされるかと」
…いきなり人の肩に、大量の命を乗せないで欲しい。確かに、人族と魔族では体内魔力含有量が桁違いだ。私一人抜きん出ているからと言って、潰されるのは明白だ。
「選ばれなかった場合は? 」
「その時は種族に何も弊害はございません。只、不名誉が付き纏うとは思いまするが……」
「ふん、魔王に選ばれなかった不名誉か? その様なもの、私には関係ない。そもそも、召集されるのを甘んじて受けていたのも、同胞だという私の情けゆえ。……その気になれば、国など関係ないぞ」
私の睨みも臆する事なく、国王は真っ直ぐ見据えている。ふむ、ひよっこの癖に中々肝が座っている様だ。
「なれば、選ばれないで頂きたく存じます。貴方様が今の地位を捨て、人を捨て、第二の魔王の道を突き進むと言うならば、我が国も他の国も、そこまでの事」
滅ぼされるのを是とする返答に、私は随分と久しぶりに可笑しくなって、口元が緩んでしまった。ならば、仕方ない。
「貴殿の漢気に感服した。あい分かった。その魔王の要望、私が人族代表として行くとしよう」
「有難き幸せ。何卒、宜しくお願い致します」
国王のお礼もそこそこに、私は旅支度の為に仮住まいの自宅へ飛んだ。
魔族が住まう地はこの世界の最果て。人族や他の種族が住む大陸とは大きな違いがある。それは魔族の住む大陸の大地に大きな裂け目が有り、そこから瘴気が吹き出しているのだ。魔法を使いこなすエルフや竜人族ならば耐えられるかも知れないが、濃い魔力に晒されると、急激な魔力酔いを起こし、体内の魔力保有限度を超えれば最悪死んでしまう。
故に、魔力に長けている魔族のみ住める地という事だ。勿論、大地の裂け目から離れれば離れる程影響は少ないから、絶対に踏み込めない地という訳でも無い。
私は、その踏み込めない地という訳でも無い地へ、足を踏み入れていた。魔王城は漆黒の石造りで威圧感が有り、城と言うよりは堅牢な要塞に見えた。国王の手紙を門番へ見せると、直ぐに騎士の様な出で立ちの…顔が獅子に、頭に山羊の角を生やした大男が出迎えてくれ、そのまま通路を案内された。獣人とは違う様だが、とにかく魔族のその多種多様な姿は私の興味を引いた。
髭が蛸の足の様にうねうねとした動きを見せる男だとか、顔は人族なのに、足が鹿の脚の侍女だとか、やはり森に篭らずに旅などして、己の目で見聞きすれば良かったと悔やみさえした。書物などでは、この不可思議な光景はお目にかかれない。
果たして、魔王はどんな異形の姿なのか?
私は、選ばれる筈も無いと高を括っていた。それは、自分の姿を変え、魔力含有量を隠蔽したから。こんな姿の私を、婿探しをしている魔王はまず選ばないだろう。
「此方でございます」
獅子頭から、地の底から響く様な低い野太い声でそう告げられ、大きな観音開きの扉の前で立ち止まる。その扉が、ゆっくりと勿体振るかの様に開くと……。
玉座に、少女が居た。
は?
私は、国王の前でした時よりも目を見開いていたと思う。
そのまま獅子頭の騎士にふらふらと付いて行き……その少女の顔をまじまじと見つめた。何処をどう取っても、10〜12歳ぐらいの人族の少女の頭に、下向きに巻いた羊の様な立派な角がある、それだけだ。髪は漆黒の夜を纏ったかの様に真っ黒で、瞳は宝石を嵌め込んだかの様な紫色に輝き、肌は生きているのかと疑いたくなる程白い。しかし、漏れ出る魔力量の何とえげつない事か。彼女が魔王で間違い無いのだろう。
「
私はぼうっと少女に見惚れていたらしい。その少女の声で現実に引き戻された。何と、鈴の音の如く軽やかな声なのか、と。
「……は、私めが人族の魔法使い、ルートベルト・エシュラクと申します。この度は、陛下に拝謁出来た事、恐悦至極でございます」
そう言って、私が跪こうとすると、少女は手で制した。
「よいよい、済まなかったな、人の子よ。無理難題を申し付けた。妾はまだ結婚する気は無いのじゃ。其方も、まだ幼いのに可哀想な事よな。お互い子供同士、気楽にすると良い。にしても、まだその様な幼き年頃で、人族代表になれるとは、人族も油断ならぬな、今後が楽しみじゃ」
そう言ってころころ笑う顔は魔王なのかと疑いたくなる程可愛らしい。言葉使いはやや違和感はあるものの、どうやら結婚には否定的である様で私はほっとした。
「何を仰いますか、陛下。どうやらその者と年頃が似合いではありませぬか。他の者達は随分と年寄りでしたから、この方に決めてもよろしいかと私は存じます」
何処からか声が聞こえ、私は声の方へ視線を向けた。少女の横に、黒い霧が出ている。
「しかしな、ヨキ……」
ヨキと呼ばれた何かは、もやもやとした黒い霧から形を作り、青白い顔のやけに長身の男に変容した。黒い髪は長く垂れ、目は開いているのかすら分からない程に細い。
「一応、皆代表を出してくれただけでも良いでは無いか。此方へ反意を示す者が居ないと分かっただけで暫くは良しとする」
「いいえ、我ら魔族は魔王様に敬愛の念を抱き、身を粉にしてお使いしても、恐れ多くも共に在ろうとは思えぬのです。敬意が強すぎてしまう。その点、多種族で有れば共に立つ事も出来ます。そこな、人族代表はほんの子供。共に居れば、雄として見れる日が来るやも知れません」
おいおい、勝手な事を言ってくれる。私は、自分の工作が失敗した事に、酷く動揺していた。婿を探すならば、それなりの年頃だろうと。ならば、子供の姿になってしまえば範囲外だろうと。私の変化の魔法で作った年頃は……12歳。残念ながら丁度、魔王と頃合いの良い年頃に見えている事だろう。
他は年寄りだと言っていたから、他の者達は敢えて年寄りに変化したのかも知れない。だとすれば、私の作戦は飛んだ思い違いな上、凡ミスも良い所だ。
私とて結婚するつもりは微塵も無いのだ。老いから解き放たれた私は、
「他は其々の国へ返します。宜しいか、魔王様」
「ううむ……。好きにせい。まあ、今後妾がどうするのであれ、この様な子供を直ぐ追い出しては心が痛む。戻っても国に居場所があるかも分からぬし、其方も暫くはこの城に滞在すると良い。慣れぬ事もあるじゃろうが、遠慮なく申し付けるとよいぞ」
「は。多大なご配慮、感謝致します」
「うむ」
魔王は返事をするや否や、ぴょんと玉座から飛び降りると、私の前に駆け寄った。
「では、妾が部屋へ案内してやろう。光栄に思うがよい」
「は? 」
呆気に取られる私の手を、魔王はさらっと取ると、扉へぐいぐいと引っ張って行く。
「其方……ほう、成る程な」
私は変化がバレたのかと内心ドギマギしていた。しかし、それ以上何か言われる事は無かった。魔王は美しい少女だとは思う。しかし、私は普通に大人の女性が好みであるし、どうしたら解放されるのやら……。解放されたら、私は流浪の旅に出て二度と人族の国とは関わらずにしよう。
「あー、どうしたものか」
私は今、魔王城から抜け出し、城下町の酒場で頭を抱えていた。あの後、歓迎の宴が開かれ、魔王始め魔族はとても好意的で且つ理知的であった。中には好戦的で腕試しがしたいなど言う武人も居たが、それも裏表も無い純真さゆえ。人族の顔色を伺う様な面倒臭さが無かった。
しかし、姿を子供にしたが故に、酒は飲めない、挨拶に来る者全てが頭を撫でる、宴も直ぐにお開き。人族では大魔法使いだとそやされた私が、なんたる屈辱だろうか。
しかも、いつこの国から出られるかも分からない魔王の客である私は、どれだけの年数この屈辱に耐えて生活して行かなければならないのだろう?
自分で蒔いた種とはいえ、私は自分の決断を恨んだ。いや、話しを持って来たあのひよっこが……いやいや、そうすれば元はと言えば全ての元凶はあの魔王なのだ。いや、あの少女とて乗り気では無い様だったのだから、国に関する決定を恨んだ所で、仕方ない事だ。
そう、上手くやって直ぐにでも国を出る手配をすれば良い。今、私はまんまと魔王城から抜け出し、ここに居るのだから簡単な話しではないか。
「お兄さん、何か悩み事? 」
そう言ってからから笑うのは、羊頭の酒場の給仕だ。私は今、本来の姿である魔法を極めた29の年頃の姿に戻っていた。その頃から、私の見た目が変わる事は無い。髪は白っぽい灰色、瞳は灰がかった緑色。人族の中でも珍しい色だったが、此方でも珍しい配色らしく、皆がじろじろと見て来る。……いや、人族が珍しいのかも知れない。頭に何か角でも生やせば良かった。
しかし、賑やかな酒場である。国が豊かな証拠だろう。
子供の姿の変化は茶色の髪に茶色の瞳で、よもや私が人族から選ばれた魔法使いだと、この場にいる誰もが思うまい。
しかし、目の前のこの煮込み料理。これは何肉か分からないが上手い。一緒に煮込まれた根菜もとろとろだ。……こんな不毛そうな地で、食料はどうしているのだろう?そうだ、この国を隅々まで観察してから去るのでも遅くは無いかも知れない。何せ、人族でこの地に留まる者は一握り。そして私はその内の一人なのだから。
「ここ、良いか?人族の若者よ」
「ああ、勝手に座ってく……れ……。っ?! 」
ちびちび林檎酒を飲んでそんな考えに耽っていると、目の前に相席を頼まれ、その人物を見て……私は盛大に噎せた。
「あ、魔王様〜! 駄目ですよ、ヨキ様に怒られますよ〜!! 」
「何だ、魔王様婿を取ったとか聞いたが、何でうろうろしてなさる?」
「今日の宴は酒が飲めなんだ、良いではないか、妾が飲めば売り上げになろう? 」
そう言って私の前に腰掛けた人物…艶やかな漆黒の黒髪に、宝石の紫色の瞳に真っ白な肌。巻いた立派な角。この膨大な魔力……魔王、な筈だ。しかし、その姿は…
「どうしたのじゃ、人族の若者。妾がそんなに珍しいかや? 」
小首を傾げる姿は、妙齢の大人の女性の姿ではないか! 面影そのままに、たわわな胸元を惜し気も無く見せつけた、体のラインに沿った挑戦的な黒いドレス。魔王も姿を偽っていたという事か?! しかし、一体何故……。本当に結婚するつもりが無いのか?? だから私のように姿を変えて……?
ただ呆然と魔王の筈の彼女を見ていた私は、はっと我に返った。
「い、いえ……随分と美しい女性だと、驚きまして……」
何を言っているのだ、私は。だが、これだけ美しい美女を生まれてこの方お目にかかった事が無いのも事実……。どうしたって、私の頬は蒸気してしまう。いや、良い歳をして何を動揺しているのだ。そう、これは気を抜いていた所を出くわして狼狽えただけで……。
「ほう、流石は人族じゃの。口説く言葉選びも堂にいっておる。どれ、妾にも林檎酒を。後、適当に何か持って来ておくれ」
そう言って、魔王は私の目の前にすっかりと居座ってしまった。何故だ? まさか、正体がバレたのか?
「魔王様、こっちで飲みましょうよー! 」
「魔王様、今夜は飲み比べしないんですかい?
「あ、そうだった、南のビロンで大地割れましたよ!ヨキ様派遣して下さい! 」
「分かった分かった、またの機会にの。今妾は人族と話してみたいのじゃ。割れた大地はヨキに言っておく」
戦々恐々している私に構いもせず、店内の殆どの者と話し終えた後、魔王は此方に向き直るとにやりと笑った。それの何と蠱惑的な事か。何十年か振りに胸がどきりと高鳴って、私は平静を保つ事に気力を振り絞った。
「さて、この地に人族の旅人は珍しい。しかも、その姿、人族の中でも珍しいじゃろう? どんな数奇な人生を歩んで来たのか、妾に語ってくれぬか? 長い生を生き、少々退屈なのじゃ」
「私のような下賎な者が、魔王様に語るなどお耳汚しでございます」
「妾が良いと言えば全て良しとなる。早よう語れ。意気地が無いのう」
私はその言葉にカチンと来て、一気に林檎酒を飲み干した。話しを聞きたいのなら、良いだろう。どうやら正体もバレてはいない様だし、久しぶりに目にする美女のお願い(概ね命令だが)に応えないでは男が廃る。
「分かりました。なれば、まずは我が師である魔法使いに拾われ、魔法を会得するまでの話しをば」
「そう来なくてはの! 」
魔王は宝石の瞳を更にキラキラと輝かせて、私の話しをせっつくのだった。
ーーーーーー
朝、目覚めて私は頭を抱えた。
勿論、二日酔いにも悩まされたが、そんなものは痛む頭痛に解毒の魔法をかけ、すっかり治った。すっきりした頭で辺りを見回すと……私の隣には魔王がすやすやと眠っているではないか!
待て待て、昨日私はどうしたのだったか?煽られ、勧められたまま酒を飲んで……。それから? ……そっと毛布を捲ってみれば、そこには美しい肢体が生まれたままの姿で横たわっている。眼福である。いや、違う。私はどえらい事をしでかしたのだ。思い出したら、また体に火が付きそうになり、私は慌てて首を振った。
一体どうしたら……。私はルートベルトであって、今はルートベルトでは無い。只の旅人だ。姿形を誤魔化していたと知れれば、私は不敬で滅されるか? いや、手を出した時点で不敬なんてものじゃ…にしても、断片的にしか覚えていないとはいえ、昨日は生きて来た中でも一番と言える夜だった…何故全て記憶していないのだ。それでも私の脳味噌か。いや、違う、そうでは無くて……
「ルートベルト、何をそんなに焦っておるのじゃ? 」
「どう責任を取るべきかと……」
「ならば、結婚すれば良い。ちと早い話しだが、昨日の会話で其方の人となりは大体理解した。妾に異存は無い」
「ですが、まだ出会って1日だと言うのに……って、えっ?! 魔王様、起きて……と言うか、私の名前を?! 」
「ルートベルトじゃろ? 何か間違っておったか? 」
何と言う事か。流石は魔の王、私の魔法如き見破っていたのか。ならば私は初見から飛んだ無様な姿を晒していたということだ。人族での大魔法使いも、魔王の前では赤子も同然なのだろう。無様ついでに私は裸のまま、毛布に包まる魔王に向かって頭を下げた。
「魔王様、私の致した事は不敬極まる行いかも知れませぬ。しかし、私は……貴女様のそのお姿に惚れてしまいました。そして、昨日から垣間見れます貴女様の寛大なお心にも。どうか、私と共に生きて頂きたい。この様な思いを抱いたのは貴女様が初めてでございます」
「なんじゃ、改めて。雄と言うものは面倒よな? あい分かった。妾の婿とし、其方と共に歩もう」
そう言って微笑む魔王は、薄っすらと頬を染めていて、少しだけ昨日の少女の姿を思い起こさせた。
ーーーーーー
「魔王様、私は乗り物ではございませぬ」
地の底から響く様な声で小言を言うのは、獅子頭に角を生やした騎士。少女の姿の魔王を頭に乗せて、角を握られている。
「この姿はほんに面倒なのじゃ。廊下が長くて仕方ない。妾は重く無いのじゃから、このくらい良いでは無いか」
「魔王様、ようございましたな。婿が決まって」
そう言うのは、ゆらゆらと
「うむ。妾の魔眼はルートベルトの本来の姿を映しておったからの。あの髪、あの瞳。一目で気に入ったのじゃ。あれならば、妾が後200年成長する間も生き長らえて側に居てくれるだろうて」
「それはそれとして。全く、魔王様に婚姻の前に手を出すとは、あの人族……」
「よいよい。妾は成長が遅い魔人族。年はとうに100を超えておる。変化すれば問題無い。それに……」
魔王はその少女の顔に、満面の笑顔を作った。それは何処か機械的にも見える程だ。
「あれは、天族の混血だろう? 意外な所で拾い物をしたわ。これで天族にこの地の放置振りに文句も言い易くなるじゃろうて」
「確かに、あの容姿は天族特有のものですからね。また瘴気が噴出して地が割れましたし、我らばかりに魔力巡りの仕事をさせて、何をしているやら……」
ルートベルトはまだ知らない。魔王が本来ならまだ少女の姿で、そしてルートベルトを利用しようとしている事を。
魔の王は魔族の王、そして魔性の王。人族など、及びもつかない位置に立ち、世界を見ている事を。
そして、初対面で手を繋ぎ魔王が呟いたのは、彼の女性の好みを単に読み取っただけの事を。
「まあ、気に入ったのは本当じゃ。あの告白は意外にも、ぐっと来たからの」
それは誰の耳にも入らない、小さな呟きだった。しかし、少女は先程とは違った、柔らかな笑顔を浮かべるのだった。
ーーーーーー
「んな?! 少女?? 魔王様は少女が本来の姿か?! 」
「なんじゃ、今更気付きおったか? 魔王様では無い、ミリネルシアと呼べと言うとろうに」
「あああああ、私は何て事をっ!! 」
ルートベルトが魔王の正体に気付いたのは、結婚して2ヶ月経ってからであった。その時の嘆き様と言ったら…。魔王があの魅力的な大人の姿に成長するまで、魔王城での良い笑い草になったのだった。
おしまい
大魔法使いになったら、魔王の婿になりました。 芹澤©️ @serizawadayo
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