平安京によく似た、けれども異なる世界の森の中で、己を蠱物と呼ぶ謎の存在に孤独を訴え、愛を求めた幼子との対話から物語は始まります。
謌(うた)によって森羅万象を操る「うたよみ」が活躍する皇都において、入内を断り、なぜか男装して出仕を始めた紅緒。
目に浮かぶような色とりどりの美しい世界の描写や謌にまず引き込まれ、けれども紅緒さんのとことんストレートな美辞麗句(全部本音)で宮中の女性をはじめ、ありとあらゆる人を天然で惹き付け、振り回してしまう彼女と彼女を見守る幼馴染みや同僚とのくすっと笑ってしまう会話も楽しくあっという間に公開されている分を読みきってしまいました。
どうやら彼女に恋しているらしい、感情が表にはでないけれど、時に周囲が赤面するほどの口説き文句を垂れ流してしまう氷雨、幼い頃の紅緒を知り、いつも彼女に振り回されてしまう玄梅、そして彼女の運命に大きく関わりそうな白い蠱物。
謌を巡るあやかしたちの謎と恋模様がどちらも気になり、続きがとっても楽しみです。
実は最初に読んだときは二ページ目で閉じてしまいました。それが朝だったのですが、そのまま何となく気になっていて夜にもう一度見てみると、あれ、これ結構おもしろいんじゃ... 催馬楽みたいな歌もなかなか... ということで掲載されているぶんの最後(閑話)まで読みました。思うに、個人的にオリジナル設定の用語の漢字で詰まってしまうのと、平安っぽい和ものなら平仮名でいってほしいところが漢字なのでこれも詰まってしまうというのがありました。それを踏まえてもう一度読み返してみたんですが、おもしろかったです。それ以外にも、普通に読めそうな漢字でも読ませたいように都度ルビを振ることを考えられるといいかもしれません。そうすると好みとしては星三つになるかもという感じです。シリアスも含めた今後の展開に期待します。
■追記:いま三章の参で、星三つにしました。おもしろいです。