白いひと 肆
「紅緒!」
「おい、失敗か?! 失敗なんだな?!」
いつにない
「……りだ」
「え? 何ですか?」
「もう終わりだ」
絶望的に暗い声であった。冷静な声音で、何が終わったのだ、と氷雨が問うと、そこでやっと紅緒はのっそりと顔を上げた。泣いてこそいないが、声と同様、
「私は一生
その場の全員に微妙な空気が流れる。
彼女は倒れたのではない。失敗したことに衝撃を受けて、それはもう思いっきり
「魂で
全力で負の空気
「失敗したけれど、死ななかったということでいいんですよね?」
急に
「もともと、死ぬ、かもしれない、という話だったからどうやら大丈夫だったようだ。心配をかけた」
「お騒がせして大変申し訳ない。どうか、講義を進めてくだされ」
「おぉお、お前な! いきなりあんなもん詠んで一体どういう」
「うたよみ殿。講義の続行に何か問題があるのか?」
宇賀地が勢い込んで説教を垂れかけたところに、よく通るが少々
御前であることを思い出した宇賀地が、ちらりと片目で確認すると、幸い
「えー、では紅緒は見ての通り、契約に失敗したので
宇賀地の指示で、何とか気を取り直した
最初に姿を現したのは鴉近の身随神だった。
彼はただ、常の如く眉間に
そよとも風がないにも
見守っていた侍従たちが小さく歓声を漏らし、紅緒は
続いて、大叢兄弟の身随神が
兄、氷雨は、姿勢の綺麗な
ふと、
無事に身随神が
地面に膝と両手をついた玄梅はまるで
皇帝はというと、初めの姿勢を崩さず、相変わらずの真顔でご覧になっている。侍従二人は、普段なかなか見る機会のない神の姿を
「さて
言い
「まだそれぞれの技量を見せてもらってはいないのになんだが……ちょっと見たところ、お
これは予想外だった、というふうに腕を組みながら、謌生たちに意見を求めた。確かに、宮中の
「異議のありようもないですよ。この子の技も
日和はほっとした表情をにじませながら、童の頭を撫でた。氷雨が「右に同じ」とだけ答え、玄梅も頷いた。本音を言えば、三人ともこの御前講義で随分気疲れしたので、このうえ新年まで緊張を引きずりたくはないといったところである。鴉近はそんな皆の心の声が聞こえたのか、微妙な表情を浮かべている。
「鴉近の身随神は、何が出来る?」
宇賀地に問われて、鴉近は目を伏せて少し考えてから応えた。
「この
「飛ぶ?!」と、心底羨ましそうな顔の紅緒が悲痛な声を上げた。
「それは素晴らしい。なかなか派手でいいんじゃないか? それじゃあひとつ実演して見せ」
不自然に言葉が
「な、何だ……?」
侍従たちがそろそろと太刀の
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