第2話 あんず、『よげんの書』を見つける 2
ミコちゃんっていうのは、あたしの友だち。小さい頃から遊んでる。
彼女との一番古い思い出は四歳のときで、いっしょに積み木を片づけたってこと。専用ケースにパズルみたいに組み合わせてしまうのって、むずかしかったりするじゃない。それをいっしょに、うんうん考えて片づけたっていう思い出。
まぁ、それくらい古い友だちってやつ。
だから、面白いことがあると、教えてあげたくなる。本なのに何も書いてないって、不思議でしょ。見せたら、おどろくと思ったんだ。
印刷ミス?
それとも、なにか理由があるの?
見回して、ミコちゃんを探す。
すると、分厚い本ばかりが並んでいる棚の前で彼女を見つけた。真剣な顔をして次に借りる本を選んでいる。耳の横で結ばれた、長い髪が頭を動かすたびに、はずんでゆれる。
その、しっぽみたいな動きを見ていると、あたしはつい自分の髪をひっぱってしまう。切ったばかりだから、結べるようになるまでには、まだ当分かかるのに。
ミコちゃんみたいに長く伸ばしたいけど、面倒だからって、あたしは小さい頃からショートばっかりなんだ。結べたとしても、チョンマゲみたいで、ミコちゃんのしっぽとは、ぜんぜんちがう。
うちのお母さんはいつも、「あんずは短いのが、似合うよ」って言うけど、うそっぱち。だって、近所のおばさんに、「長いと乾かすのも、毎朝セットするのも面倒でしょ」って話していたのを知っているんだから。
お母さんは知らないって思っているんだろうけど、あんなに大声で話せば、ききたくなくても、きこえる。特に、お母さんの声は大きいしね。娘の長い髪が気に入っていて、ヘアアレンジも喜んでやってくれるミコちゃんのお母さんとは、月とすっぽん、パンダとタヌキくらい、大ちがいなんだ。
お母さんに、「結んでくれなんて頼まないよ」って言えばいいじゃんって思うかもしれないけど、それはうちのお母さんを知らないから言えるんだ。うるさくしてたら、美容院じゃなくて、お母さんにハサミでチョンされるんだから。
前髪のことだって、最近やっと自分で切らせてもらえるようになったけど、それでもマユゲより上にしろ、目が悪くなるからって、意味のわからないことでうるさいんだ。そんな母親がいるもんだから、家庭の平和のために、今のところ、髪は伸ばさないでショートにしている。
でも、短いのがラクちんってのは本当だ。それに、伸ばしたからってミコちゃんみたいにかわいくなれるはずがない。ぜんぜん、あたしには似合わない。ショートが似合うのは本当でもあるんだ。でも、たまには髪が長かったらどんなだろうって、そう思うこともあるってこと。
それより本の話だった。『よげんの書』を見つけたって話。
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