『よげんの書』を見つけたら

竹神チエ

第一部

はじまり

第1話 あんず、『よげんの書』を見つける 1

 もしも、地球の運命が自分たちにかかってるんだってなったら、どうする? 

 自分たちがやらなくちゃ、地球がおわるって、そう知っていたら? 


 そんなこと、おこりっこないって思ったんなら、これから書くことは信じなくてもいいよ。鼻で笑って、あとは読むのをやめたっていいんだ。


 でも、もしかしたら、次はあなたの番かも知れない。

 だって、誰にだって、起こるかもしれないことなんだよ。


 だからね、そうなったときに、あたしたちがやったこと、思い出してくれたらいいなって思うんだ。


 どこからが始まりかっていうと、あの本を見つけたときだ。そのときから、あたしたちの生活はいっぺんした……なんて、大げさなことは言わないけど、それでも、やっぱり、奇妙でおかしくて、ちょっと怖くなった。


 不思議なこともたくさんあって、それで最後はハッピーエンドってやつなんだろうけど、実はまだ安心もできなくて……、だから、こうやって何があったか書こうとしてる。


 本は学校の図書室にあった。他にもたくさん本が並んでいる中で、それだけが目立ってたんだ。だって、背表紙にタイトルがなかったから。普通、みんな書いてあるでしょ。『なんとかの冒険』とか『誰それの恋』とか。


 タイトルを見て、手にとる人がほとんどだと思うけど、あたしはタイトルがないってのが気になって、その本に手を伸ばしたんだ。赤ワインの色をしていて、辞書みたいに分厚い本だ。


『よげんの書』


 そう、表紙にタイトルがあったんだよ。イラストはなくて、題名だけ。


 もちろん、あたしだって、はじめは笑っちゃった。でも、ワクワクもしたよ。だって、『よげん』なんて、すっごく面白そうじゃん。どんなことが書いてあるんだろうって、すぐにページを開いたんだ。


 だけどね、パラパラとめくったページは、ぜーんぶ、白紙。

 そのときは、なんにも書いてなかった。

 そう、そのとき、は。


 あたしはがっかりしたけど、同時に、ミコちゃんに、見せなくちゃ! って彼女を探したんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る