もふもふしてなんぼ

私の心の中の色のような色の雲が空を覆っている。

急いでお気に入りの黒のカバンを漁り傘を取り出した。それを待っていたように

雲の赤子が生まれたのか知らないけど傘を濡らし始めた。

「役に立たんな」

そう呟いて傘を閉じ、急いで道を駆け抜けた。それを追うように数h行きの猫が付いてきた。しかもそれは進むごとに増えてきた。そしてたどり着いたのは猫がたくさんいる一軒の家。

「今日は女の子も来ているのかね、この雨の中良く来たのう。まあ猫たちと一緒に休んでいきなさい」

そこには笑顔のおじいさんがいた。天気は雨なのにそのおじいさんの周りだけ太陽が注いでいるような感じがした。

「こんにちは。じゃあ少し休んでいきます」

そう言って私は猫たちが休んでいる石段に腰を下ろした。少し湿っていたが気にしなかった。そんなことよりも周りに各々自由に過ごしている猫たちを眺めることに集中していた。そのうちの一匹、…だいが近づいてきた。ちなみにだいという名前は色が橙色だから勝手に呼んでいる。少し警戒しているが、好奇心の方が勝ったようだ。初めて見る私の顔をじっと見つめて何かを感じ取ったのかすすすと膝の隣まで来た。

「ん?どうしたの?いい子だね〜」

優しく撫でていると気持ちよさそうに目を細め先ほどまでは立っていたのだが今は丸くなっている。

「その子は一番人懐っこい子だからね、可愛がってやってね」

おじいさんは一部始終を見てそう言った。

「はい」

空の雨も小雨になっていた。

いつの間にか私の周りには全部の猫たちが集まっていて眠っていた。可愛いな。

起こさないように時間をかけてそれぞれ撫でてみた。やっぱり触り心地はみんな違った。しっとりしている子もいればツンツンしている子もいる。ここに来るまでに雨にかかったのかいまだに乾いていない子もいた。

「そろそろ帰りますね、ありがとうございました。」

「うんうん、気おつけて帰るんだよ」

「…あの、もしよければまた来ていいですか?」

「いいよいいよ、この子たちも喜ぶでしょう」

それを聞いて笑顔でお辞儀をして帰って行った。

次はもっと触っていこう。そんな決意をしっかり胸に刻んで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私が消失するまでの物語 河咲愛乃 @sakura-1231

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ