4話—5 鋼鉄の騎兵隊
『分かったぜ、姉貴!こちらは任せろ!』
「ええ……くれぐれも事を慎重に——且つ確実に運びなさい!」
優しきSPの通信が届く否か——そのタイミングでヤサカニ裏門当主を襲う事態。
すでに複数の通信先との交信で、事の対処のため——あらゆる事態を想定し……全体の総指揮を取る方向で、東京湾の居城を臨時司令部とした。
その襲う事態は——
『こちら【
『——そこで停止を余儀なくされ、まさか護衛移送中の英国令嬢が車両から飛び出す事態には肝を冷やしたが……ヴァンゼッヒが到着した……!』
「アセリア嬢がっ!?いえ、それに……アーエル——ヴァンゼッヒ嬢はまだ謹慎処分中では——」
もう一つの通信先でも逼迫した通信が届く。
通信相手はヴァチカンが誇る最強の聖騎士……オリエル・エルハンドである。
ヴァチカンより出向した騎士隊は、襲撃により宗家医療機関へ保護されていた断罪天使の護衛対象——英国は【
それこそ小さな当主が御神殿へのお役目を
余りにも不穏な、御神殿と移送車両への同時期の災い襲来——そこへ関わるのが、双方共に魔法少女達と言う点へ……今後の憂いへの只ならぬ気配を感じる
護衛任務の失態による、謹慎処分中であったはずの
「——アーエルさんが合流したという事は……彼女の力途絶は、彼女自身が乗り越えたと言う事でしょう。……エルハンド卿——ならばそちらはお任せします!」
複数のモニターを睨め付け状況把握に努める裏門当主は、一時的に加護の主の力途絶と言う状況であった断罪天使の件が好転したと判断し——現在極めて危険な件……小さな当主の置かれた事態改善への注力を決断する。
それを察する
『当然だ。むしろそちらの件は日本国の一大事になりかねん……何としても、
『
盟友である男の愛娘——今は只……彼女を護って欲しいとの思いと共に通信を切断する最強の聖騎士。
その思いを受け継ぐ様に、裏門当主はさらなる通信先へと連絡を飛ばした。
「聞こえますか!?リーダー関谷!これよりそちら——チームBUGへの緊急の依頼を要請します!……あなた方の力でクサナギ当主を——」
「今、最も大きな試練に差し掛かった
続け様に視認したモニター先で不敵に笑う、チームBUGリーダー関谷——
『ああ、了解や!——その代わり……メンバーのマシンが破損した時は、キッチリ面倒見て貰う——そこは忘れんなや!?』
「ええ!
まさに願ったり叶ったりの補償を取り付け、ニィと口角を上げたBUGリーダーは通信を切断と同時に速やかなる行動へ移る。
「ここが正念場です……
クサナギの誇る
そしてそれを超える事が出来るのは、小さな当主自身を置いて他に無い——それでも——
彼女が背負う試練の先にある過酷な未来——その負担を少しでも軽減させるべく……バックアップと言う名の全面支援へ全力を注ぐ、守護宗家の大人がそこに居た。
****
東都心のストリート——程なく発令された
この時代の日本国民——否、その緊急走行とかつての【デビルバスター】制度を導入した各国では……世界防衛のためストリートを奔走するスポーツマシンは、救世主として羨望を集めていた。
走行ルートがクリアとなるストリート交差点——フルカウンター……逆ハンドルによってスピン寸前の態勢を、捻じ伏せる様に爆走する
助手席に座した
「……あぎ……と……さん。その——手……——」
炎神の腕に包まれ、僅かに意識を戻す小さな当主——視界に映る優しきSPの腕の惨状に眉根を歪ませた。
「気付かれましたか、お嬢様。——ご心配には及びません……この程度で根を上げる様な鍛え方はしていません。ですから今は、その痛みに耐えて下さい。」
小さな当主の視界にはとてもではないが、大丈夫と言えぬ惨状が映っている。
当主の儀継承を受けずに
言わばそれこそが、天津神が誇る破壊神の持つ途方も無い霊格であり——常人では扱う事叶わぬ禁忌の力である。
現状優しきSPの施した霊力の浸蝕緩和術が効果を見るも、発現した
しかし――その従者達の思いをあざ笑うかの如き脅威が、任務車両のバックミラーへ映りこんだ。
「ぐっおぉぉぉーーーー!!」
すでに二本の剛脚を備えるも、獣然とした前かがみの疾駆――優しきSPの足止めが効果を失い、放たれた野獣が背後より襲い来ていた。
「くっ――本当にあれでは足止めにもならないか!だが……こちら目掛けて追い
優しきSPの思考では、万一背後を脅かす深淵の脅威が日本の民へと向く絶望的な事態が過ぎるが――そこへ
元来
つまりは人の形態に近付いた深淵が欲する餌に、普通の日常を生きる人間程度の霊質は役不足であり――結果、求める霊質をより高き物へ変更し襲い始めるのだ。
そこから導かれる答え――それはまさに今、天津神の焔に焼かれつつある小さな当主……そしてその中で契約の元供にある、天津神の破壊神が内包する霊格を贄の標的としているのだ。
その
SPの任務車両はストリートでの任務に合わせたアクセル直後のレスポンスと、高速度域をバランスさせた特性でストリートでは分がある――だが……入り組んだ都心を速度を殺す事となるドリフティングアクションを交えて駆け抜ける現状が、異形との距離を縮める悪循環を生む。
最早異形がその背後より、剛腕にて強襲出来る程の所へ猛襲していた。
しかし――その異形とのカーチェイスを演じる任務車両へ突如通信が舞い込む。
通信に使用される周波数は……守護宗家が
『あーあー、聞こえるかいな?こちらはお姫様を守護する騎兵隊だ。細かいこたぁいい……すぐにこっちへ今から出来る即興作戦と、必要な援護内容――そいつをお伝え願えるかいな?』
『――すでにあんたの先2kmの所へ待機中や。マーカーで確認出来るやろ?』
響いたのは鋼鉄の騎兵隊――クサナギの小さな当主の未来のために馳せ参じた、命知らずの
SPの任務車両内に備わる任務用モニターへ映る都心マップ……複数のマーカーが幾つかの交差点を越えた先で待機する。
優しきSPにとって、愛おしき主が力を得るまでの時間を稼ぐ会心の策が……彼の脳裏へ瞬時に弾き出され――必要最小限のやり取りを、響いた通信先へと叩きつける様に飛ばした。
「そちらの台数は!?」
『一台遅れとるから……現状10台――プラス
「
『霊力かく乱墳進弾と……霊力誘導弾!』
報告されたのは少数精鋭――そして異形を誘導する装備も確認したSP。
さらに決め手となる、
「聞いてくれ!これよりお嬢様を、クサナギ宗家の儀式場所へお連れし――そこへ辿りつくまでの間、
叩きつける様に放たれた即興戦術で――
「このストリートへ馳せ参じてくれた君たちが頼り――お嬢様のため……そして世界の行く末のために奮起してくれっ!ミッションスタートだっっ!」
小さき少女を支える者達の――大気を切り裂く、刹那の攻防が始まった――
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