ーその業火は新生の導きー
4話—1 Lightning BUG
宗家の皆さんのお陰で、良い経験を得られたドリフトレース——けれど私は優勝を逃す結果となりました。
よくよく考えれば相手は大人で、常勝無敗を宿命付けられたドリフトキング——その頂点に挑むと言う、晴れ舞台へ上がれただけでも快挙なんです。
でもその前に、あのハルさんの夢を踏み
結果――目指す高みが一気に跳ね上がった……とも言えました。
「なんや、えろう盛り上がりましたな~~あのレース。――正直
「いや、今思うとそれはまず無理な話だし(汗)――相手はあの
ドリフトレースから僅か後……学園のお昼休み――初等部と中等部を結ぶ校庭のベンチでお昼を頂く私と
二人で持ち寄ったお弁当を開いて昼食の真っ只中――あの激闘を振り返ります。
ただ未だ任務中の断罪天使さんは已む無く仲間外れ――と言いますか、けっこうあちらも何やら怪しい……もとい、仲睦まじい時間を過ごしているとの噂があるとか無いとか――
アーエルちゃんには、任務に専念して貰いたいと言う配慮の上での選択――ですが、やっぱりお友達がいないのは寂しさも募ると言う物。
なのでその寂しさを紛らわせる様に、
「……それはそれとして、
「――えぇ~~……それ……
「ウチ等はお友達や。隠し事はメッチやで?」
「うう……、はいぃ……。(絶対ロウさんが洩らしたよこれ……。)」
思考に浮かぶは間違いなく親しき者からの情報漏洩……とりあえずその主犯であると思われる人の事を、
レース云々は、
そう決意していた私の思惑は、見事に打ち砕かれました。
けど……これが私達のお友達パワーなんだと、改めて実感します。
そんな中、はんなりなお友達から思ってもいない朗報が飛び込んで来ます。
今の私達にとって、その朗報はとてつもない喜びです。
「――あとな、これは
「向こうの――魔界で起きたごたごたに方が付いた言う事で、テセラちゃんがレゾンちゃんと一緒に地球を訪問するらしい……やて。」
「うそっ!?こんなに早くテセラちゃん、こっちに来られるの!?――それ……早く会いたいっ!」
それは喜びこの上ない吉報――すでに地球と魔界防衛作戦を経て、無二の親友となった異界の友人と再び会えるのです。
さらにはんなりなお友達は、わくわくする様な内容を付け加えて来て――
「……おまけにレゾンちゃんや。なんや凄い事になっとるらしいけど――それは会うてからのお楽しみ……やって。」
「うわ~~何それ、超楽しみなんですけど!そっか……て事は、レゾンちゃんもきっと強くなって戻って来るんだろうなぁ~~☆」
などと浮かれた私はその時、赤き魔法少女である
それがまさか、個の強さ所ではない―― 一国の……いえ、一つの世界を統べる強大な存在になって戻って来るなどとは夢にも思っていなかった訳で――
「楽しみだなぁ~~☆」
遥かな天を仰ぐ異界の友との、訪れたる再会に浮かれていた私――その足元に忍び寄る、深淵の浸蝕の本格化を……その片鱗さえ、未だ察知しきれていなかったのです。
****
東都心某所港――先のレースの折、守護宗家からの依頼を受けたストリート上がりのレーサー風間・リューベル……依頼の正式なやり取りのため、八汰薙の
「おおっ……これは大そうなお出迎えだなオイ。つか、あの伝説側警部め――さらっと暗躍してくれる。」
「……ああ、おかげでこっちは肝が冷えたで?ついに風間も、この大都会まで来てお縄になるなんて、とか――」
「いやいや、ジェイよ!?それは酷くねぇか!?……集まりメンバーを売る気かよっ!?」
「冗談や……そしてそこはノリツッコミの所やでお前。」
その夜の港に居並ぶは、ドリフトレースのストリート代表である風間が所属するカスタムマシンチーム――
数多の改造パーツで、高度な芸術作品の如く飾るその
低い唸りで、夜の
その中心であり、リーダーを任される男……ジェイ・
短く刈った頭髪に大らかさと鋭さを併せ持つその男――レース遠征部門のストリート上がりを弄り倒しつつ、その場に和やかさを呼び込んで来る。
言うに及ばずこの依頼……メンバーに危険の及ぶ類と知っての交渉の場――ただの飾りで、チームの頭を張っている訳ではない雰囲気を醸し出していた。
リーダーのマシン……黒をベースとした赤のアクセントに、トライバルバイナルと称するグラフィックがボディに輝くGTクーペ――ストリート上がりがレースで使用したのと同型である180SXを初め――
チームメンバー達のカスタムマシンが、その交渉を出迎える中――
「あの
「宗家の言い分は分かる――せやけどお嬢さん方は、
チームリーダーの鋭い指摘が八汰薙の弟へ提示される。
眼光は仲間の大事への憂いを乗せた物――それに対し臆する事無く、八汰薙の弟は考えうる状況を詳細に提示して行く。
「ああ、それはごもっともだ……。超常の力を持つ魔法少女……けど彼女達は何も、常時その力を全開に出来る訳じゃない――特に魔界勢に至っては、この地球上での力開放は大きな負荷とリスクを伴う。そこで万一力の途絶等という事態が訪れた際には――」
「今の宗家……中でも、地上に於ける組織的なサポート面で手に余る現状――それが君らに手助けを依頼する理由……そう取って貰いたい。」
そこには戦力的な面ではない――あくまで魔法少女達の力途絶の様な事態に、それを守り届けるための移送班としての役目の意を含む。
それも大災害後の日本国を走る無数の
「――つまりは宗家様も現在猫の手も借りたい状況……ところが、事に精通した上でそれに協力的な民間団体もおらん。て訳で……俺らにお鉢が回って来た言う次第やな?」
「ああ。危険は承知――それに見合った条件も、守護宗家全体で考慮する。受けてくれるか?」
一時の沈黙――夜の港に、カスタムマシン達の唸る様な
鋭い双眸を閉じ……再び開き背後に集まるチームメンバーを一瞥するチームリーダー――その視線に答えるメンバーの意志は、否定など存在していなかった。
「ええんちゃうか?宗家からしっかり危険手当てを貰う分には、俺らも否定の予知は無いで?」
「そうそう!こっちもチームの名を全国に轟かせるチャンスや――せいぜいお嬢様達を助けて差し上げんとな!」
仲間の肯定意見を確認したチームリーダーは、八汰薙の弟へ向き直り――突き出した拳を契約の証とした。
「ちゅう事や。……まあ、協力にあたって必要な装備や法整備云々――ちゃんと準備頼むで?」
「すまないな……。当然
「話しが早ようて助かるわ。なら、お前ら!宗家様のご指示に従い、必要装備の搭載に取り掛かれや!」
「「おーー!」」
未だ深淵の脅威に晒される日本国――その中でまた一つ……少女達を支援する大人達の想いが集い――
来るべき脅威襲来への、一段の備えが進められて行く。
その集いが備えに散る様を、夜の港――灯り無き暗がりで密かに目にした者がいた。
「――あれは……当主様のお知り合いの宗家の方――それに、風間さんの所属チーム?これはもしや――」
二房のおさげに高貴なお嬢様然とした姿――ストリートで使用するのはレース車両と同じ、前輪駆動改・後輪駆動……純白のボディに赤きエンブレムを冠するマシン。
レースでの敗北の悲しみを癒すため、港へ訪れていた
――そして
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます