旅は道連れ余は情けねぇ

突然の告白から思考能力を取り戻した後。


「実は、結構前に君の村に行ったんだけどさ~」


「いやその前に誰だよあんた」


「あ、そっか」


俺の発言で、名乗ってないのを思い出したようで。てか忘れるなよ。何で名乗りより告白が先行してるんだよ。


「私はアリステナンシア・ルーズハイン・ルーラッド」


長いな。


「略してア○ル」


「どんな略しかたしてんだよ!名前つけた親が泣くぞ⁉」


親を知らない俺の台詞としてはおかしいかもだけど、ア○ルは無いって。


「まぁ、普通はアリシアと呼ばれる」


「じゃあ、最初からそれでいいじゃん」


前話の告白の恥じらった感じとかどこ言ったんだよ。登場二話目でキャラブレするなよ。

まぁ、そんなこといちいち突っ込んでたら話進まないし、今はいいか。


「んでアリシア、俺の村に来てどうしたって?」


「アリシアって呼んでくれた...!そうそう、君の村にね、旅の休憩がてらフラーと寄ったんだけど」


「フラーと...」


そんな気軽に立ち寄れるような場所に無いけどな?


「そしたら、メロイって農家のおじさんに会って」


おじさんに?そんな話おじさんから聞かなかったがな?


「そしたらそのおじさん、見た目に反して元王国衛兵らしくて、剣の話で盛り上がって」


『見た目に反して』に異議はないが、そんなに盛り上がったなら、なおさら聞いてないのはおかしいな?


「で、『君いい子そうだから、家のステイに貰われてくれよ』って言われて」


「何言ってんだおじさん⁉」


「で、私も『会ってみていい人そうだったら考えてみます』って言っちゃって」


「お前もお前だな⁉」


ていうか、判断基準が『いい子』とか『いい人』とかどうなんだよ。世の中いい人そうに見えて実はヤバイ奴もいるぞ?

さっき村から出たばかりの俺が言うのもアレだけど。


「で、そのまま結局君には会えずに村を出て、しばらくは忘れてたんだけど、つい最近思い出して、何となく、村に寄ろうとしたら」


「ちょうど誰かが送り出されていたところで、ムチムチしたお姉さんが、君のことを『ステイ』って呼んでたから、気になって後をつけてみたの」


大分前からいたのかよ。それなりに気配を察知する訓練もしたはずだけど。

あと、人の姉をムチムチとか言うな。

異論は無いけど。


「で、スライムにあっさり殺されそうになっていたから助けたんだけど...本当にドンピシャ...」


「さっきも言ってたけどドンピシャって何?」


若干の古さを感じるぞ。


「いや...だから...君の顔を知らなかったんだけど......実際に見てみたら......うゎ...タイプだなぁ...って」


えっまた恥ずかしがりモード⁉不意討ち⁉

『いい人』とか言って置いて普通に顔?

いや、普通に嬉しいけど!


と、なんともアレな雰囲気になっていると。辺りがざわつき始め。


「「「「「「「「「「キュキュキューーーーー!」」」」」」」」」」


スライム✖10が現れた!

いやぁ~、鳴き声可愛いけど、この数だとただただ恐怖だわ。


「雑魚が何匹集まろうが同じこと!下がってステイ!...あ、名前で...」


「ステイって呼んでいいから!つーか、後ろにもスライムいるんだけど⁉」


「大丈夫!」


アリシアは、またあのナイフを取りだし、また自分に刺した。

ただ、今度は赤ではなく、緑に全身が染まっていっている。


アリシアは、そのままどこからか取り出した弓を構え、真上に向かって、一本の矢を射る。


「おい、なにしてんだ?」


「待って後3秒、2、1」


すると、空から風を切る音が聞こえ、次の瞬間、大量の矢が頭上から降り注いでくる。


「『千空の矢サウザンドアロー』」


文字通り千本の矢が、文字通りスライム達を吹き飛ばしていく。なんせ、矢の一本一本が、何かに当たると爆発するんだ。

そのせいか、スライムだけでなく、辺りの木々とか地面も抉られている。

事実、スライムは30本目くらいで全滅し、後はただの自然破壊だった。

俺たちは風のバリアのようなもので守られて無傷だが、粉塵でなにも見えない。


砂煙が収まると、そこにはスライムものや、いつの間にか巻き込まれていた別のモンスターの亡骸、そして、俺たちの立つ場所を中心として広がるさら地があった。


「やりすぎだろ」


「でも、ステイじゃスライムは倒せないでしょ?ちゃんとステイの戦力も知ってるから」


それ全然嬉しくねぇよ。

スライムに勝てないであろうことは認めるが、物理攻撃が効く相手とはそれなりに戦えるからな?


まぁそれでも、このアリシアバケモノには敵わない気がするが。


「次敵に会ったら、『巨人破壊拳ジャイアントスマッシュ』をくらわせてやるわ!」


「お前、緊急時以外技使うの禁止な」


「え⁉なんで!」


「なんでじゃねぇよ!一発がオーバーキル過ぎるわ!スライム10匹に矢1000本はパワーバランスがおかしすぎるだろ!これ繰り返してたら、この森が砂漠化しちまうだろうが‼」


「うっ、すみません...でもいいの?君に守られるのはお嫁さん冥利につきるけれど、ステイ、私よりすごい弱いじゃん」


「うっ」


否定は...できません。






あと、嫁じゃねぇから!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか? 秋野シモン @akinoshimon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ